登録日:2019/05/20 Mon 22:15:04
更新日:2020/11/10 Tue 02:22:45
所要時間:約 10 分で読めます
──嗚呼、最期だけでも傍に居よう。
孤独だった君の、安らかに逝かんことを。
SCP-4999とは、シェアード・ワールド「
SCP Foundation」に登場する
オブジェクトの1つ。
オブジェクトクラスはKeter。
過去にはフランス支部独自のシステムの脅威レベルとして青が付与されていたが、現在はdjkaktus氏考案の
アノマリー分類システムによって、クリアランスレベル3(最低レベル機密)、撹乱クラス4/Ekhi、リスククラス1/Noticeが付与されている。
どちらにせよ、収容は限りなく困難ではあるが害はなく、むしろどちらかといえば有益なオブジェクトであることを示していることには変わりがない。
はじめに
さて、下3桁が999のナンバー、つまりそれぞれのシリーズ最後のナンバーであるオブジェクト達は一癖も二癖もある奴らであるのはご存じであろう。
SCP-999 『くすぐりオバケ』。
クソトカゲすらも圧倒する驚異の危険性を持つのかと思いきや、くすぐりのエクスパートにして人畜無害なアイドルスライム。
SCP-999-JP 『I am No.9』
自身に関わりのある
事象を9に改変し、
未来に起こることは
その結果を9に帰結
させる現実改変者。
もしも、自身を9へ
改変する行為を防ぎ
9を破壊する者には
容赦のない異常者。
SCP-1999-JP『杞憂の終末論』。
大予言を日本全体で演じられてしまった結果、存在しないはずの日本支部から大量のSCiPと要注意団体が見つかった、SCPを生み出すSCP。
SCP-2999
『クロネコとシロウサギ』。
複雑難解な財団の設定の中でも群を抜いてわけのわからないハブ『
Pitch Haven』に密接に関わり、またメタタイトルで釣られた人を恐怖に叩き落とすプロメテウス研究所の地下施設。
SCP-3999『私は私に起こること全ての中心にいる』。
“意味がわからない”の極致に存在する、3000コンテストのアイデアに苦悩するサイトメンバーとそれに巻き込まれる財団職員とのZK-クラスを描いた末路のナニか。
月日が流れるのは早いもので、3000コンテストでアナンタシェーシャが優勝してから2年が経ち、シリーズIVが完成して4000コンテストが行われた。このSCP-4999も4000コンテストへのエントリー作品であり、3位タイの245Voteを手に入れている。
そしてシリーズVといえば原点回帰と簡潔化という風潮なのは最近の新しいSCP解説を見て貰えばお分かりだろう。このSCP-4999もそれに違わず、文字数は2307文字、アニヲタwiki風に言うなら4分で読めます級の報告書である。
では、解説に移ろう。
概要
まず最初に、SCP-4999の特別収容プロトコルを見てみよう。
- 同時に出現しないし思った通りに出現したりさせたりできない上、もしも直接目撃したら最終的にそいつ死ぬから実質収容違反は起きないよ
- SCP-4999を捉えた写真や動画などは全部回収して関係者には記憶処理するよ
こう見るとミーム汚染とか認識災害でも引き起こしそうな危険なタイプのオブジェクトに見えるが、リスククラスNoticeの理由はちゃんとある。
SCP-4999は黒のスーツを着たシブいおじさんである。どんな人か見たければ、本部の報告書にプロの写真家が撮影した(という設定の)画像が添付されてるので見に行ってみるといいだろう。
ただし、このおじさんは見た人によってどのような姿をしているかある程度変わる。概ね黒スーツのおじさんという部分は共通しているものの、細かい点では違いが見られるという。
このおじさんは1人孤独で死にかけている人の傍に、その人が死ぬ20分未満の時視界の中に突然出現する。
この時、椅子など何か腰掛けることのできるものがある場合はその上に座った状態で、何もないならばベッドのそばなど近くに立ち続ける。
そしてスーツの左ポケットよりタバコを取り出して、死につつある人にタバコを勧め自分も吸い始める。
断られた場合でも自分は吸い続け、その人の手を取って重ねたり、手を握ったりと物理的な接触を行う。勿論この接触は害意のないものしか行わない。
これはその人が息を引き取るまで続けられ、拒んだり怯んだりした人は1人もいなかったと記録されている。また、存在に気づいた際涙を流したり、タバコを吸わせてもらった時に感謝の意を述べたことはあったものの、不思議にも会話を試みた例は1つもない。
おじさんは対象が息を引き取ったと確認次第消失し、新たな孤独死を迎えようとしている人を探し始める。
しかしタバコだけはその場に残しているため、そのタバコだけがおじさんが出現した唯一の証拠となる。
これが特別収容プロトコルの、“直接目撃したらそいつは最終的に死ぬから問題ない”の真意である。
いくら異常性を持つオブジェクトに遭遇したとはいえ、その情報は墓場まで持っていかれるため何ら問題はないというわけだ。
おじさんが出現する条件は前述した通り『孤独死を迎えつつある人』であるが、その中でも特に多い特徴が財団の手によってまとめられている。以下が一例。
- 1人で生活している
- 無宗教派である
- 貧困またはホームレスである
- 精神病の経歴を持つ(精神から来る境遇を、真に理解してもらえないという意味なのであろうか)
- 退役軍人である(同僚が戦争で死んでしまった経験があるという意味だろうか)
- 犯罪歴が無い、または暴行罪の判決を受けたことが無い
- 現在のところ存命の親族がいない
- 未結婚あるいは重要な他者を持たない
- コミュニティ内での社会的な立ち位置にあまりいない、または全くいない
- プロまたは個人として達成したことの重要な記録を一切誇示しない
- 利益的な相互対人関係を持っていない
これらの他にも、“ありふれた”人、没個性的な人、平凡や重要ではない人に出現する可能性が高い。
そのような孤独な、しかし真っ直ぐに生きてきた人たちの最後の20分を、せめて寂しくならないようにとおじさんはやってくるのだが、前述の通りおじさんは1人だけな上に、対象が意識のある状態かつ独りぼっちの時にのみ現れる。つまり財団の誇るエージェント達が待ち構えてたりすると出現しないのだ。
ただまぁ直接監視されているとダメなだけであり間接的、つまり監視カメラを通してなどすればおじさんの出現を確認できる。
このため財団としてはおじさんの自己収容性(自分で収容状態、つまり一般市民に存在が知られず被害がいかない状態に置く特性)に任せ、もしも何かで記録されてしまった場合には回収と記憶処理、という一見対認識災害プロトコルのような処置が置かれているというわけだ。
おじさんに関する全ての実験は先ほども言った通り待ち伏せができないということに加え、倫理的な理由も含めて試みられていない。
財団は冷酷だが残酷ではないのだ。1人寂しく死んでいく人の心を好奇心という土足で踏み荒らすことはせず、そっとしておくのだろう。
4000コンテスト-歴史-
このSCP-4999がエントリーしていた4000コンテストのテーマは『歴史』である。
例えば1位に輝いた
SCP-4000は
001提言枠である『ブライトの提言 - ファクトリー』と関連して財団の創設の歴史に密接している。
他にも5位の
SCP-4500こと『ソクラテス式収容プロトコル』も、アテナイに存在した財団の先駆けから、財団の歴史をイデア論やソクラテス式問答法と絡めて描いたものである。
では、SCP-4999はどのような歴史と関連あるのか。
SCP-4999は当初都市伝説として広まった説話である。
病院で最後を迎えようとしている人を慰めに来たおじさんが病院の監視カメラに映り、そのビデオがTV番組やネットを通じて知れ渡った形だ。
これらの情報に対しては小規模なニセ情報プログラムによってカバーされており、財団ナンバーとしては1998年11月27日に登録されている。
だが、SCP-4999がいつから現れ、孤独な人を看取っているのかは未だに判明していない。
SCP-4999の持つ特徴と類似点の多い存在が世界中の歴史、神話、文化などなどに描かれており、あるものは数千年前のもので、あるものは人類の文明を優に超えたものもある。
もしかしたら、古代に描かれた人々のうちの1人は、SCP-4999ことおじさんのことを描いていたのかもしれない。
SCP-4999は遥か遠い昔から、我々人類を見守っていたのではないだろうか。
孤独な人を看取り、独りな人を見届けてきた。
彼が最期にいたお陰で、とてもちっぽけな、だが確かにそこにあった歴史が誰にも知られず消え去ることなく、確かなものとなった。
だから、昔の人々はその歴史の証人を歴史に刻んだのだとしたらどうだろうか?
願わくば、私たちを幾千年もの間見守ってきた彼の歴史が、後世に残りますように、と。
SCP-4999
"Someone to Watch Over Us"
補遺
いくつかのSCiPとクロステストが既に行われている。一部を紹介して、この項目を〆させていただく。
ざっくり解説・・・開いた人の好みに応じたピザを生み出すピザボックス。
被験者: |
SCP-4999 |
結果: |
エクストララージサイズ、ハーフシュプリーム、ハーフペパロニ |
脚注: |
SCP-4999は末期腎不全のD-430276とピザを分け合った。 D-430276の亡き夫と時々分け合っていたピザと同一種類ものであり、またSCP-458が容量を超えるピザを生み出した最初の事例である。 |
ざっくり解説・・・撮影した相手が今本当にやりたいことを写すカメラ。
被験者: |
SCP-4999 |
撮影された行動: |
████████病院にて、タバコを吸いながら仰向けになっているステージIVの癌患者と側に立つSCP-4999。 |
撮影結果: |
SCP-4999が存在せず、患者がとある男の側に立っていること以外は同じ写真。 |
追記・修正はタバコを吹かしながらお願いします。
最終更新:2020年11月10日 02:22