コロナ禍の世界 飢餓の拡大を止めたい

2020年11月23日 07時40分
 新型コロナウイルスが、世界的に再流行している。社会のシステムが混乱しているうえ、気候変動の影響もあって、世界で多くの人が飢餓寸前の状態だという。国際社会が協力して救援したい。
 パンデミックは、感染症の世界的な流行を意味する言葉だが、今、世界では「飢餓パンデミック」も懸念されている。
 もともと世界では、慢性的な食料不足に苦しむ人が七億人近くに及ぶ。これは、今年のノーベル平和賞に選ばれた世界食糧計画(WFP)による推計だ。
 飢餓は、貧困や気候変動、男女差別などがさまざまに絡み合って発生するが、六割は混乱した紛争地域に住む人々の間に起きる。
 気候変動も状況を深刻にさせている。日本でも目立つ豪雨や大型の台風は、農作物や家畜の育ちに影響を与える。途上国では、社会保障制度が不十分なため、自然災害で住居や収入を失えば、たちまち生活苦に陥ってしまう。
 そういった状況に、コロナ禍が追い打ちをかけている。人々の動きが減り、経済が停滞することで職を失い、収入が途絶える。それが直接食卓に響くのだ。
 WFPの推計によれば、飢餓に直面している人たちの中で緊急援助を必要とする人が、今年約二億七千万人にまで急増した。これは昨年に比べ八割増だという。
 世界銀行も十月に公表した報告書で、減少傾向にあった貧困がコロナ禍で拡大していると警告した。二〇二一年までに最大一億五千万人が極度の貧困に陥るという。貧困と飢餓の悪循環が心配だ。
 将来的な食料不安も指摘されている。世界の人口は五〇年に百億人に迫ると予想され、食料増産が緊急の課題となっている。
 国連の持続可能な開発目標(SDGs)は、三〇年までに飢餓を終わらせ、持続可能な農業の推進をうたっているが、コロナの収束が見通せない中、目標達成は容易ではないだろう。
 そんな中、日本政府は来年、東京栄養サミットを開く。持続可能な食料生産システムの構築などを、世界各国の栄養関係者とともに議論する意欲的な試みだ。
 ただ日本は食料の六割近くを輸入しながら、年間六百万トンを超す食料をごみとして捨てる「食品ロス」大国でもある。まずは日常の生活を見直す必要がある。
 また国際機関に寄付をするなど、「飢餓ゼロ」実現への取り組みを、個人としても応援したい。

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