名古屋大学(名大)は11月17日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染力を増大させる、ヒトの細胞の表面に存在する第2の受容体「ニューロピリン1」(NRP1)を新たに発見したと発表した。
同成果は、名大大学院理学研究科の山内洋平招へい准教授(英・ブリストル大学生命科学部准教授兼任)が率いる国際研究チームによるもの。ほかには、オーストラリア・クイーンズランド大学、エストニア・タルトゥ大学、スイス・チューリッヒ大学の研究者が参加している。詳細は、米科学誌「Science」に掲載された。
新型コロナウイルスは、その表面にあるスパイクタンパク質を用いて、ヒトの細胞の表面にある「ACE2」(アンジオテンシン変換酵素2)受容体に結合する。これが、新型コロナウイルスの感染の始まりだ。
そして今回の研究により、新型コロナウイルスがヒトの細胞へ侵入する際のとっかかりとする受容体がもうひとつあり、それがNRP1であることが判明した。生化学・構造生物学的手法を用いて分析が行われた結果、NRP1は「C-end Rule motif」ペプチドによって橋渡しされることで、スパイクタンパク質と1対1で結合することが突き止められた。新型コロナウイルスがNRP1も乗っ取ることで、細胞内への侵入および感染効率が上昇することも判明。さらには、細胞間での新型コロナウイルスの広がりを促進していることも明らかとなった。
なおNRP1は、さまざまなリガンド(受容体に特異的に結合する物質)と結合する受容体だ。リガンドの細胞内への取り込みやシグナリングが活発するという性質を持つ。NRP1拮抗薬や中和抗体を用いた実験では、新型コロナウイルスの感染力を抑制できることから、今回の成果は新しい抗ウイルス薬の開発につながるとしている。
また、ヒトや動物に高病原性を起こすウイルスは、NRP1を乗っ取る可能性が高いと予想されている。そのため、今回の成果は、新型コロナウイルス以外の未知のパンデミックウイルスへの対策を模索する上でもカギになるとしている。