◆―― 政府の危機感薄く
新型コロナウイルス感染拡大が「第3波」の様相を呈する中、北海道や東京、神奈川などで入院患者向けの病床(ベッド)使用率がこの1週間に急上昇し、軒並み50%を超えて医療逼迫(ひっぱく)の懸念が高まっている。患者の受け入れが困難になれば、重症化リスクがある高齢者らの命に直結しかねない。医療関係者は感染拡大地域との往来自粛を訴えるが、政府は観光支援事業「Go To トラベル」の継続方針を崩さず、危機感は薄い。
▷急務
「急速な感染拡大の局面を迎えた」。1日当たりの新規感染者数が19日に過去最多の534人となった東京都。国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長はモニタリング会議で危機感をあらわにした。このペースで推移すると、4週間後には新規感染者が1020人程度になるとの試算も公表した。
18日時点で都が新型コロナ患者用に確保した病床は2640床だったのに対し、同日の入院患者は1354人。使用率は51%に上り、1週間前から10ポイント増加した。会議後の臨時記者会見に出席した都医師会の猪口正孝副会長は「(入院が)長期化している医療機関への負担が、さらに強まる。病床確保が急務だ」と警告した。
▷予断許さず
医療機関などでクラスター(感染者集団)が多数発生している北海道では、17日時点の病床使用率が72%で、11日の54%から急増。札幌市内の病院では70~80代で寝たきりの患者が増え、看護師は慣れない食事や排せつなどの介助、床ずれを防ぐ体位交換にも追われる。担当者は「今でぎりぎりの状態。これ以上患者が増えたら人手が足りなくなる」と訴える。
旭川市では感染者を症状にかかわらず原則入院させており、市内の病床の約7割が埋まる。35床のうち8床しか空きがない市立旭川病院の浅利豪事務局長は「もう限界だ」と打ち明けた。
このほか愛知、大阪でも、この1週間で病床使用率が10ポイント近く上がり、予断を許さない状況だ。
4月の第1波のピーク時と比べると、現段階で重症者数は下回っている。しかし11月1日時点で重症者は163人だったが、17日には1・7倍の276人に増えた。
▷温度差
日本医師会の中川俊男会長は18日の記者会見で「Go To トラベル」が感染拡大のきっかけになったとの認識を示し、今週末を「秋の我慢の3連休としてほしい。コロナを甘く見ないでください。慣れないでください」と警鐘を鳴らした。
しかし政府との温度差は大きい。菅義偉首相は19日、感染者数急増について「最大限の警戒状況にある」としながらも、経済活動と感染防止を両立させる姿勢は崩さず、食事中の会話でマスクを着用する「静かなマスク会食」の実践を呼び掛けるにとどまった。加藤勝信官房長官も記者会見で「Go To トラベル」を継続する方針を重ねて示した。
病床確保などコロナ対応に当たる厚生労働省幹部は「病院は、行き場がなく廊下に患者が並ぶ海外のような状態にはなっていない」との認識だ。これに対し、小倉真治岐阜大教授(救急・災害医学分野)は「人材など医療資源は崩壊寸前で、危機感が極めて高くなっている。医療体制を守るためにも感染予防を徹底してほしい」と強調した。
(共同通信社)
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2020/11/21 12:00新型コロナ
「第3波」に医療逼迫懸念 コロナ病床使用率、急上昇
病床が逼迫する旭川市の市立旭川病院=19日午後
新型コロナウイルスに関するモニタリング会議を終えた東京都の小池百合子知事(中央)=19日午後、東京都庁
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