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【書籍化】虐待されていた商家の令嬢は聖女の力を手に入れ、無自覚に容赦なく逆襲する【本編完結】 作者:てんてんどんどん
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1章 44話 1章最終話

 あれから季節は巡り。

 私は少し大きくなった。

 いまはファルネ様とカルディアナにあるおっきな神殿で暮らしてるの。

 シリルとリベルはエルディアの森に帰ったけれど、時々遊びにきてくれる。


 カルディアナ様が記憶をとらないでくれたから、私はファルネ様と暮らしているんだ。

 シャーラ達はあの後。

 聖樹様達に死ねない身体にされて、今は王族の管理する塔で魔物に毎日食われて暮らしているんだって。


 人々が記憶からなくさぬように。

 人々がまた聖樹を裏切らないように。


 その見せしめとして未来永劫苦しむってカルディアナ様が言っていた。

 生きたまま魔獣に食べられ続けるみたい。


 私のいじめを放置していた叔父さんは、ボロボロになって死体で発見されたって言ってた。

 民衆になぶり殺しにされたんだって。



 もう私を虐めてた叔母さんもシャーラも叔父さんもいない。

 私の胸にはママがくれたペンダントが戻ってきた。


 とっても大事に大事にしてたのにシャーラにとられちゃったペンダント。


 このペンダントをみるとママが思い出せる。

 あったかい気持ちになれるんだ。

 シリルが言うには力を倍増させるペンダント。珍しいっていってた。


 ……やっとママが戻ってきた。


 私はペンダントをぎゅっと抱きしめる。


 今まで辛いこともいっぱいあって。

 嫌なこともいっぱいあった。


 記憶をなくしたほうが幸せだっていう人もいるかもしれないけれど。


 私はとっても幸せだよ。


 もし記憶をなくしたら。

 いまのファルネ様を大好きな気持ちもなくなちゃうかもしれないもの。



 辛いことがあったあとは必ずいいことがあるってママがいってた。

 辛いことを我慢したからファルネ様と出会えたの。

 辛いことを耐えたから今とっても幸せなの。


 私の記憶はママが生きた証でもある。

 ママの言葉があったから私は頑張って生きたんだもの。


「どうかしましたか。リーゼ?」


 ペンダントを握って、お庭で座って足をバタバタさせてたらファルネ様に声をかけられた。


「お外を見ていたの。ここのお庭は精霊さんがいっぱいいて綺麗」


 私が言えばファルネ様がにっこり微笑んで「それは貴方が愛情を込めて育てているから精霊が集まるのでしょう」と言ってくれた。


 それが嬉しくて私はファルネ様に抱きつく。


 あれからいっぱい話す練習もして、言葉も上手になったよ。

 ファルネ様にこれからはお口で話そうって言われたから一生懸命習ったんだ。

 もう私の思っている事はファルネ様には伝わらないんだって。

 私は別に伝わってもよかったけれど、ファルネ様が「リーゼもそろそろ年頃になるのですから」

 と、よくわからない事を言っていた。

 どういう事だろ?


 でもそのおかげで。話すのは大分上手になった。


 勉強もいっぱいして。

 聖女の修行もいっぱいして。


 私はカルディアナの聖女になれたんだ。


 まだまだ修行も勉強もしなきゃだけど。

 勉強は楽しいから好き。


 だってファルネ様が本を読んでくれるの。

 綺麗な声で優しく教えてくれる。

 私はファルネ様のお膝の上で本を広げて文字を手でなぞりながら覚えるんだ。

 ファルネ様の身体はあったかくて。

 とっても幸せな気分になれる。

 だから勉強は大好き。


「ああ、リーゼ様ここにいらっしゃいましたか」


 私とファルネ様が日向ぼっこをしていればラーズ様がやってくる。

 もう、ファルネ様以外の人とも話せるようになったんだ。

 カルディアナ様が怖い思いをしないようにって不思議な力をくれたの。

 悪い人は赤く光って見えて、リーゼに優しい人は青く光って見える力。


 ラーズ様は青く光ってるから平気なんだよ。


「いまファルネ様とお話してたの」


 ぎゅーっと抱きついていえば、何故かラーズさんが顔を赤らめてこほんと咳払いし、ファルネ様が慌てて私をちょこんと下に降ろす。


 ……なんでだろう?


「今日はカルディアナの聖樹様に会いに行く日です。シリル様もリベル様もいらっしゃいますよ」


「本当!嬉しい!嬉しい!

 リベルにいっぱいお菓子を用意しておいたの!」


 私はオヤツに出されたお菓子をとっておいたんだ。


「……お菓子?ですか?」


「うん!ちょっとまってね!」


 言って私は花壇の秘密の隠し場所を手で掘る。


「リ、リーゼ!?」


 ファルネ様が慌てて駆け寄ってくるけれど私はその前に掘り当てた。


「ほら見て!獲物は隠しておいたの!

 土の中に隠せば腐らないってリベルがいってた!」


 言って私は缶にしまっておいたお菓子を取り出した。


「リベルにあげたくて、オヤツの美味しいのは隠しておいたんだ!」


 この神殿にきてから、毎日オヤツが二回もでる。

 前いた場所は時々だったのに。

 どのオヤツも美味しいの。ふわふわだったりカリカリだったりしっとりだったり。

 甘かったり。すっぱかったり。不思議な味だったり。

 森の中では食べられなかった美味しい食べ物。

 リベルとシリルにも食べさせてあげたくて、私はこっそりとっておいた。


 缶を前にファルネ様とラーズ様が顔を見合わせて


「リーゼ様。中身を確認したことはありますか?」


「?」


「恐らく底の方のお菓子は腐ってしまっていると思います」


 申し訳なさそうにラーズ様言われて私は慌てて缶をあけて底の方のお菓子を見た。

 本当に色が変色しちゃってぱりぱりになっている。


「どうしよう!リベルにあげたかったのに」


「リーゼ、そんなことをしなくてもお菓子は取り寄せますから。

 貴方は貴方にだされた分は食べていいのですよ?」


 言っておかしそうにファルネ様が笑う。


「本当?本当?リベルとシリル達にも同じお菓子を用意してくれる?」


「勿論です。彼女たちもまた聖女ですから。これからは貴方の分は貴方が食べてくださいね?」


 言われて私は嬉しくなる。もうちょっと食べたかったけどリベルとシリルにあげたくていつもこっそり隠していたから。

 全部食べていいんだ。

 甘いお菓子が特に好き。ふわふわしっとりケーキも。クッキーのサクサクも好き。

 パリパリしてるビスケットも。


 楽しみだな、フルーツも食べたい。


「では、お菓子は至急用意させましょう。

 リーゼ様はお着替えのご準備を」


 ラーズ様に言われて私は頷いた。


「ファルネ様も一緒?」


 手をぎゅっと握って聞けば、「もちろんですよ」と笑って答えてくれる。

 それが嬉しくて私はにっこり微笑んだ。


 私はとってもいま幸せだよ。

 だってこうしてみんなと幸せに暮らしているもの。

 きっとママのいいつけを守っていたから幸せになれたんだと思う。


「大好きファルネ様」


 私が言えば


「私もですよリーゼ」


 と、微笑んで抱きしめてくれる。



 大好き大好きファルネ様。

 これからもずっと一緒にいてね。


 いっぱいいっぱい思い出をつくろうね。



 どうかこの幸せがずっと続きますように。





~第一部終わり~


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☆悪役令嬢ですが死亡フラグ回避のために聖女になって権力を行使しようと思います☆
☆コミカライズ連載中!☆
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