One by one she would cut through the obits of Janus, Mimas, Enceladus, Tetheys,
Dione, Rhea, Titan, Hyperion…worlds bearing the names of gods and goddesses
who had vanished only yesterday, as time was counted here.
(ヤヌス、ミマス、エンケラドス、テチス、ディオネ、レア、タイタン、ハイペリオン――ここの時間経過で言うなら、つい昨日まで信じられていた神々と同じ名前をもつ世界――その軌道をひとつひとつ越えてゆくのだ。)
Arthur C. Clarke, 2001: A Space Odyssey, Roc, 2000, p. 257
――They became farmers in the fields of stars;they sowed, and sometimes theyモノリス――人類にTMA-1(TYCO MAGNETIC ANOMALY-ONE)と名付けられた物体――を一言でいえば、
reaped…the explorers saw a world swarming with life. For years they studied,
collected, catalogued, When they had learned all they could, they began to
modify…So they set out once more into the abyss, knowing that they would never
come this way again. Nor was there any need. The servents they had left
behind would do the rest.(P244)
(彼らは星々の農夫となり、種をまき、ときには収穫を得た…彼らが見出したのは生命に満ち溢れる世界だった。長い歳月をかけて研究・調査・収集・分類が行われた。知りうる全てのことを学ぶと、彼らは修正にとりかかった…そうして彼らは、この地に二度と来ることはない知りながら再び深淵なる宇宙へと旅立っていった。だが来る必要もない。彼らは忠実なる僕をこの地に残してきた。残りの仕事はこの僕たちがやってくれるのだ。)
――A simple, maddeningly repetitious vibration, it pushed out from the crystal, and hypnotized all who come within its spell.(P13)
(単純な、そして気がふれる程幾度となく繰り返される振動が透明な岩から脈打ちはじめると、その振動に引き寄せられた全てのヒトザルを虜にした。)
――his brain lay open to its still uncertin manipulations.(P21)
(彼の開け放たれた脳は、今だぎこちない操作の手を受け入れていた。)
――Moon Watcher's stone hammer obliterated its dim consciousness.(P22)
<月をみるもの>の石のハンマーが振り下ろされると、そいつのおぼろげな意識はこの世界から消え去った。
このモノリスはヒトザルに干渉し、知的生命への進化を助長し始める。モノリスは一種の教育機械であり、ヒトザルはモノリスから道具を使う術を学ぶのである。こうして人類の祖先は知性への階段を登り始める。彼らは今度は道具自体に作り直される様になり、彼らに備わった器用さは脳の発達を促進させる。
――The spear, the bow, the gun, and finaly the guided missile had given him weapons of infinite range and all infinite power.(P36)
(槍、矢、銃、そして最後には誘導ミサイルの登場によって無限の到達距離を手にした人類は、それと同時に無限の武力を手にした。)
モノリスの力でヒトザルは石のハンマーを武器として使うことを学んだ。こうしてヒトザルはホモ・サピエンス(Homo sapiens)に進化し、遂に軌道上に誘導ミサイル配備するまでに知性を発展させる。映画の中では、ヒトザルは骨を武器として他のヒトザルと戦うことを覚えるが、勝利の
――everyone heard those piercing electonic screams. After three million years of darkness, TMA-1 had greeted the lunar dawn. (P100)
(だれもが、突き刺すような機械的な叫び声をきいたのだ。三百万年もの間、暗闇の中で過ごしてきたTMA-1が月面の夜明けを迎えて発した歓喜の声を。)
月面で発見されたモノリスは太陽を原動力とする――少なくても太陽の光をトリガーとする――通信装置だった。その信号は寸分たがわず(precisely)土星を指していた。かくして「木星計画」の下に宇宙船ディスカバリー号は最初の目的地である木星に向けて航海を開始する。ボーマン船長が乗るディスカバリー号は木星の巨大な重力場を利用して最終の目的地である土星に向かってまっしぐらに飛んでいくのだ。しかし、この航海には試練が待っていた。
この船の六番目のクルーはHAL 9000と名づけられた高度に進歩したコンピュータである。人類と同等、否、それ以上の知性を備えた存在であるHALは、人間が下した命令の矛盾によって神経症の患者よろしく心を病んでいく。HALは、クルーと話し合い協力するよう命令されていた一方で、密かに与えられたモノリス探査の任務について、クルーには話さず隠せという命令も受けていたのだ。異常をきたしたHALはクルーを排除しようするが、このエピソードは「コンピュータの反乱」の象徴ともなっている。この点は以下の説明されている。
――but their twin gods of Security and National Interest meant nothing to Hal. He was only aware of the conflict that was slowly destroying his integrity――the conflict between truth, and concealment of truth. (P192)
(保安と国家利益という双子の神はハルには何の意味もない。彼はただ己の自我をゆっくりと蝕んでいく相克――真実と真実の隠匿との相克――を感じていた。)
こうして、異常に気付いたボーマンによって、HALの自律機能が停止される。コンピュータとの血みどろの戦いに勝ったボーマンは、ディスカバリー号の真のミッションを初めて知らされるのである。土星への孤独な旅を続けるボーマンは、太古の神々の名前が付けられた土星の衛星ヤヌス、ミマス、エンケラドス、テチス、ディオネ、レア、タイタン、ハイペリオンの軌道を超えると、第八衛星であるヤペタスに到達する。そして、そこには再びモノリスの姿があった。巨大なモノリスに近づくと、ボーマンを乗せたスペースポッドはその中に飲み込まれていく。
――It's just like the thing you found on the Moon! This is TMA-1's big brother! (P242)
(月てみたやつとそっくりだ。こいつはTMA-1のビックブラザーなんだ!)
――"The thing's hollow――it goes on forever――and――oh my God!――it's full of stars!"(P254)
(なかは空っぽだ…そして彼方へと続いている…すごい…降るような星 [ だ!)
そこには人間の知識にあるどんな世界とも関わりがない見知らぬ宇宙が広がっていた。やがてスペースポッドは固い表面に降りる。そこには思いもかけない光景が広がっていた。
――The space pod wes resting on the polished floor of an elegant, anonymous hotel suite that might have been in any large city on the Earth. (P279)
(スペースポットはその美しく磨かれたフロアに降りていた。そこは地球の大都市なら何処にもありそうなホテルのスイートルームだった。)
それは、ボーマンに対する地球外知的生物の歓待だった。彼はもてなしを受けた後、深いに眠りにつく。やがて彼は大いなる領域へと導かれ、かつてない進化を遂げることとなる。
――David Bowman moved into realm of consciousness that no man had experienced before.(P290)
(ボーマンは人類が未だ経験したことのない意識の領域に入った。)
――The timeless instant passed; …the baby opend its eyes and began to cry.(P291)
(永遠にも似た一瞬が過ぎ去った…赤子は目を開き、うぶ声をあげた。)
――With eyes that already held more than human intentness, the baby stared into the depths of the cystal monolith, seeing―but not yet understanding―the mysteries that lay beyond. (P293)
(人間の集中力を超えるまなざしで、赤子は透き通ったモノリスの深みをのぞき、彼方に横たわる大いなる謎を――今だ理解にはいたらないが――ながめた。)
ボーマンは、モノリスによってスターチャイルド(Star-Child)へ超越的な進化を遂げる。進化を遂げた彼――スターチャイルド――はかつての故郷地球へと一気に飛翔する。
――He had returned in time … and history as men knew it would be drawing to a close … he became aware that a slumbering cargo of death had awoken, and was stirring sluggishly in its orbit … He put forth his will, and the circling megatons flowered in a silent detonation that brought a brief, false dawn to half the sleeping globe. (P297)
(彼は手遅れになる前に戻ったのだ…そして人間だちが考える様な歴史は終わりを告げるのだ…彼は、浅い眠りの中にあった死の積荷が目覚めたことに気付いた。この死の積荷は軌道上でゆっくりと動き始めたのだ。彼が意志を送り出すと、メガトン爆弾は音もなく爆発し閃光の花をさかせた。やがて眠る半球の上に短い仮初めの夜明けが訪れた。)
2001年宇宙の旅――"A Space Odyssey"というタイトルが示す様に、この物語は、宇宙時代の叙事詩として解釈出来る。ボーマンは正にオデュッセウスであり、HALはさしあたり旅人を喰らう粗暴な一つ目巨人怪物キュクロプスであろう。大海原を漂流し、試練を経てたくましく成長したオデュッセウスは、留守中に王国を荒らしていた連中を一掃する。これは、スター・チャイルドとして地球に帰ってきたボーマンが核ミサイルを一掃するという物語とぴたりと合致する。
冒頭に述べた様に、この映画がサブカルチャーに与えた影響ははかり知れない。この物語が生まれた当時、若者の間で西欧キリスト教文明の終焉が強く意識されるようになっていた。彼らは偽りの神ではなく本当の神を求めていた。否、自らが神に近づくべく、そしてまた新たな宗教的体験を得る為に、インドの瞑想やLSDに没入していく。かくして新たな視覚的体験をもたらすこの映画は文字通り「カルト」となった。70年代に大流行することとなる宇宙人とのチャネリングは『2001年宇宙の旅』以前には全く存在しなかった。けだし、ヘヴンズ・ゲート(Heaven's Gate)の様な宗教団体は、この映画がなければ存在し得なかったかもしれない。神を否定したこの物語が神格化されてしまったことは皮肉なこととしてか言いようがないが、この物語はその後70年代に雨後の筍のごとき勢いで生まれる数々のカルト教団の哲学的基盤を作ったと言っても過言ではない。
この映画が生まれて早や40年あまり。この物語の魅力は未だ色あせることはない。しかし、この物語をあの時代――60年代アメリカという類稀な時代――の中で紐解く時、そこにはその時代の普遍的な主題がいつも提示されていることが分かる。核戦争の恐怖、コンピューターによって実現される高度管理社会への恐れ、宗教的な神の否定、そして人類進化への狂おしいまでの渇望。あの時代、人類が最も恐れていたのは、正に人類であり、そしてまた人類が作り出した
とまれ、この『2001年宇宙の旅』が映画史に残る名作とされているのは、そこで示される思想や芸術性だけにある訳ではない。まさに60年代アメリカという類稀な時代における普遍的な主題を鮮やかなまでに切り取り我々の前に提示したことこそ、その真の価値があるのではないだろうか。それ故、この一連の物語はあの時代を論じる上で極めて重要な
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