モモンガさんレベルアップ   作:強迫性障害

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 前・書・き・全・部・消・え・た。
 お前ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
 はい、どうもこんにちは強迫性障害です。本来なら色々と書いてるところなのですが、前書きが消えたせいと即効で投稿を消してしまいました。大変申し訳ありません。
 次回からはこんなことがないように気をつけたいと思います。
 それではどうぞどうぞ!


ゲート攻略

  辺りには人の通り道と周りは豊かな木ばかりに囲まれており、モモンがいた現実世界では見られない光景がそこには広がっていた。そこに漆黒の剣とモモンとナーベ、そして依頼主であるンフィーレアがいた。

 あの後、話し合いが終わったモモン達は早速準備に取り掛かった。

 漆黒の剣は組合にゲート攻略に向う部隊とは別に先に発生している場所であるカルネ村に向かうことを伝え、ンフィーレアは薬草を運搬するための馬車を用意して出発した。

 所々、休憩を挟みながら雑談をするモモン。そんな中、森の賢王の噂を聞く。その特徴を聞いたモモンは鵺かなと予想しながらカルネ村に向かっていた。

 途中でナーベが口走ったものの、モンスターが現れた。

 モモンは漆黒の剣の連携を見ながらナーベと一緒にモンスターを討伐した。

 討伐が終わると経験値獲得やドロップアイテムが表示された。とは言え、この世界のモンスターは非常に弱いせいでドロップはどれもショボい。パーティを組んでいるせいで尚更だ。心の中でショボいと思いながらニニャと話し、ユグドラシルとの差も確認していく。

 夜になり野営をしていると食事を出されピンチになるモモンだったが、その場で思いついた訳を話し納得してもらった。

 しかしその後、漆黒の剣と気まずい雰囲気になってしまう。

 別に漆黒の剣が悪い訳ではない。誤解を招くような発言をしたモモンにも責任はある。次の日も気まずい雰囲気が続いたが、なんとか関係を修復させカルネ村に辿り着いた。

 カルネ村に着くと村全体の周りに柵のようなものが出来上がっていた。カルネ村に何度も訪れたことのあるンフィーレアはそれが気になって仕方がなかった。村の近くまで辿り着くとゴブリンが現れた。ゴブリンのリーダーと思わしき人物が前に出て大人しくするように伝える。ンフィーレアは必死に噛みつくと一人の少女が現れる。そう──エンリだ。ンフィーレアはエンリの再開に喜びモモンはエンリの言った魔法を使える人物は彼のことだったのかと心の中で呟きながらカルネ村に入った。

 モモンは遠くから村の様子を見ているとンフィーレアがこちらにやって来た。すると、ンフィーレアはモモンにアインズ・ウール・ゴウンなのかと問うた。モモンは惚けるものの、ンフィーレアは気にせずモモンに頭を下げた。そしてンフィーレアはモモンに真実を伝えた。

 曰く、見たことないポーションの製造方法を知りたいためにモモンに近づいたことを話した。しかし、彼には悪意は一切なかったため、誤魔化せないと判断したモモンは誰にも言わないことを条件に彼を見逃した。

 しばらくすると森の中に入り薬草採取が始まった。

 薬草を採取していると森の賢王と呼ばれるモンスターが近づいて来たことを確認すると、漆黒の剣とンフィーレアはその場から離れ、モモンとナーベはそこに残った。

 結果的には森の賢王を捕らえ森から出てきた。

 何故倒さなかったかと言うと、森の賢王の正体は──でっかいジャンガリアンハムスターだったからだ。

 その可愛らしい外見にすっかり萎えたモモンは適当にスキルを使い屈服させたのだ。

 森の賢王を見せたモモン。見た目があれなので信用してもらえないと考えていると──なんと彼らは褒め称えたのだ。

 これには流石のモモンもビックリした。森の賢王の外見が可愛いと思わないかと言うと逆にあり得ないと返されてしい、ナーベにも尋ねたが大体似たような返答により、自分がおかしいのかと感じてしまうモモンだった。

 その後、森の賢王の協力もあり薬草採取は順調に終わらせカルネ村に帰還した。ゲート攻略体に合流するためだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 森の賢王をカルネ村においていきモモンは漆黒の剣とカルネ村にて待機していると、遠くから人溜りを見つけた。

 人数は大体30人前後だろうか?皆厳つい顔に武装しており、只者ではない雰囲気を放っている。恐らくあれがゲート攻略隊なのだろう。

 

「ペテルさん、彼らがゲート攻略隊ですか?」

「はい、あれで間違い無いと思います」

 

 確認のためペテルに尋ねるとどうやら間違ってはいないようだった。

 そんなことを考えていると攻略隊がこちらに到着する。すると、一人の人物が前に出た。

 外見は焦げ茶色の髪に赤い瞳で歳は大体30歳前後に見え、革製の防具を身につけており、腰にはロングソード、片手には円盾を持っている戦士風の男だ。首にはプレートがぶら下がっており、白金(プラチナ)のようだ。恐らく、彼がこの攻略隊のリーダーなのだろう。

 

「君達が漆黒の剣か?」

「はい、私達が漆黒の剣です。こちらが同じくゲートを攻略するモモンさんです」

「初めましてモモンです。こちらがナーベ」

 

 リーダーと思わしき人物がペテルに尋ねるとそれに答え、モモンについても紹介した。紹介されたモモンは名を言いは頭を下げる。

 するとリーダーの男から奇妙な視線を感じた。何かを探るようなそんな視線だ。いや、この男だけでは無い。後方にいる集団からも似たような視線を感じるがこちらは色々な男とは違い様々な視線だ。品定めや侮蔑など色々な視線が混じったような何とも言えない視線がモモンに向けられる。心の中で少々不快に感じていると隣にいるナーベから殺気を感じとる。

 隣にいるナーベを見るとモモンを見ている輩を仇敵を見つけたが如く強く睨みつけており、彼女のドス黒い雰囲気から今にも飛び出しそうだ。

 

「落ち着けナーベ。お前から殺気を感じる。早く消せ」

「しかし、あの者達が──」

「二度は言わん。早くしろ」

 

 ナーベが暴走しないか危機感を感じたモモンは小声で話しかけた。

 何とか殺気を抑えたナーベだが、まだ顔はいかにも不機嫌といった表情だ。

 ナーベのポンコツっぷりに内心「共につける人材、間違えたかな?」と呟やき、誤魔化すために話を続けた。

 

「すみませんが名前を聞いても?」

「む、それは失礼した!私は『怒涛』のリーダーであり、この攻略隊のリーダーに選ばれたアウル・パペットと言う者だ。よろしく頼むよ。ところで気になったんだが………どうしてそっちの少女は私を睨んでいるのだ?」

「ん!?そ、それは失礼しました」

「いや、構わないよ」

 

 アウル・パペットと名乗った人物は優しげな口調で答え、ナーベのことを話すとモモンは急いで頭を下げた。どうやらナーベの殺気を気にしていない様子にモモンは内心安緒した。

 

「ゴホン………では、早速ですがゲートに向かわれるのですか?」

「あぁ、こっちの準備は万全だし出来るだけ早く攻略すべきだからな。そっちはどうだ?」

「はい、こちらも問題ありません」

「私達もです」

 

 一旦、咳込みをするとモモンは話を切り替えた。

 どうやらあちら側は既に準備は整っているようだ。ゲートを放置しているとダンジョンブレイクが起きるためさっさと片付けるべきと判断してのことだろう。

 アウルが準備は万全かとモモンと漆黒の剣に問いただすと二人は頷く。

 

「よし、では出発だ!行くぞ!」

 

 アウルの大きな声が響き渡ると彼は歩き始めた。それと同時にその場に集まった全員が彼に釣られるように歩いていく。モモンと漆黒の剣は後方に並び彼らについて行った。

 しばらくすると前を歩いていた冒険者達の足が止まった。何かあったのかと思いモモンは前方を覗く。

 覗いた先にあったのは謎の光だ。

 何もかも吸い込みような青く光っており、一種の芸術のように見える。まるで転移系最高峰の魔法〈ゲート(転移門)を彷彿させるかのようだ。しかし、転移門(ゲート)とは異なりこちらの方が断然美しい。

 あれが噂のゲートなのだろう。それを認識したモモンは警戒心を高める。

 あのゲートを潜った先に大量のモンスターがいるのだから。

 モモンの姿の時の実力はおよそ33レベル。この世界では十分英雄級と称えられるほどの実力を有しているモモンだが、モモンからすれば33レベルしかない。一応、上位物理無効化などのスキルは発動させてはいるものの、カンストプレイヤーに一気に奇襲を喰らうとタダではすまない。周りにいる実力が大したことがないのでゲートにいるモンスターは強くないことは分かっているモモンだが、それでも警戒しておいて損はない。

 

「全員注目!今からゲートに突入する!ゲートでは何が起こるか分からない!それが嫌な奴は今すぐ去れ!逃げる事は悪いことではないのだから責めるつもりはない!だが、それでも覚悟があるものはここに残れ!」

 

 流石はリーダーを務めているだけであって彼の言葉には重みを感じる。長年の経験と実力から発した声なのが彼が叫ぶと周りが一瞬にして静まり返る。時間にして数秒ほど。しかし、ここにいる冒険者は数分のように感じられた。

 アウルの言葉を聞いた冒険者達だったが、逃げるものは結局の所いなかった。全員の覚悟を受け取ったアウルは満足げに頷く。

 

「よし、では………突入!」

 

 アウルがそう伝えると待ってましたと言わんばかりに攻略隊がゲートに突入する。モモンは後方にいる漆黒の剣と共にゲートに突入する。

 

ダンジョンに入場しました

 

 ダンジョン内に入るとシステムからダンジョンに入場した旨の連絡が入った。「どこまでもゲームだな………」と感じながらも早速辺りを見渡す。

 辺りを見渡すとそこは暗い洞窟だった。辺り一体は真っ黒で視界が悪く、所々無数の穴が開いており、まるでモグラが掘った穴のようだ。

 

「まず魔法詠唱者は〈閃光(フラッシュ)〉を使って周囲の光を確保!レンジャーは辺り一体に敵がいないかを確認しろ!それ以外のものはいつでも迎撃に当たれるように準備だ!」

 

 ベテランなのかダンジョンに入り次第即座に指示を出す。

 魔法詠唱者は魔法を唱え、レンジャーは敵がいないか辺りを探索する。どちらでもないモモンとナーベはいつでも迎え当たるよう武器を構える。

 

「!こっちに来たぞ!それもこの数………尋常じゃねぇ数だ!」

 

 辺りに敵がいないか探索していたレンジャーの一人が攻略隊全員にそれを伝える。他にも探索していたレンジャーも同じなのだろう。誰も否定している様子は見当たらない。全員静かに頷くと警戒心を最大まで上げる。

 しばらくすると複数の音が聞こえてきた。

 カサカサとした音でどんどん大きくなっていく。こちらに近づいているのだろう。ここまで来ればレンジャーでなくとも誰でも気づけるほどだ。

 複数の音が徐々に徐々に攻略隊がいる場所に響き──それは一斉に姿を現した。

 体長は大体一メートルもあるかないかぐらいだろうか。紫色の肌に八本の足、真っ赤な瞳が合計で四つある──蜘蛛だ。

 小蜘蛛(スモールタラタクト)

 8レベルの蜘蛛型のモンスター。攻撃力や防御力は低く、そこまで驚異ではないが動きが素早く毒を吐いてくるので油断は出来ないモンスターだ。

 その小蜘蛛(スモールタラタクト)がありとあらゆる穴から現れ攻略隊を囲み──ついに動き出した。

 全方位を囲み込み逃げ場を封じた小蜘蛛(スモールタラタクト)は攻略隊に突っ込む。前、横、後ろ、上、あらゆる方面から奇襲をしかける。この光景を普通の人間が見れば恐怖で動けなくなるような光景だ。しかし、彼らは冒険者。命をかけて戦うのが仕事だ。これぐらいのことで音を上げるような集団ではない。

 小蜘蛛(スモールタラタクト)が動き出すと、攻略隊もそれぞれ動き出す。

 戦士が前に出て小蜘蛛(スモールタラタクト)の動きを抑えると、後方から魔法や矢を放ち撃退する。いきなり襲撃されたことに上手く連携が取れないものの、小蜘蛛(スモールタラタクト)自体のレベルが低いこともあり、徐々に攻略隊が優勢になっていく。

 

「ふん!ハァ!」

 

 モモンは周りよりも前に出て小蜘蛛(スモールタラタクト)を次々と薙ぎ払う。周りから危険だと止められるがモモンは動きを止めない。モモンの実力からすればこの程度大したことではないのだから。

 

「〈雷撃(ライトニング)〉」

 

 ナーベも魔法を発動させ小蜘蛛(スモールタラタクト)を焼き払う。その光景にモンスターがまだ残っているにも関わらず、攻略隊の視線がモモンとナーベに集まる。

 

(よし!注目されている!エ・ランテルに帰ってもらえば名声を上げてくれるはず!)

 

 周りから注目されていることに内心喜ぶモモン。何故ならモモンの本来の目的は名声を高めることだ。名声を高めることによってこの世界の情報やコネクションを作ることが目的なのだ。それが上手くいったことに喜んでいると気づけば小蜘蛛(スモールタラタクト)はいなくなっていた。どうやら喜んでいる内に全部倒してしまったようだ。

 

「よし、全部倒し終わったようだな!神官は怪我した者を癒せ!それ以外の動けるものは魔法石を回収だ!」

 

 アウルが指示を出すとそれぞれ動き出した。

 小蜘蛛(スモールタラタクト)が弱いモンスターでも傷ついた者はいる。(ゴールド)以上のランクの冒険者は誰一人いないが、それ以下の冒険者にはダメージを負ったものがいた。とは言え、そこまで重症というほどの傷ではなくこのまま続けて問題ないぐらいだ。

 すると、近くで作業していたニニャが気になったのかモモンは尋ねてみた。

 

「何をやっているのですか?」

「あ、モモンさんは始めてでしたか。ダンジョンにいるモンスターを倒すと魔法石が手に入るんですが、それを回収しているんです」

「魔法石?」

「はい、ダンジョンにいるモンスターから取れるもので強力なモンスターなほどより上質な魔法石が取れるんです」

「なるほど。ありがとうございます」

 

 ダンジョン内にいるモンスターとダンジョン外にいるモンスターの違いを知ると礼を言ってこの場から離れた。

 

「大体終わったようだな………よし、このまま突き進むぞ!」

 

 その後、ダンジョンの攻略は順調に進んだ。

 擬態の動像(ミミック・ゴーレム)毒蜘蛛(ポイズン・タラタクト)極小蝙蝠の群衆体(バット・スフォーム)、バジリスクなど様々なモンスターが襲ってきたが攻略隊の敵ではなかった。むしろ、最初に戦った小蜘蛛(スモールタラタクト)の大群の方が強く感じた。あまりの弱さにモモンは拍子抜けしながら歩いていくと洞窟が見えた。すると、リーダーであるアウルがその場で立ち止まった。

 

「悪いがレンジャー数人かがりで奥を見にいってくれないか!」

 

 アウルの発言に頼まれたレンジャー達は一瞬困惑したが、アウルがリーダーであることと、ゲート攻略者のベテランであることから素直に従い数人のレンジャー達が洞窟の奥に向かい確認しにいった。

 

「一体何があったんでしょう………」

 

 アウルの行動に気になったモモンは呟いた。

 

「恐らく、二重ダンジョンじゃないでしょうか?」

「二重ダンジョン?」

 

 ニニャの返答にモモンは尋ねた。

 

「はい、二重ダンジョンはその名の通り、ダンジョンの中にダンジョンがあるんです。まぁ、実際に見るのは初めてですけど………」

「なるほど………」

 

 モモンはニニャの説明を聞いて納得した。もし、そうならば彼の行動は納得できるからだ。ダンジョン一つでも警戒しなければならないのに、さらにダンジョンを攻略しないといけなくなる。そうならば攻略するのに疲労も増えるだろう。

 そんなことを考えていると洞窟の奥に向かっていたレンジャーが戻ってた。

 

「何かあったか?」

「はい、洞窟の奥に扉がありました」

 

 それを聞いたアウルは二重ダンジョンだと確信すると顎に手を置き考える。

 このまま続けるか、撤退するかだ。

 まずこのまま続けた場合のメリットは報酬がさらに増えることだ。ダンジョン攻略での儲けはモンスターを倒すことにより魔法石を手に入れるか、採掘で金属を手に入れるかである。そのためこのまま続けてモンスターを倒せば予想よりも遥かに報酬が増えることだろう。

 ただし、デメリットはリスクが大きいということだ。

 ダンジョンでは何が起こるか分からない。レッドゲートがその例だ。

 レッドゲートとは強力なゲートで発生するものであり、発生するとダンジョンをクリアするまで脱出出来なくなる。さらに、時間感覚もズレており、現実世界で一時間でもダンジョン内では一日も経っているのだ。アウルは実際に潜ったことがないのだが長いことダンジョン内にいるのは真っ平ごめんだ。

 反対に撤退する場合はこれの逆だ。報酬は減るがその変わり安全が確保できる。

 どうするか悩んでいると一つの提案を思いついた。

 

「………全員聞いてくれて」

 

 アウルがそういうと攻略隊の視線がアウルに寄せられる。

 

「ゲートはダンジョンのボスが倒されるまで閉じられないのは知っているね?ゲートがそのままになっているのを見るとあの扉の奥にボスがいるみたいだ」

 

 そのままアウルは続ける。

 

「本来こういう場合は組合に報告して指示を待つべきなんだが………それだと他の冒険者にボスを奪われ私達の収入が激減しかねない」

 

 アウルの言葉を聞いた瞬間、攻略隊の雰囲気がガラリと変わる。ここまで頑張っておきながら他所の冒険者に自分達の獲物を取られ、報酬が減るのが嫌なのだろう。眉を潜めるものもいる。

 

「そこでだ………この際私達だけでボスを倒すのはどうだろう?」

 

 アウルの提案を聞いた攻略隊は黙り込み考え始めた。

 

「とはいえ、この人数だ。反対する人間もいるだろう。そこでここにいる全員に多数決をとる。多数決の結果には従うこと。どうだ?」

 

 アウルの提案に乗ったのか何人かが頷いた。

 

「俺は行く。二重ダンジョンなんてあるんだからな。折角だから攻略したい」

 

 アウルがそう伝えると次々と手をあげるものがで始めた。

 賛成するもの、反対するもの、票は大体対立した。

 

「モモンさんはどうしますか?」

「私ですか?」

 

 多数決をとっている中まだ手をあげていないペテルが話しかけに来た。

 

「私は………冷静に考えれば反対です。ですが………」

 

 モモンは普段のしっかりした態度が消え、たどたどしく応える。

 

「実際のところを言うと賛成です」

「えっ?どうしてですか?」

 

 ペテルはモモンの返答に疑問の声を上げる。

 それもそうだろう。モモンの言っていることは矛盾している。反対だと言っているにも関わらず、賛成と言っているのだ。意味が分からず聞いてしまうのも無理はない。

 ペテルの疑問にモモンは返答する。

 

「反対したのは単純にリスクがあるからです。相手の戦力などを熟知していればいいのですが、それがないのなら大人しく撤退すべきです」

 

 モモンがいたユグドラシルでもそうだった。レベルが低いと油断していると罠に引っかかり、痛い目を見たことが多々ある。何より代表的なのがワールドアイテムだ。

 ワールドアイテムはユグドラシルに二百種類しかないアイテムで、一つ持っているだけで凄いと言われている。ワールドアイテムはどれもぶっ壊れた性能をしており、あまりのおかしさにプレイヤーから「運営マジ狂ってる」などユグドラシルがなんでもありと言われた原因となったほどだ。

 そのため慎重派のモモンからすればリスクを避けたい。

 

「しかし──」

 

 モモンは一区切りつけ話を続ける。

 

「やりたいんですよ。未知の冒険(・・・・・)というものを」

 

 ユグドラシルでもそうだった。

 ユグドラシルではダンジョンの攻略方法が載っておらず、マップなどもロクなものが存在しない。純粋に強さを求めるものからしたら面白くないかもしれない。しかし、モモン──アインズからすればそれが良かった。

 アインズも仲間達と共に何度も未知を探索したことがある。その度に上手くいけば皆で喜びを分かち合い、失敗すれば悔しく感じながら次はどう攻略するかを議論する。それがアインズからすれば強敵と戦うよりも楽しかった。今となっては過去の思い出だが、アインズはこの思い出が記憶から一生消えることはない。それだけ楽しかったのだ。

 この世界でも冒険者の存在を知った時ユグドラシルとは違った未知の冒険が出来ると期待していた。しかし──現実は非常違った。

 組合から講習を詳しく聞くと冒険者という名のモンスター退治の傭兵だと分かった途端、アインズは幻滅した。

 

──何が冒険者だ。

 

 アインズは心の中で吐き捨てたが現状、情報収集と名声を上げることが第一だ自分に言い聞かせ、未知の冒険を求めることを諦めていた。だが、ここに来てようやく自分が求めていた未知の冒険を発見した。見逃す手はない。リスクが多少あるものの、この世界のレベルならアインズでも対抗できると考えてのことだ。それだけアインズは未知の冒険というものに飢えていたのだ。

 それを聞いた漆黒の剣は呆然とし、しばらくすると彼等は──笑い出した。しかし、その笑いは決して嘲笑いではなく、心の底からの笑いだ。突然笑い出したことにアインズ──モモンはうろたえる。

 

「えっと………どうされましたか?」

「い、いえ。モモンさんにもそんな少年心みたいなものがあったなんて意外だなと思いまして」

「確かに意外だよな。いかにも大人って感じがするし」

「夢を見るのは悪くないのである!」

 

 モモンが尋ねるとニニャ、ルクルット、ダインの順番に答えた。「そんなふうに思われてたのか」と心の中で思うと徐々に恥ずかしさが込み上げてきた。

 

「おい!残りは君達だけだ!どうする?」

 

 そんなことを考えているとアウルの声が届いた。どうやら、漆黒の剣と話していると周りの意見を聞き終わったのかアウルがこちらに尋ねてくる。

 

「えっと、私達は賛成です」

 

 モモンよりも先に漆黒の剣のリーダーであるペテルが答える。

 ペテルが答えると最後の一人となり周りの視線が全てモモンに向けられる。その視線を感じたのか隣にいるナーベからはよからぬ雰囲気を漂わせるのを感じたモモンはすぐ様答えた。既に答えは出ているからだ。

 

「行きましょう」

 

 それを答えに満足したのかアウルは頷くとここにいる全員に聞こえるぐらいの大きな声を出す。

 

「よし!半数以上が賛成だ。このまま奥まで向かうぞ!」

 

 アウルの言葉を聞聞いた攻略隊は洞窟の奥まで歩き出した。

 しばらくすると洞窟の奥まで辿り着く。

 すると、そこには大きな扉があった。

 意外にも扉はすんなりと開き、アウルに続いて攻略隊が扉に入る。

 入ったもののその場所は真っ暗で何も見えない。〈閃光(フラッシュ)〉で辺りを明るくしていても視界はそこまで良くない。もっと視界を良くしようと〈閃光(フラッシュ)〉を使用している魔法使いを先にいかせようとする。すると──

 

 ボッ!

 

 突如攻略隊がいる部屋に火がついた。蒼く不気味な火だ。突然火がついたことに驚くアウル。いや、アウルだけではない。攻略隊全員が驚いている。それもそうだろう。アウルは〈閃光(フラッシュ)〉を使うように命じたものの、火を使えとは命令していない。火は使えるものの、火を灯す木材の量が少ないため出来るだけ使わないようにしているからだ。

 だからといって誰かがつけたのかと思うもそれもない。この部屋には攻略隊以外誰もいない。もしいればレンジャー達がいっているからだ。その場にいた攻略隊は一気に警戒心を上げる。

 

ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!

 

「な、何だ!」

 

 最初の火がつくとそれに続くように連続で火がつく。連続で火がついたことに攻略隊から驚きの声が上がる。

 すると、攻略隊の目の前の部屋の中心が突如として光だす。

 何が起きてるのか分からないアウルは光の原因を探すと、地面に魔法陣のようなものが光っていた。これが原因なのだろう。なんとかして食い止めたいアウルだが、時は既に遅し。

 光が突如としてやむと──そこに一体のモンスターがいた。

 大きさは四メートルほどだろうか。肌は全体的に青く二足歩行で、両腕には指が三本しかついておらず、背中には羽が生えており、目を四つある。さらに、口は虫とは思えないぐらい大きく、まるで肉食獣を思わせるような歯並びで口元からは涎がダラダラと流れ、荒い息を何度も吐いている。

 荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)。これがこのモンスターの正体だ。

 33レベルのモンスターで特殊な戦法が得意なモンスターだ。飛行能力や毒などの状態異常はもちろんのこと、このモンスターの一番厄介なところは捕食能力だ。相手を捕食することで一定時間バフを無効化したり、一定のダメージを与えることができる。さらに、飲食を行うことで1.5倍の追加バフを発生させることが可能でその対象は人間でも可能なモンスターだ。

 荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)が攻略隊を睨みつける。睨み付けられた攻略隊はまるで蛇に睨まれたカエルのように縮こまってしまう。しかし、荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)はそんな攻略隊のことをお構いなしに攻略隊に突っ込み──目の前にいた冒険者三人を捕食した。

 グチャグチャと咀嚼音が静かに部屋に響き渡る。荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)の口元から冒険者だったものの血や肉がピチャピチャと音を立てながらこぼれ落ちる。

 

「──!?全員武器を構えろ!前衛はボスを抑えつつ、攻撃!魔法使いもその隙を見て攻撃に加われ!神官は前衛の回復!それ以外はサポートに回れ!急げ!殺されるぞ!」

 

 誰よりも早く意識を取り戻したのはアウルだった。

 アウルは目の前の光景に現実逃避をしたなったが、そんな暇はないと葛藤し、急いで周りに指示を出す。

 アウルの指示を聞いた攻略隊は意識を取り戻すと急いで行動に移す。自分達もああなりたくないという恐怖からだ。

 前衛達が荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)に突撃する。しかし──

 

「ぎゃあ」

「ぐはっ」

「がっ」

「た、助け」

 

 蹂躙。

 その一言に尽きる。

 荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)に突撃すると同時に一瞬にして蹴散らされる。

 その光景を見た攻略隊は絶望した。

 突撃した冒険者はランクが低いものの、決して弱い訳ではない。勿論、強さはアウルよりも低いものばかりだったが、一瞬にして蹴散らされるなど絶望しかなかった。

 再び攻略隊の動きが止まる。しかし、荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)は気にせず、次はアウルを見つめる。

 

──死ぬ。

 

 その言葉がアウルの頭の中に浮かび上がるがアウルには早速立ち向かう気力が残っておらず、アウルは生き残ることを諦めそのまま目を瞑った。

 荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)が襲ってきた冒険者を食べ終わるとアウルに突撃し、アウルは死んだ────────筈だった。

 

「ウオオオオオオオ!」

 

 絶叫が部屋に響き渡る。

 その発生源は先程まで暴れていた荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)からだ。

 幾ら待っても痛みが来なかったことに気になったアウルは荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)を見た。

 よく見てみると左肩から右の腰に向けて斬られたような傷が出来ていた。元からあったものではない。そう断言出来るのはしっかりと荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)の外見を見ていたからだ。

 

──誰かがやったのか?

 

 ふと、頭の中で過ぎったがそれをアウルら否定した。

 今回のゲート攻略には自分が一番強い。そのためにリーダーを任されたのだから。

 では誰がやったのか。アウルは目を動かすと隣に漆黒の戦士──モモンがいた。

 

──まさか彼がやったのか?

 

 だが、そんな筈がない。彼は(カッパー)の冒険者だ。傷をつけられる筈がないのだ。

 

「大丈夫でしたか?」

 

 そんなことを考えているとモモンがアウルに声をかけた。

 

「あ、あぁ、助かったよ。ところで、誰が奴に傷をつけたんだ?」

 

 アウルは死ぬと分かると目を瞑っていたせいで誰がやったのかを見ておらず、モモンに尋ねた。

 

「それなら私がやりました」

「は?」

 

 モモンの返答にアウルはうっかり間抜けな声を出してしまう。

 それもそうだろう。(カッパー)の冒険者が自分より格上の相手を傷つけたといっているのだ。信じられる筈がない。

 

「貴方達では厳しそうなのでここからは私一人でやらせていただきます」

 

 その言葉を普段のアウルが聞いたら「何を馬鹿なことを!?」と叫んだだろう。しかし、アウルには怒鳴るほどの気力は残っておりず、もしかしたら本当に彼がやったのかもしれないと感じたアウルはモモンに後を託すことにした。

 

「そうか………なら、君に任せるよ」

「はい、それでは……ふん!」

 

 モモンは了承をとるとそのまま荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)に立ち向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

「ウオオオオオオオ!」

 

 そこでは激しい攻防戦が繰り広げられていた。

 モモンは剣を振り下ろし、荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)は持ち前の力を生かし、腕を振るう。

 両者がぶつかり合うと激しい音がその場から発生し、またしても武器と素手のぶつかり合いが始まる。

 両者の戦いは凄まじく誰も参加しない。いや、出来ないのだ。

 両者の戦いは互角、いや、荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)の方が優勢だった。

 原因は二つ。

 一つ目は、モモン──アインズの経験不足。

 アインズ本来は魔法詠唱者。つまり、後衛職なのだ。前衛で戦うことがなく、戦士として戦うのはこれが初めてだった。故に、レベルが同じでも生まれつき自分の力を使いこなしている荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)の方が優勢だ。

 二つ目は、バフにより荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)の力が上がっていることだ。

 荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)は飲食以外の生命体を捕食するとバフを発生させるスキルを持つ。先程冒険者を食らったお陰でバフ効果が発生しており、レベルは同じだが荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)の方が強くなっていた。

 このままでは勝ち目がないと判断したアインズ──モモンは最後の切り札を使うことにした。

 

「〈完璧なる戦士(パーフェクト・ウォリアー)〉」

 

 誰にも気づかれないほどの小さな声でモモンは魔法を唱える。

 

「ウオオオオオオオ!」

「はぁ!」

 

 またしても両者がぶつかり合う。しかし、ぶつかり合うと今度は荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)の腕が斬られ、ボトリと地面に落ちた。

 荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)は腕を落とされたことに動揺するが、モモンはその隙を見逃さずそのまま追撃をかます。

 先程まで優勢だった荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)は困惑する。しかし、モモンはその手を止めず何度も何度も攻撃を繰り返す。

 

「勝てる!勝てるぞ!」

「あと少しだ!頑張ってくれ!」

 

 それを見ていた攻略隊の歓声が部屋に広がる。

 

「ぜやぁ!」

 

 モモンは止めを刺そうと突進する。

 それに対して荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)は動かない。何か策があるのだろう。

 モモンがギリギリまで接近した瞬間、荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)は口から紫色の液体──毒を吐き出した。

 相手の動きを止める麻痺毒だ。モモンの動きを鈍らすのが目的だろう。

 それに対してモモンがとった行動は──────

 

「ふん!」

 

 そのまま突撃するであった。

 モモンの種族はアンデット。アンデットは基本能力として毒無効化を有しており、毒による攻撃は効かないのだ。しかし、モモンがアンデットであったことを隠しているおかげでそれに気づかなかったのだ。

 回避する訳でもなく突撃したことが予想外だったのか、荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)は動揺してしまう。

 

「終わりだ!」

 

 回避しようとするが時は既に遅し。

 モモンのグレードソードが荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)の頭に振り下ろされ、真っ二つに両断される。そのまま荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)だった肉塊が地面にグチャリと音を立てながら倒れた。

 

ダンジョンの主を倒しました

経験値を獲得しました

アイテム:荒ぶる害虫(ステミネーション・インセクト)の死骸×1を見つけました

アイテム:データクリスタル×1を見つけました

アイテム:狂気のイヤリング×1を見つけました

 

 モモンは倒し終わると戦利品を確認した。あいからわず微妙だなと思いながら、やっぱりペナルティークエストの方が効率がいいと感じた。

 こうしてゲート攻略は終了するのだった。

 

 




 あー、疲れた。
 はい、四話目はこれで終わりです。
 次はいよいよ転職クエストの予定です。
 次回もお楽しみに!

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