【米大統領選2020】 検証・投票について色々なうわさ 投票の数や投票機など

BBCリアリティーチェック(ファクトチェック)チーム

Rudy Giuliani at Republican National Committee presser on 19 November
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トランプ氏の私設弁護士、ジュリアーニ氏は証拠を提示しないまま、大規模な不正があったと繰り返している。写真は19日、ワシントンの共和党全国委員会本部で

米大統領選では、ドナルド・トランプ大統領とその陣営が、ジョー・バイデン次期大統領が勝ったという結果を覆そうと、州議会への働きかけや訴訟を各地で続けている。

投開票において大規模な不正や異常があったというその主張に、具体的な証拠はあるのだろうか。

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トランプ陣営の主張:「登録有権者よりも票が多い」

トランプ氏は、一部の激戦州では有権者登録している人数よりも投票数が多かったという、立証されていない主張を繰り返している(トランプ氏のツイートにはツイッター社が「選挙不正をめぐるこの主張には異議が唱えられています」と警告を表示している)。

有権者の人数に関するこのうわさは、3日の投票日以降、様々な形で流布してきた。

Twitter の投稿を飛ばす, 1

Twitter の投稿の終わり, 1

Presentational white space

最近になってこのうわさは、特にミシガン州を対象にするようになった。トランプ陣営は同州の一部地域では、投票率が100%を超えたと主張している。

この主張の出所は、かつて共和党から議会に出馬したラス・ラムスランド氏がオンラインに投稿したリストらしい。それによると、19の選挙区で投票率が100%を超えたことになっている。

しかし、このリストの地名はいずれも、ミシガン州ではなくミネソタ州のものだ。

Precincts which are claimed to be in Michigan - but are in fact in Minnesota
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トランプ氏の支持者が拡散するこの表は、ミシガン州の選挙区のリストだということになっているが、地名はミネソタ州のもの

Presentational white space

しかも、投票率が異常に高いというのは本当なのだろうか。

リストの一番上にあるベンヴィル郡区の投票率は実に350%ということになっている。

ベンヴィルの人口は少なく、公式の選挙記録によると、有権者登録していた71人のうち、63人が投票したという。

つまり、投票率は89%だ。

BBCは、リストに名前のある他の選挙区も確認した。いずれも、投票率は100%未満だった。

つまり、このリストはあらゆる意味で間違っている。そもそも州が違うし、投票率もすべて違う(言われているようなミシガン州ではなく、該当するミネソタ州の選挙区について)。

トランプ氏はさらに、ミシガン州最大都市デトロイトについて、「人口より票が多い」と主張し、「自分がミシガンで勝った!」と主張した(このツイートにも、「選挙不正をめぐるこの主張には異議が唱えられています」という警告文がついている)。

Twitter の投稿を飛ばす, 2

Twitter の投稿の終わり, 2

しかし、デトロイトの投票結果を確認すれば、投票率は50%未満だったことがすぐに分かる。

ほかにも、ウィスコンシン州で有権者の人数より投票が多かったといううわさがソーシャルメディアで広まったが、それはただ単に、登録有権者の人数について古いデータを見ていたからだ。

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トランプ陣営の主張:「民主党の票が一気に急増した」

トランプ氏と支持者は、開票作業中にバイデン氏の票が一気に急増したと主張し続けている。

ルデイ・ジュリアーニ弁護士はワシントンの共和党全国委員会本部で19日に開いた記者発表で、デトロイトの開票所で早朝に大量の票が運ばれてきたという主張を繰り返した。

Detroit TFC Center election counting on 4 November
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ミシガン州デトロイトの開票所(4日)

ジュリアーニ弁護士の発言は、開票スタッフに主張に基づいたものだ。このスタッフは、食料を運んできたはずのトラック2台を見たが、「このトラックから食べ物が運び出されるのは見なかった。そしてたまたま、ミシガンで10万以上の票が新たに見つかったと報道された。最後のトラックがいなくなってから2時間もたっていなかった」と主張していた。

しかし、この言い分を含め、票の急増に関する他の主張も、ミシガン州ウェイン郡の巡回裁判所判事が、信憑性(しんぴょうせい)がないとして証拠採用しなかった。

ほかにも、共和党側はミシガン州やウィスコンシン州といった激戦州で民主党に入れた票が一気に急増したのは、不正が原因だと主張している。しかし、多くの場合、これはミルウォーキーやデトロイトなどの大都市部で大量の票の開票結果が一気に集計されたからだと、簡単に説明がつく。そしてミルウォーキーやデトロイトは伝統的に、民主党の手堅い地盤だ。

また、事務処理のミスやソフトウェアのバグが原因だったこともあるが、これは発見から間もなく修正されている

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加えて、今回の選挙では記録的な数の郵便投票が投じられたが、それは圧倒的に民主党支持の票だった。特に都市部ではそれが顕著だ。

これは、トランプ氏がかねて郵便投票は信用できないと主張し続け、バイデン氏は感染対策のためにも郵便投票を促していたことと関係する。また多くの都市部は伝統的に、民主党支持者が多い。

ミシガンとウィスコンシンを含む一部の州では、3日の投開票日にはまず投票所で直接投じられた票から先に集計し、郵便票の開票は後回しになった。封筒に入った郵便票の集計には手間と時間がかかることもあり、まとまった数の郵便票が開票されれば、バイデン氏の得票数が一気に上がるのも、予想どおりの展開だった。

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トランプ陣営の主張:「投票機がトランプ票をバイデン票に変えた」

トランプ氏と弁護団はさらに、一部の激戦州で使われた投票機に問題があり、数百万ものトランプ票がバイデン票に変更されたと主張した。

しかし、弁護団はこれを裏づける証拠は提示しなかった。

これをすべて大文字で主張するトランプ氏のツイートにも、「選挙不正をめぐるこの主張には異議が唱えられています」という警告文がついている)。

Trump Dominion tweet

トランプ氏は、新興の保守系ニュース放送局「OANN(ワン・アメリカ・ニュース・ネットワーク)」の報道と同じ主張をして、ツイートでも「@OANN」と書き添えている。

OANNは、今回の選挙で全米各地で使われたドミニオン・ヴォーティング・システムズ製の投票機について、数百万票が変更されたと報道した。それによると、投開票動向を調査した米エジソン・リサーチから入手した「データの未監査分析」が情報源だという。

しかし、エジソン・リサーチのラリー・ロージン社長は、「エジソン・リサーチはそのような報告を作成していないし、不正投票があったという証拠も得ていない」と報道を否定した。

エジソン・リサーチはBBCのほか、多くの主要米メディアに出口調査や開票結果のデータを提供している。

さらに投票機とソフトウェアを製造するドミニオンも声明で、「ドミニオンが票を変えたり抹消したりしたなどという主張は、100%うそだ」と反論した。

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トランプ陣営の主張:「投票機は民主党のもの」

トランプ氏は、「ドミニオン・ヴォーティング・システムズは極左のもの」と主張し、弁護団は同社がクリントン夫妻など民主党関係者とかかわりがあると述べている。

これについてドミニオンは声明で、自分たちは超党派のアメリカ企業で、クリントン夫妻や、民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長はオーナーではないと説明した。

Dominion voting machines
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ドミニオンのソフトウェアが多くの投票・集計機に使われている

トランプ氏は民主党関係者がドミニオンの経営権を直接所有していると主張している。しかしこれと、企業が政治家に福祉やロビー活動のために献金することとは別だ。

ドミニオンは共和党にも民主党にも献金しているし、公共事業の受注を目的にした企業のこうした献金は決して珍しくない。

ドミニオンは2014年にクリントン財団に献金している。しかし、同社は共和党幹部のミッチ・マコネル上院院内総務にも献金している。

ペロシ下院議長に関するうわさは、ナディーム・エルシャミ元首席補佐官がドミニオンで働くようになったことと関係している。しかし、同社はかつて共和党スタッフだった人も採用している。

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「トランプ陣営の主張:「死者が大量に投票した」

トランプ氏と支持者は、特に激戦州で数千、数万もの死者名義の投票があったと主張している。

BBCは激戦州ミシガンで、亡くなっているのに投票したとされる1万人の名簿を点検した。その結果、この説には根本的な欠陥があることに気づいた。

Roberto Garcia
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「死者」だとされたロベルト・ガルシアさんは「自分はちゃんと生きているし、自分はバイデンに投票した!」とBBCに話した

同様に、他の「死人が投票した」という主張のもとになっているリストも、点検すると同じような結論に至る。死者の名義で大量の投票があったという不正の証拠は、出ていないのだ。

保守系フォックス・ニュースの番組司会者タッカー・カールソン氏は、トランプ陣営の主張を番組で繰り返し、ジョージア州で投票した1人を「死者だ」と呼んだことについて、後に番組で謝罪した。この有権者は生きていたからだ。

過去にアメリカの選挙では、すでに亡くなっている人が投票した事態は確かにあった。しかし、これは決して大規模な問題ではないことが証拠で裏付けられている。

合法な投票を受理する際の事務処理ミスや、故人と似た名前の家族が投票する際の混乱が原因となることが多い。アメリカでは娘が母親と、息子が父親と同じ名前のことが珍しくないため、こうしたミスにつながることがある。

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