コロナ禍による業績悪化を受け、各社にボーナスカットの嵐が吹き荒れている。ANAやスカイマークのボーナスが100%カットされることはすでに報道されたが、他人事ではない。厳寒の賞与事情を専門家3人に取材した。
厳冬に耐え、2021年には明るい兆しが見えるのか?
この悲惨な状態に陥った理由について『経済界』編集局長の関慎夫氏はこう分析する。
「本来、ボーナスは春闘で決まるもの。ただ、コロナショックが予想以上に深刻だったため、各社で賞与の大幅削減に踏み切る動きが広がった。労働組合も『ボーナスなしのANAに比べればマシ』とのまざるを得なかったのでしょう」
また、経済ジャーナリストの磯山友幸氏はこう続ける。
「従来、日本の企業は赤字でもボーナスを出していましたが、今回は楽観できる要素が微塵もなく、一切余裕がない。当初は年内で打ち切り予定だった雇用調整助成金が延長される見込みとはいえ、延命措置にすぎません。生活様式やビジネスモデルが一変した以上、仮に来年以降にコロナが収束しても、『以前と同じ業績に戻れる』とは考えにくいからです」
<ボーナスカットが報道された企業>
▼ANA 100%減……冬のボーナス全額カットを含む年収約3割減を提示。家電量販店大手などに社員の出向も。
▼スカイマーク 100%減……夏のボーナスに続き、冬のボーナスも見送りに。10月以降の通勤定期代も廃止。
▼JTB 100%減……’89年以降で初めて、約1万3000人の社員に対し、冬のボーナスを支給しないことを通知。
▼オリエンタルランド 70%減……およそ4000人いる正社員と嘱託社員を対象に、冬のボーナスの7割カットを決定。
▼JR西日本 45%減……2.69か月分で合意していた冬のボーナスを1.5か月分に引き下げ。平均35万~40万円の減額。
さらに「ボーナスカットは序章にすぎない」と警鐘を鳴らすのは、東京管理職ユニオン執行委員長の鈴木剛氏だ。
「ボーナスは企業が一番手をつけやすい部分。ですから、それでも会社が回らないとなれば、次に来るのが基本給や手当のカット。そして、リストラです」
その主なターゲットは45~55歳の団塊ジュニア・氷河期世代だ。
「すでに私たちのもとにリストラ通告をされた40~50代の管理職から問い合わせが来ています。早期希望退職者募集などという悠長な話ではなく、年収1000万円プレーヤーでさえ『転職先を見つけるのがあなたの仕事です』と言い渡されている状態。現在、年末に向けて新たなホットラインの設置を検討しています」(鈴木氏)