1章 3話 聖女誕生(他視点)
「グラシル様!!反応がありました!!!!」
フォルシャ教の神官の一人が感極まって叫んだ。
聖女の力を判定する儀式の最中、聖なる石がテンシアの娘シャーラの前で光輝いたのだ。
神官達と、それに追随していた騎士達の間からどよめきがおこる。
神殿に領地内の住人全てが順番に検査するため集められていた。
その神殿で、聖女を鑑定する石がシャーラの前で光り輝いている。
「嘘……私が聖女?」
長い金髪の美人の少女シャーラが驚愕の声をあげれば、
「聖女様に忠誠を」
その場にいた神官や騎士達が跪いた。
少女シャーラは微笑む。
やはり私は普通の子じゃなかった。選ばれた子だったと。
一緒にいた母テンシアも自分の娘が聖女だったことに感動の涙を流した。
これからは私の時代だ。
聖女の母として慕われ生きていくのだ。
このような田舎の商人の妻としての虚しい人生は終わり。
私は聖女の母よ!と。
だが二人ともこの時は知る由もなかった。
聖女を鑑定する石が反応したのは、シャーラが虐待していたソニアが関係しているという事を。
聖女を鑑定した神官達が自分たちの派閥の勢力拡大のために強引に聖女を探し廻っていた事実を。
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聖女を鑑定していた神官グラシルは聖女という切り札を手に入れて満面の笑を浮かべた。
寄付金を不正利用したことがばれ、地位を落とされた。
このままでは閑職にまわされる――その前にと起死回生を狙って強引に聖女探索に乗り出したのである。
それがこうして成功したのだ。
見事に自分の力で聖女を見つける事ができた。
感動するシャーラとテンシアを眺めながら不正を働いていた神官が悪質な笑みを浮かべる。
見ていろよ。ファルネ。
大神官になるのはお前でなくこの俺だ。
まだ若い黒髪の神官グラシルは聖女シャーラを手に入れ拳を握るのだった。