コロナと実習生 制度の矛盾が露呈した

2020年11月26日 08時17分
 コロナ禍に伴う解雇などで外国人技能実習生らが苦境に陥っている。「国際貢献」の美名とはかけ離れた「雇用の調整弁」としての技能実習制度の本質が露呈した。制度の廃止を検討すべきだ。
 北関東で家畜や果物が大量に盗まれた事件に関連し、群馬県警は十月、入管難民法違反などの疑いでベトナム人の技能実習生ら十数人を逮捕した。大半は県外の実習生で「コロナで仕事がなくなり、群馬のコミュニティーに身を寄せた」と話しているという。
 外国人実習生の人数は昨年末時点で約四十一万人。その約半分がベトナム人だ。コロナ解雇に加えて、祖国と結ぶ定期便は運休。多くの実習生が来日のため、祖国で多額の借金をしており、手ぶらでは帰れない事情も抱えている。
 かねて技能実習制度は賃金の未払いや不当な労働条件など問題が多く、政府は改善のため、二〇一七年に技能実習法を施行した。
 三条で「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と定めたが、実態は有名無実。コロナ解雇はその典型といえる。
 祖国の送り出し団体と日本の派遣先をつなぐ監理団体、それを統括する「外国人技能実習機構」も設立した。しかし、実習生の窮状に対応しているとは言い難い。
 政府は四月、コロナ禍で解雇された実習生らの他業種への就労を特例として認めた。従来は本国で経験した技術を日本で磨くという制度の趣旨から、他業種への転職は許されなかった。「出稼ぎ」の実習生には朗報だが、技能向上という建前はここでも崩れた。
 加えて、特例には政府の弥縫(びほう)策という側面もある。昨年四月に施行された特定技能制度は農業や介護などの単純労働を外国人に認めるものだが、送り出し国には不評で応募が予想を大幅に下回っている。特例でその不足の穴埋めに解雇された実習生を回した形だ。
 結局、「技術移転」などの名の下、安価で都合のよい労働力を集めるという制度の本質がコロナ禍で浮き彫りになったといえる。
 国の制度で受け入れた以上、政府には実習生を守る責任がある。まずは雇用助成金などで解雇を防ぎ、健康相談などの充実も図るべきだ。
 そのうえで技能実習制度を廃止し、当面は特定技能制度を拡充する必要がある。菅義偉首相は官房長官時代の昨年十二月、外国人受け入れの関係閣僚会議で「外国人が国を選ぶ時代」と発言した。それにふさわしい対応を求めたい。

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