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「コロナうつ」に3ヵ月の時差…芸能界にも及んだ自殺の連鎖、止める方法は?

精神科医・樺沢紫苑氏がコロナ禍のメンタルヘルスを語る
精神科医・樺沢紫苑氏がコロナ禍のメンタルヘルスを語る
 コロナ禍の影響もあり、いまだ閉塞感がぬぐえない現在。とはいえ、5月6月の自粛期間に比べれば、多少は落ち着きを取り戻しているようにも見える。だが、そんな中でも、7月以降3ヵ月連続で自殺者は増加。芸能界でも自殺の連鎖が報道され、「なぜ今になって?」と感じた人も多いようだ。著書『ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)が話題の精神科医の樺沢紫苑氏は、そんな現状をどう分析するのか?

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■悩み相談の9割は同じ内容、日本人に必要なのは「相談すること」

 大きな反響を集めている、『ストレスフリー超大全』。25万人超の登録者数を誇るYou Tube『樺チャンネル』で、悩み解決動画を公開する精神科医の樺沢紫苑氏によるものだ。本書は、その悩み解決動画から、より効果の見込める内容を厳選。人間関係、仕事、プライベートなどの「悩み」をすべて「ToDo(何をすべきか)」に置き換え、「悩んでいる自分」をリセットするための方法を紹介している。

――発売以来、大きな反響を集めている『ストレスフリー超大全』ですが、本書を発表しようと思われたきっかけは?

 「私がやっている悩み解決のYouTubeチャンネルでも、みなさんから寄せられる質問の9割は、ほぼ同じ悩みだったんです。誰もが同じことで悩んでいるのならば、ストレス解消や悩み解決の決定版というものがあれば…というコンセプトで執筆しました。昔、一家に一冊あった、『家庭の医学』のメンタル版を目指したのです」

――そもそも、『樺チャンネル』を始めたのは?

 「Facebookでも同じようなことをやっていたのですが、フォロワーのほとんどが40~50代で、10~20代がほぼいなかったんです。当然、メンタルケアは若いうちからやっておいた方がいいわけで、若い層にリーチするためにYouTubeを始めました」

――本書では、『樺チャンネル』の中から効果の高い対処法をまとめたということですが、どんな内容なのでしょうか。

 「この本のポイントは、“相談すること”です。日本人には『他の人に相談するのは恥』というような文化がありますが、実際に相談してみると、意外と簡単に解決する悩みも多々あるわけです。あとは“ガス抜き”の大切さ。1人で悩むと、どうしても堂々巡りしてしまうんですよ。脳内のキャパシティは限られているので、その悩みを書き出して整理する。アウトプットすることで、自分で悩みを解決することができるということも伝えています」

――現在、コロナの影響でストレスを感じている人も多いと思いますが、先生の元にはそういう悩みも寄せられていますか?

 「実は、そういった相談はないんです。なぜかというと、ストレスは自分では認識ができないから。面白いもので、診察で『最近なにかストレスを感じたことはありますか?』と質問すると、ほとんどの患者さんは『ありません』と答えるんです。でもよくよく話を聞いてみると、職場の人間関係の問題などが次々に出てくる。『それが悩みであり、ストレスなのでは?』と聞くと、初めて『そうかもしれない』と認識が始まります。コロナのストレスというのも、遠出できなくて不便だとか、友だちに会いづらいとか、みなさんがなんとなく思っていることはあると思います。ただ、それが今すぐにうつ病になるようなストレスだとは、現状では誰も思っていないのです」

――では、“コロナうつ”というのは有名無実なのでしょうか?

 「いえ、“コロナうつ”はこれから出てくるでしょう。実は、ストレスを受けてからメンタルに異常が出てくるまでには、約3ヵ月の“時差”があるんです。セロトニンとノルアドレナリンという脳内物質が低下している状態が“うつ”ですが、そのセロトニンには貯金のような機能があると考えられています。これが低下すると、ノルアドレナリンがそれを補う。両方枯渇するのが、約3ヵ月後という理論です。ですから、その前になにか対処しなければなりません。本書にも書いたように、7時間の睡眠や朝10分の散歩、リズムを意識して咀嚼する、といったことが効果的です」

――自粛生活で人々が大きな不安を抱えていたのが、とくに5~6月頃。とすると、8月頃から現在は、かなり危ない時期と言えるのでしょうか。今から、その対処法をやっても間に合いますか?

 「間に合います。朝散歩をするだけでセロトニンは活性化するので、今日始めれば、その分の効果が出ます。ただし“予備軍”であれば、の話です。健康な状態から予備軍、病気、病後と経過するのですが、病気=うつ病までいくと、通院するしかありません。その手前の“予備軍”であるならば、1週間ぐらいの朝散歩で、かなりの効果が見込めるはずです」

――ところで、その「約3ヵ月後」理論にはデータによる裏付けも出ているのでしょうか?

 「統計では、コロナ禍で人々が大きな不安を抱えていた5~6月は、去年より自殺者数が少ないんです。そして、7月は25人増、8月は251人増、9月は143人増と、8月以後の増加が顕著です(前年同月と比較)。今後も増えていく可能性が懸念されます」

――ここ最近、芸能人の相次ぐ自殺報道があり、一般の人でも女性の自殺者数が増加傾向にあると言われています。精神医学的には、時期的につじつまが合っていると言えますか?

 「合っていますね。『今はコロナも一段落してるのに、なぜ?』と思われる方が多いでしょうが、ストレスを感じてから“うつ”になるまでの3ヵ月の“時差”を考えると、十分に考えられることです」

――芸能界の自殺は、なぜにこうも立て続けに起こったと思いますか?

 「これは“自殺の連鎖”と呼ばれています。例えば人は、自分の身近な人が自殺した場合、『自分はその人を救えたんじゃないか?』という自責の念を持つんですね。家族はもちろん、親しい友人もそうです。そうすると、その思いからか、自殺のことを考え続けたり、自殺に引っ張られてしまう場合があります。だから、自殺についてはテレビなどでもあまり詳しく報道しない方がいいんです。あまり具体的に報道されると、この“自殺の連鎖”の危険が高まります。だから今回、自殺の原因や方法などをあいまいにしている報道は、実は正しい判断なのです」

――とは言え、「死にたい」という思いは誰もが一度は感じたことがあると思います。そう考えてしまう人を、周囲はどうしてあげるのが正解なんでしょう?

 「自殺は、まず“希死念慮”(死にたいと思うこと)があり、ここに“衝動性”が加わった時に起こると言われています。では、どうやってその衝動性を抑えるか。これは、周囲の人が話を聞いてあげることが一番なんです。実際、患者さんとお話をしていても、30分ほど話を聞いていれば、薬を使わなくても落ち着いていきます。衝動性のピークさえしのげば、自殺は防げる場合が多い。自殺の直前にヘルプのサインを出す人が多いと言われていますから、周りの人が気づいてあげることも大切かもしれません」

――それも含めての、“相談”の大切さなんですね。

 「そうですね。悩んだら、誰かに相談してみてください。相談できる人がいないという方もいらっしゃいますが、その場合は悩みを紙に書き出してください。ただ、本当に追い詰められると、そういった対処法すら思いつかなくなってしまう。だから、普段から習慣づけておくことが必要だと思いますね」

(文:衣輪晋一)

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