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【書籍化】虐待されていた商家の令嬢は聖女の力を手に入れ、無自覚に容赦なく逆襲する【本編完結】 作者:てんてんどんどん
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1章 閑話2 みんなでお料理!

『今日は神官何作ってくれるのかな?』


 そう言って、リベルがよだれをじゅるりとしながら、嬉しそうに笑った。

 今日はファルネ様と久しぶりにエルディアの森に遊びに来たの。「毎日聖女のお勉強ばかりでは息がつまってしまいますから、息抜きをしましょうね」って。


 ファルネ様がいろいろ神殿から材料を持ってきたから、みんなでご飯の準備中なんだ。

 美味しくお料理するためにお魚を川に取りにきてるんだよ。


「ほら取れましたよ」


 川からファルネ様が仕掛けておいた罠をひきあげれば

 ピチピチピチピチ

 罠の木箱の中にはいっぱいの小魚。

 すごい!! すごいよ!! いっぱい!箱の中に小魚いっぱい!!何でこんなに箱の中にいるんだろう?


『この箱すごい!! なんでこの箱の中小魚逃げないっ!?』


 リベルが聞いて、ファルネ様が微笑んだ。


「この箱は入るのは容易なのですが外に出にくく設計されています。

 こちらの出口も魚が通れない網ですから、こうやって捕まえられるのですよ」


 ファルネ様が説明してくれて、私とリベルは罠の仕組みを教わるの。

 ファルネ様が言うには人間はリベルみたいに強くないからこうやって工夫して食料を集めるんだって。非力が故の工夫だって言っていた。

 人間は残酷だから非力だって言われても私はいまいちピンとこないけれど、リベルはすっごく感動してた。『人間すごい!! なるべく食べるのやめる!』ってニコニコ言うと、ファルネ様がひきつりながら「そう言っていただけると助かります」って言ってたんだ。


 この後罠で捕まえた小魚はみんな油であげるんだって。


 私もファルネ様のお家にいたときは、体を動かすだけでも大変だったからあまりお料理しているところは見れなかったの。聖女になってからはカイルさんがお部屋にご飯をもってきてくれてたから料理しているところも見た事ない。だから油であげるのは見るのは初めて!

 楽しみだな!

 私がそう考えていたら


『揚げ物楽しみ! 揚げ物楽しみ! どんな味!?』


 リベルが待ちきれなくて、川辺に設置したお料理の魔道具に火をつけているファルネ様に『手伝う! 手伝う! だからはやく作って!』と後ろで急かせば


『あんたは、はしゃぎすぎだよ』


 ちょっと離れたところで様子を見ていたシリルにリベルが怒られちゃう。

 お鍋になにか色のついた液体をとぽとぽ注いで、ファルネ様が「この油は高温になる上に、飛び散って、触れると火傷しますから気を付けてくださいね」って言うの。

 本当は近づいちゃいけないんだけど、シリルが結界を張ってくれたから近くで見れるんだ。油で揚げるのはシリルも見たいんだって。

 ファルネ様が、白い粉の液を少しだけたらせばぱちぱちと白い何かが浮かび上がってくる。何だろう。何だろう。ぱちぱちいってる。ぱちぱちいってる。

「こうやって小麦粉が浮かび上がってくるのは油が温かくなったという証拠ですよ。

 では、魚も揚げましょう」

 言ってファルネ様が塩とコショウで味付けして粉をつけたお魚を油の中に入れれば


 じゅわっ!! ぱちぱちぱち!!!


 っていっぱい泡がでてお魚さんたちが油の上に上がってくるの。


「すごいすごい! お魚が上がってきた! ぱちぱちしてるっ!」


『へぇ、これが揚げ物っていうのかい。人間の世界では高価なものなんだろう?』


 ってシリルが聞いた。


「はい。油は高価なので一般市民は特別な日などにしか使えません」


 言いながらファルネ様がなにかハサミみたいな物でお魚を挟みながらひっくりかえす。

 しゅわしゅわしゅわっていい音がして、ぷちぷちぷちって泡があがって、こんがりほんのりいい匂い。

 早くできないかな。美味しそう。美味しそう。

 綺麗な茶色に染まったら、ファルネ様が鋏みたいのでちょいちょいって油からあげて、何か網のようなものにのせる。


『出来た!? 出来た!?』


 リベルがじゅるるってよだれを垂らしながら言うと、


『よだれを垂らすんじゃないよ。はしたない』


 と、シリルに怒られてる。

 でもわかるよ。匂いがとっても美味しそうだもの。

 私もはやく食べたいな。私も揚げ物ははじめて。神殿でも食べた事ないよ。


「ファルネ様食べていい?食べていい?」


 私が身を乗り出して聞いたら、


「少し冷まさないと熱すぎますよ。

 ちゃんと椅子に座って待っていてください」


 と、ファルネ様に油から離されちゃう。リベルが四つ足で全速力で駆けていって、リベル専用の席にお座りした。

 私も負けないように全速力で走るけどリベルには全然追い付けない。

 私は女の子用の可愛いお椅子に座って、シリルは椅子に座ると食べにくいから平らな石の上にお皿に乗せて食べるんだよ。

 はやくこないかな。はやくこないかな。


「お待たせしました」


 言ってファルネ様がもってきてくれたのは、リベルには山盛りに盛ったお皿。

 シリルには底の深いお皿。

 そして私のお皿は……とってもかわいいの。

 お花が飾り付けてあって綺麗にくるーって円を描くようにお魚が乗ってるんだ。

 嬉しくてファルネ様のお顔を見れば微笑んでくれて、私も嬉しくてにっこり微笑んだ。

 みんなで聖樹様の前でお祈りしてから揚げ物を食べる。

 お口のなかでさくさくって音がしてじゅわじゅわってして、こんがりでとっても美味しい!


「ファルネ様!すごいね!じゅわじゅわさくさく美味しいよ!!!」

「それはよかったです。また作りましょうね」


 ファルネ様が微笑みながら撫でてくれるので私はうんうん頷いた。

 リベルは美味しい! 美味しい! ってすぐ食べちゃって、ゆっくり食べてるシリルのお皿をじーっと見てて怒られながらも分けてもらってる。

 シリルもなかなか美味しいねって、珍しく褒めてくれたんだ。

 その後お魚はなくなっちゃったから、ファルネ様が神殿からもってきたお野菜やお肉をいっぱい揚げ物にしてくれて、お野菜もどれも油で揚げると違った味で美味しいの。

 油って凄いね。これも魔法の液体なのかもしれない。

 だってなんでも美味しくなるもの。

 私が嫌いだったお野菜まで薄く切って油で揚げたら美味しいんだよ? 不思議不思議。

 もしかして美味しいものを揚げればもっとおいしくなるかも!


「パンケーキも揚げたら美味しくなるかな?」

「はい、そうですね。焼かないで揚げて砂糖をまぶせば美味しくなりますよ。そういった料理も実在します。リーゼはよく思いつきましたね。発想力が豊かなのでしょうか」


 ってファルネ様が笑ってくれてナデナデしてくれた。

 私は嬉しくなって顔がぽっぽしてくる。

 ファルネ様はね、すぐ褒めてくれるの。

 私の言葉をひとつひとつちゃんと聞いてくれてる。

 優しい人っていうのは、ファルネ様みたいな人の事をいうんだよ。

 悪い所ばかり言ってくるんじゃなくて、いい所ばかりを見つけて褒めてくれる。

 悪い時はちゃんと、何が悪いか説明してくれる。

 叔母さんみたいに、理由も教えてくれないでいきなり怒ったりしないよ。

 神殿の人達もそう。カイルさんもラーズ様も、怒るときはちゃんと目を見て理由を教えてくれるんだ。

 ファルネ様が褒めてくれる声は優しくて、私はちょっと恥ずかしくなる。


『食べたい!!! パンケーキ揚げたの食べたい!!!』


 横で話を聞いていたリベルがすっごいお目目をキラキラさせてファルネ様にお顔を近づけた。


「すみません。もう油の方が切れてしまいました。

 また今度来た時に材料を持ってきますから、その時にしましょうね」


 って言われてリベルがすごく、がっかりしたお顔になるの。


『あんたは食べすぎだよ』


 と、シリルにべちっとしっぽで頭をぶたれちゃう。


「今度はみんなで作りましょうね」


 ってファルネ様がリベルをなでなでして、リベルが涙目で頷いた。

 うんうん! 楽しみだな! 楽しみだな! みんなでお料理!

 リベルに楽しみだねーって言えば、リベルが私を抱っこしてくれて、楽しみ楽しみって踊りだすの。

 それを見てファルネ様が微笑んでシリルがやれやれって顔をしてる。

 聖女になってから、こうやって毎日が楽しくて。嬉しくて。新しい事をいっぱい教えてもらえて。

 私は今とっても幸せなんだ。リベルに肩車されて、ファルネ様と目が合って、私にお手々をふってくれる。

 大好き大好きファルネ様。

 大好き大好きリベルにシリル。みんな大好き。

 どうかこの幸せがいつまでも続きますように。


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☆悪役令嬢ですが死亡フラグ回避のために聖女になって権力を行使しようと思います☆
☆コミカライズ連載中!☆
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