イギリス、ロックダウン後の新型ウイルス対策を発表 検査・追跡をさらに拡大

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イギリスのボリス・ジョンソン首相は23日、新型コロナウイルスの流行を受けたロックダウン中のイングランドについて、12月2日のロックダウン解除以降の指針を発表した。

ジョンソン首相が下院で説明したところによると、イングランドには従来の3段階の警戒レベル(ティア)が再び導入されるが、それぞれの段階で制限などが厳格化される。

一方で、スポーツ観戦や、結婚式や宗教儀式などへの参加が認められる。

イギリス政府はさらに、検査・追跡システムの拡大を発表。今後は新型ウイルス検査で陽性だった人の濃厚接触者に対しても検査を行う。

さらにイングランドへの旅行者については、自費で検査を受ければ自主隔離期間を短縮することで、旅行産業の支援につなげたいとしている。

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イギリスでは23日、新たに1万5450件の感染が報告された。陽性判明から28日以内に亡くなった人は206人に上っている。

ただし月曜日は報告に遅延が出るため、感染数も死者数も少なくなるのが通例だという。

より多くの地域が「高い警戒レベル」に

政府は26日にも各地域の警戒レベルを発表する予定。感染報告数や実効再生産数「R」、国民保健サービス(NHS)への圧力などを考慮して決められるという。

警戒レベルは14日ごとに見直され、来年3月まで続けられる見込みだ。

新たに導入される警戒レベルは以下の通り。

ティア1(中程度)

  • 屋内外での集会は6人以内とする
  • パブやレストランは午後11時で閉店
  • 移動を最小限に抑え、在宅勤務が推奨される
  • スポーツイベントやライブ・パフォーマンスなどは人数を制限して開催できる
  • 美容院など身だしなみサービスの店舗は営業可能

ティア2(高い)

  • 屋内では他世帯との集会は禁じられる
  • 屋外での集会は6人以内
  • パブやレストランは午後11時で閉店。アルコール販売は食事とのみ
  • スポーツやライブ・パフォーマンスなどは観客数を制限して開催できる
  • 美容院などは営業可能

ティア3(非常に高い)

  • 自宅の庭や接客業の店舗など、屋内外での他世帯との集会は禁止
  • 公園などの公共スペースであれば、屋外で6人以内の集会が認められる
  • パブやレストランは配達やテイクアウト営業のみ
  • 屋内の娯楽施設は営業停止
  • 地元以外への移動は推奨されない
  • 美容院などは営業可能

現在、濃厚接触者の陽性が判明し自主隔離しているジョンソン首相は、ビデオリンクで下院の審議に参加し、「少なくとも一時的には、以前よりも多くの地域が高い警戒レベルに設定されるだろう」との見解を示した。

その上で、一連の制限が事業主を「厳しい状況」に置くことを「残念に思う」と述べた。

一方で首相官邸での記者会見では、ワクチンや大規模な検査体制により、来年のイースター(復活祭)までには「状況は大きく変わるだろう」と話した。

それまでは「厳しいティア制度と、大規模な地域での検査、そしてワクチンプログラム」を行っていくとしている。

「クリスマスの停戦はない」

スコットランドとウェールズ、北アイルランドでは、それぞれの自治政府が独自の感染症対策を行っている。

しかしクリスマス休暇に向けては、イングランドを含めた4地域が共同で、今週中にも指針を発表することになっている。

ジョンソン首相は、「今年はいつも通りのクリスマスになるとは言えない。しかしあらゆる宗教、そして無宗教の人にとって、苦しい時期を愛する人たちと過ごすのは、いつも以上に貴重な経験のはずだ」と述べた。

「しかし当然ながら、新型ウイルスはクリスマス停戦を認めてくれない(中略)高齢の親族を訪ねるリスクについては、慎重に判断してほしい」

最大野党・労働党のキア・スターマー党首は、「従来の警告システムは作用しなかった」ことから、地域ごとの警告システムに戻ることは「危険」だと指摘した。

その上で、地域ごとの警戒レベルの発表をできるだけ早く正確に行い、人々が今後の計画を立てられるようにすべきだと強調した。

検査・追跡システムを拡大

イギリス政府は併せて、新型ウイルス検査で陽性だった人の濃厚接触者に対しても検査を拡大すると発表した。

現在、濃厚接触者には14日間の自主隔離が課されているが、これを減らす狙い。

今後、濃厚接触者は1週間に渡って毎日検査を受け、陽性反応が出なければ自主隔離を行う必要はないという。

ジョンソン首相はまた、迅速な検査によって、週2回検査を受けた人が介護施設を訪問できるようになると述べた。

旅行者は自費検査で自主隔離短縮も

さらに、イングランドへの旅行者については、到着直後に自主隔離した後、到着後5日目に自費で検査を受ければ、隔離期間を半分以下にする措置を取る。

グラント・シャップス運輸相によると、この施策は12月15日に導入される。

旅行者は到着から5日間は隔離が必要だが、その後は検査を受けるかどうか各自で選べる。検査は一般企業が行い、費用は65~120ポンド(約9000~1万6000円)ほど。検査結果は24~48時間で判明するという。

検査結果が陰性なら、旅行者は最短6日間で自主隔離を終えられるようになる。

シャップス運輸相は、「公共の安全を保ちつつ、海外旅行を推進できる」と述べた。

「新たな検査戦略によって、もっと自由に旅行ができるようになり、愛する人に会いに行ったり、国際ビジネスを推進したりできるようになる。到着後5日目に検査を受ける選択肢を設けることで、パンデミックから立ち直ろうとしている旅行業界の支援にもつながる」