2章 2話 すべての始まり
「呪われた血の末裔」
「あんたがいるとうちの家系が呪われる」
「聖樹様に逆らった愚かな血筋の薄汚い子供」
子供の時、よくクレアが妹ヴィオラと義母に言われた言葉。
クレアは男爵家に生まれた妾の子供だった。
母は異国の地の踊り子で、父に見初められて無理矢理妾にされクレアが生まれた。
母はクレアが10歳の時亡くなり、クレアは一人になってしまう。
仕方なく父に引き取られるがそこにクレアの居場所はなく正妻と母違いの妹ヴィオラがいた。妹は赤髪の可愛い少女で、それに比べクレアは茶髪の地味な少女だった。
クレアはそこで貴族の子とは思えぬ冷遇をうける。
義母の話ではクレアは聖樹に害をなした一族の末裔らしい。
もちろん、そんな話を信じてはいない。
聖書によれば聖樹を手に入れようと禁呪で聖樹に挑んだ愚かな邪教徒達は聖樹に一族郎党滅ぼされたのだ。
末裔がいるはずがない。
ただ、その地域の出身というだけで云われなき虐めを受けているだけにすぎない。
罵られ、妹のヴィオラは両親ともに可愛がるのに、妾の子のクレアは奴隷のような状態だった。
クレアは貴族の娘でありながらほぼ使用人のような待遇で貴族の家で飼い殺し状態だったのである。
けれど11歳の時。
「君、名前は?」
たまたま出席させられた貴族の舞踏会で、アルベルトと出会う。
クレアの家よりも身分の高い伯爵家の三男。金髪の美しい青年。
クレアは彼に見初められ、アルベルトと付き合うようになった。
伯爵家のアルベルトに気に入られてしまい、父と義母はクレアを無碍にもできず、普通の貴族の子としてあつかうようになる。
クレアとアルベルトが15歳になった時。
アルベルトが別大陸トルネリア大陸に留学することになり、しばらく離れ離れになるが、アルベルトはクレアが虐められないようにと色々と手配をしてくれた。
クレアはアルベルトの経営する店の一つを任される事になったのだ。
こうしてクレアは女性経営者として男爵家を出たのである。
アルベルトはクレアがお菓子やパンを作るのが好きだと知っていてお店を任せてくれたのだ。
アルベルトと一年半、会えない時間もあったが、それでも帰って来てからもアルベルトはクレアを見捨てる事なく愛してくれて。
このまま幸せが続けばいいと切に願う。
どうか――彼といつか結婚して幸せに暮らしていけますように――と。