還り来る道
降り積む花殻
降り積む咲骸
終わることなく
しわしわと
頭上に黄金の切片を
くわらくわらと
かえりみながら
くらみながら
地に重なり降りては
朽ち また 流る
微となり くうを仰ぎ
まきあがる 砂の粒ほどにも見えず
塵に舞え
またいずれ
いのちとなろう
>還り来る道
>降り積む花殻
>降り積む咲骸
>くわらくわら
>地に重なり降りては
>朽ち また 流る
>徴となり くうを仰ぎ
>まきあがる 砂の粒ほどにも見えず
僕が指折り数を数えていた時に
君は唐突に僕の前にやってきた
それは真冬の中、生暖かい春風が生命を吹き込みにきたように
あぁ君は100年前から来たんだね
と僕は言う
君の手は生臭い100年前の臭いがする
僕の手のように洗剤の香りがしない
彼女は近くに咲いてた野菊に腰をかけた
その野菊は80年前からそのままだよ
爆撃の中を生き延びたのさ
だから鉄の匂いがするだろう
それにしても君の手は生臭い
四角く切り取られた立方体の中で
昼と夜とが交互に入れ替わっては
消滅と復活を繰り返し
暑さ寒さが多くの発光体を引き連れて
私と彼女を間を通り過ぎていった
200年かたった時
私はふと彼女のことを思い出し
野菊の咲く方向を見た
彼女はいなくなっていた
あぁ君は私がずっとふりむかないから
100年ほど前にいなくなったんだね
それから300年後
海のそこでたゆたう彼女の姿を見た
瞳は鈍く発光し、体中に虐めぬかれた後がある
彼女は100年前から
海のそこで清純に洗われ
罪を償ったのち
それはきっと500年後
また野菊に腰をかけるだろう
そして私と野菊はなぜか358年前から穴の開いた傘を差しながら
水晶の霰に打たれ続けている
>四角く切り取られた立方体の中で
>昼と夜とが交互に入れ替わっては
>消滅と復活を繰り返し
>暑さ寒さが多くの発光体を引き連れて
>私と彼女を間を通り過ぎていった
開かれた朝の冷淡な舌の上に
夜闇が傾く
燐を見たカササギの子は
深く苦い光の中に 痙攣する
audivisti?
無を語るものたちの 産声を
audivisti?
腑を落とされ 抱擁を強いられた
言葉たちの ため息を
虚構の砂絵の目の下に 欲望が浮く
古のorganは
残滓である非存在を 釣る
その通り、世界には何も存在していない
開かれた朝に 楡の木が
葉裏に輝きを滑らせる
見られるのではなく
反射するのでもなく
audiebam
つまはじかれた蜥蜴の
皮膚に走る 生成の歌を
audiebam
深海魚と月光との間に
無時間な和声を
旅人の触れた塔は空を象ったもので
現象を超えて照る
あまねく知性は宿る
みなぎった悪意への威嚇
その通り、世界は自ら輝いている
開かれた朝の川床を浚って
屍に息を吹き込む
片足を失ったまま蘇った猿は
宮殿の内奥で
鮮やかに破裂していく
audivistis?
緩やかな規律の下で
流体時計のたてる 針の音を
audivistis?
専属negotiatorの
積み木細工の 衝突音を
海や波や小魚を 鑿と槌で 崩していく
崩していく間だけ 空白が占める
その通り、現象はすべて不連続である
>現象は全て不連続である
かあさん あのね わたしがうまれた世界って
本当の本当は しろい正方形だったのでしょう
そこはとても清らかな場所だったのでしょう?
エタノールで消毒した 清らかな部屋で
わたしは清らかに包まれて生まれたのでしょう?
おぼえてないけれど わたしがはじめてみたのは白い人たちで
しりようがないけれど わたしがおわる日にも白い人たちに囲まれるのかしら?
清らかでないものの 愛おしさったら ないわ
清らかではない土の匂いとか
清らかでない汗とたばこの匂いとか
とうさんの おしえてくれたものは
そんな清らかではないものばかり
こんな清らかな部屋では説明できないものばかり
清らかとはいえない工場の煙や
清らかとはいえない汗やたばこの匂いや
清らかとはいえなくても大切な青い空 青い海
とうさんが教えてくれた多くのものを説明できるものが
この部屋にはすくなくて
かあさん、わたしは
あなたと白い人がいるこんな部屋でうまれたのでしょう
でもなんで とうさんが こんなしろい正方形の部屋に
横になっているのだろう
とうさんが もういちど
清らかでない土の匂いや
清らかでない たばこの部屋に
還れたらいいのに
>清らかでないものの 愛おしさったら ないわ
>多くのものを説明できるものが
動かないでそこにある
嬉々として陽を受ける
腐りかけの果物が、絵の中を統べらない
ほじくる
目線の先から嬉々として腐食する
皮が落下する
顔面も
かくれもしないで 陽を受ける
どうかしている カーテン のように
郵便局の階段に落ち着き
かさを増す光へ 目分量で鎮まる
ここも 大気の底
砂掘るこどものスコップ
なにか這い出る 夕焼け みたいに
這い寄って飲み込む
あふれるさっかく で
うすめ られてゆく
だから
水の色に見える市街地に指を浸し
飛び惑う翼のばさつく黒いドーブツくさい灯火
瞳の火の色に燃え移る木切れ が
駆け抜ける
目抜き通りで
地べたに額づき
なにか祈ろう としてみる
映画館の薄明かりで 笑う
落花生ばかり食って殻を散らかす
空港のロビーで
ラップのかかった魚の目玉にちっこい指をつっこんで
見ている
海のもひとつ向こうの海の夜の雷鳴 夜と呼ばれる
あれは海 これが右手で
音のない色のない 半球と半球
いたいのは目の奥50センチくらい 奥のほう
昨日は風が砂を削る音
夜行列車のオレの荷台はほこりじゃなくって砂もぐれ
いっそ棺桶だったから
手足を縮めて丸まり疲れる水底に 直立の光
柱状が 差し込む
疎ましく立ってあることが ぐらぐらと煮られて
炎天下とは どなた の こったろう
葉の照り返しを よぎる
満月が
すぐに欠けていた 足鳴らす鈴の音がかじった
どこかの祭り で
オレの
泥人形たちハ 河になりにゆく 夜の身のまま
星はアタマの空洞にひとつ
切れやすそうな糸で吊るされる
かるく燃えそう
だから
こしょうでもふって
>砂掘るこどものスコップ
>なにか這い出る 夕焼け みたいに
>水の色に見える市街地に指を浸し
>飛び惑う翼のばさつく黒いドーブツくさい灯火
>昨日は風が砂を削る音
>夜行列車のオレの荷台はほこりじゃなくって砂もぐれ
>いっそ棺桶だったから
>手足を縮めて丸まり疲れる水底に 直立の光
>柱状が 差し込む
>疎ましく立ってあることが ぐらぐらと煮られて
>炎天下とは どなた の こったろう
>夜行列車のオレの荷台はほこりじゃなくって砂もぐれ
>星はアタマの空洞にひとつ
>切れやすそうな糸で吊るされる
>かるく燃えそう
>だから
>こしょうでもふって
>こしょうでもふって
>こしょうでもふって
そう、ゆらいでいたのだ
私たちの、魂はゆらいでいたのだ この瞬間にも
そして私たちはそれを知っていた(すでに過ぎ去ってしまった)
だが、木々を縫いつけ生きる私たちの、網膜には
このディスプレイの液晶よりも
聖歌に刻まれた救いよりも
ずっと、霞んだように見えて、
古い海岸を歩く、この足の冷たさと
ふるえている私たちの、宇宙の位置さえ
炎のゆらぎにも片翼を失う蛾の触角に、結びつけられてしまった
蛾よ、お前は海の持つ惑星の
秘密の千の瞳を開き、螺旋状の周波数を聴く
子午線よりも遠く、アスファルトより鳴らされる
永遠分の一秒を刻む晩鐘を共鳴にして、触角でなぞってゆく
だが、そこにだけ茜色を映し出す私たちの細胞群は、何も慣れていない
惑星間の初雪と戯れた指が触れてしまうことさえ
言葉という重力を逃れた振り子の糸を近づけようとする
重力はどんなに軽い原子にも意味を持たすから、
私たちは氷晶に黙された鱗粉の呟きを、見極めようとする
蛾よ、お前は飛ぶのではない
光の端を青灰に染めて、その両翼を落とすのだ
満ち始めた初潮に、新たな重心を定め
そして違う名前でそれを呼ぶために・・・
私たちが落とす翼は、もう残ってはいない
全ての世界の、私たちの持っていた翼は
張り巡らした糸に、切り落とされてしまったから
だから、私たちは痛む この瞬間にも
どこにも見えないものを、どこにも見えないものを
知らない (すでに過ぎ去ってしまった) 知らずに
それが間違いであるかのように
こうしてゆらいでいるのだ
私たちの、蓄光する魂は
蛾よ、お前が全てを終えたとき
翼は扉に閉ざされ、瞳は星々に取って代わられる
そうやってお前はどこまでも落ちてゆく
それは並木沈む海底なのか
夜をも凍らせる極北の大地なのか
この瞬間にも、私たちは横たわる位置を知らない
もしお前が私たちのゆらぐ、魂に辿り着くのならば
其のときは絶対零度にまで収束され、燃えろ
そして北極星からの地軸を片手で握り、廻る、新たな少女となれ
落とされた翼全てに包まれながら、燃やし尽くす、永遠の、ずっと近くまで
>ケムリさん、紫野さん
そこに全てがある
酩酊の庭に キックの後に
オーバードーズの境目に 代謝と摂取のマッチポンプに
未開の言葉で語るように 時の鐘が音を消す場所に
赤茶色の小便に 蛇を噛むアダムのように
おれはベンチに座って誰かを待つ
枯葉は雪に変わり おれは埋もれて空を見る
黒い糸が垂れている 引いたら砕け散った
誰かおれに煙草をくれ 出来れば強いやつを
バクダットの鶏の腿肉に 吊革に垂れ下がる疲れた背広に
聖者の掘り当てた井戸に 孤児院の台所に
葉桜の公園に カンボジアの置屋に
極点の遷ろう日差しに 無限リピートのラジカセに
誰かが通り過ぎていく 緑の葉が芽吹いて
おれは眺める 歩き行く人々
木々は色づき アートマンをおれは流れる
留まり流れる ガンジスを流れる死産児のように
ラブホテルのメモノートに ライブハウスの便所に
大脳皮質の裏側に 終わらない射精に
ステップに立つゲルに 三万人の自殺者に
イスラムの祈りに ペンタゴンのデスクの上に
誰かおれに言葉を もっと強い言葉を
生まれた赤子の泣き声のような言葉を 熟成前のウィスキーのような言葉を
原初の光のような言葉を 落ちる飛行機の祈りのような言葉を
おれは流れる ゆらゆら 遠くなる
言葉遊びの器用猿に コンドームを買う高校生に
年寄り犬のような笑い声に 雪の中の羊の群れに
ジミ・ヘンドリックスの旋律に 俺の四弦ギターに
輸血パックの中に 千切れた舌のピアスに
「牛は第四胃が消化の要所なんだよ」
「君は速読が出来るか?」
「Fのコードが抑えられない」
「穴の開いてないジーンズくらい持ってないの?」
全てがある 俺の全てが世界の全てにある
嘔吐と寒気と薔薇色の空気が相互依存する部屋に
部屋の隅で胎児が笑っている おれを笑っている
へその緒を切った俺が間違っていた 胃液が匂いを無くして行く
316番地の街娼に マンホールの上の反吐に
膿んだ俺の薬指の爪に ハルシオンとロヒプノールのカクテルに
ビフィーターの衛兵に ロンドン橋落ちたと歌う子どもに
リタリンをくれと叫ぶ俺の友に そこに全てがある
終わり方を忘れた歌に 有名すぎるコード進行に
おれの血 言葉と諦観と代謝と摂取 おれの血
全てがそこにある 膨張していく
流れていく 全てがそこにある 死産児の歌う愛の歌
>>広田様 レスありがとうございます。前置き無く直球で言って貰って全然構いません。そういう批評こそを求めて書き込んでいますので。ただ、この詩に伝えたいことは無いんです。イメージだけの詩ですので。自作詩への解説は多くの方に興醒めだと思うんで、この辺にします。また読んでいただければ幸いです。
>>d様 70年代を僕は知らないんです。70年代への憧れと嫌悪を等しく持っている、80年代生まれの人間です。詩を書く時は、言葉を練りこむことなく一息で書ききるとどうしても陳腐な単語が出てしまいます。「死産児」に関しては意味を持っているので外せないですが、それ以外は確かに陳腐な感じが否めません。しかし、推敲は勢いを失わせる気がするんですよね。考えどころです。('05/01/14 01:17:13)
>全てがある 俺の全てが世界の全てにある
>ラブホテルのメモノートに ライブハウスの便所に
>大脳皮質の裏側に 終わらない射精に
>「牛は第四胃が消化の要所なんだよ」
>>たもつさんへ 感想感謝します。推敲をしてみるか悩んでいます。とりあえず、助言を参考にさせてもらって手を加えてみようかと思います。('05/01/14 22:54:14)
探したのはくだらない雑記
埃だらけの押入れの奥で
血の色に染まっていた
月夜の光がそれを照らし
部屋の中はやけに明るい
熟した海に身を投げ
蝶は隣でひらひら舞う
海の濃淡を映した空は
ゆっくりゆっくり
元の宇宙へ戻ってゆく
向こう側の町が静かに明るい
波の音
風の音
優しく 厳しい
右も左も暗がりが誘う
温もりが消えた体の芯は
未だ輝く血が流れる
それゆえその血は
微かに残った心さえ
凍てつかせ
殺す
ひとりぼっちが寂しいか
沈黙はのしかかり
両足を押し潰す
雑記から破った一枚の頁
向こう側の町は明るく賑わう
この体の中には
輝く血が
一秒たりとも動きを止めずに
駆けずり回っている
それすら忘れていた
>波の音
>風の音
いつだって
あなたとしんでいたい
つめたい床に並んで
よこを向いて
なつのひかりの前で
かれらは凍ってしまいそうだ
すでに遠い距離にある
朝
アパートの裏では
とかげが蟻に食べられている
肌が油を刷いたように
ぎらぎらとかがやく
わたしの飲む麦茶は
汗を誘うにおいがする
朝は
いつまでもあかるい
目をつむった残像に
なにひとつ思い当たることがなくて
>かれらは
>つめたい床
>三連目
>最終連
>いつだって
>あなたとしんでいたい
>なつのひかりの前で
>牛が牛を食む昼間
>目をつむった残像に
>なにひとつ思い当たることがなくて
>二連目
>>なつのひかりの前で
>また、全体を通してひらがなと漢字のバランス、そういうものに気を使っているのではないかと
>「つめたい」「凍って」「汗」といった言葉が使われているにもかかわらず
>良い意味で温度が感じられない。
女の声が頭の中に響く。澄んだ高い声。日に日に声は大きくなるような気がする。声を聞く以外、わたしには何もできない。偏頭痛がしそうで頭を振る。空き地に捨てられた車がある。栞を座席の上で見つけ、車の中に入り込んだ。誰が落としたのか。栞を拾う。青いインクのイラスト、髪の長い女がぶれてプリントされている。いつも携えている本に栞を挟む。女の声が消えていた。女の声が届かない場所を見つけた。車から出ると、また女の声がする。
休日の昼下がり、曇った眼鏡をシャツで拭く。手の届かない空の下、車に向かう。白のセダン、前輪のタイヤが外されている。コンビニで買ってきた袋を持って、ドアを開ける。埃っぽいシートに座る。ジーパンの後ろポケットの文庫本を出し、助手席に放る。ページが宙でめくれる。神話のエコーのページが開きかかる。青いイラストの栞が外れ、本は閉じた。すれた表紙がたわむ。本を手に取り、栞をはさむ。助手席に本を置き直す。ダッシュボードを探る。車のキーはない。ドアを閉め切る。暑い。曇ったフロントガラスから空梅雨の空を眺める。サイドの窓を開ける。空は青かった。シートを少し倒す。コンビニの袋を開ける。カレーパンとチョコレートパン、それからパックのコーヒー牛乳。
食事を終えると、暑いので外に出る。女の声が流れ込んでくる。近くのデパートに向かう。デパートで涼みたかった。途中、コンビニの前でゴミ箱に袋を捨てる。空を眺めながら歩く。
女の声が響くデパート。CDやDVDの売り場でタイトルを見る。邦画のキレイなパッケージのものがあれば手に取り、裏返し、また元に戻す。その繰り返し。そのあと、パソコンの売り場を眺めながら通り過ぎ、玩具売り場にたどり着く。フィギュアやプラモデル。モデルガン。女の形をしたフィギュアに触れた。しばらく見つめる。風が来た。近くにプロペラが回る、ミニ扇風機のオモチャがあった。手に持つ。風を受ける。青いスケルトンのボディ。透けたボディから乾電池が見える。女の声がいっとき止んだような気がした。ミニ扇風機の箱と、レジのそばの棚から乾電池を一緒に手に取り、買った。女の声が続く。空き地に戻る。車の中に入る。女の声は止む。フロントガラスから青い空、蒼い海を見渡す。
箱から取り出し、ミニ扇風機に乾電池を入れ、電源を押す。風が来た。車の中で、フロントに扇風機を置き、文庫本に手を伸ばすと、本がこちら側に押し出される。強い風でもないのに。手に取り読む。エコーやナルシスの話を繰り返し読む。目が疲れると、シートをさらに倒し、眼鏡を外し、うたた寝をする。扇風機の遅く低い音がうなっている。
まだミニ扇風機の電池は切れていないが、回転が弱くなっている。眼鏡をかけ、電源を止める。車から出て、自分のアパートに向かう。女の声が追いかけてくる。部屋に入る。ここでも女の声。乾電池を何本か持っていく。また空き地の車へと戻る。声の止んだ車の中で、扇風機の電池を入れ替え、電源を入れる。ミニ扇風機のプロペラが回る。青い栞が本から外れ舞う。
フロントガラスを隔てて水平線を見渡す。西日が差し込む。まぶしい。助手席にひとの気配がある。上半身の輪郭が透けて見えた。横顔の表情はよく見えない。扇風機の風に、長い髪がそよぎ、光っている。女か。そばにいたから声がしなかったのか。車の中で、声はせずに扇風機の音がよりそっている。
>リアルとフィクションも境界をなくしたほうがおもしろいのではないでしょうか。
>車の中で、声はせずに扇風機の音がよりそっている。
>女か。そばにいたから声がしなかったのか。
>女か。そばにいたから声がしなかったのか。
10㏄程の夢がこぼれ
きみは白い遊戯の
疑惑の中に
失せてしまった
またひとつ
透過した心が赤く染まってゆく
青いボタンを外した空に
千の想いが飛び込み
空は人の数だけまばたきしながら
炎と化してゆく
わたしを乗せて
帰還した陽子は
無数に開いた壁の孔を
温めながら去っていった
それは
私の直接性がくずれる瞬間だった
>わたしを乗せて
>帰還した陽子は
壜の底に口を開いた花、そして花
生れ落ちる苦しみに香気を瀰漫させる
絵の具を重ねたセラミックの織物
滲入してくる悪鬼の呼吸
年老いた聖霊が薄暗い内腔を破りかける
死人が活発に死の目覚めを目覚めるところだった
その、物質と非物質との葛藤
膨張は実は錯覚なのだ
黄色い小人がダイアモンドの罅から尿をこぼす
太古の鼓動をそうやって伝えていくのだ
気狂いのような盲信に従い、電灯の粒子のように
神と人とすべての結節点へと
留金から放射する獣の視線
植物の欲望とその廃棄物のように
花々は派生した哀しみに狂喜しながら
事務的な彗星は塵を残した
塵は何ら属性を持つことがなく、無数の腕を差し伸べている
真空容器の中に転がり、闇の欠点を狙っている
因果を超越したバクテリアは不義の子を孕んだ。
>植物の欲望とその廃棄物のように
>花々は派生した哀しみに狂喜しながら
>事務的な彗星は塵を残した
>滲入してくる悪鬼の呼吸
>年老いた聖霊が薄暗い内腔を破りかける
>死人が活発に死の目覚めを目覚めるところだった
暗闇にささげ持つ、椀の
なかに甘物を待ちながら
幾年月
野の
花
ものの正しいかたちが
損われようとしている
腕の関節が
黒い布に覆われている
あいだ
夏至
頬張る
もはや、長寿を
約束しない
>ものの正しいかたち
>タイトルの物語が大きすぎて、
>すまないが、それを受ける器であるには薄っぺらいと感じました。
さしこむ月明かりに
浮かび上がる
窓枠におかれた青白い手
古びたホログラムのような
その手の
輪郭が、ぶれ
はしる、ノイズ
握られたナイフの
かるい重み
ナイフは澄んだ鏡
凪いだ夜空がうつりこんでいる
波紋のない夜の底に
ちりばめられた電気仕掛けの蛍
発光ダイオードの
繁華街をながれる無数の影
わたしは影の逆投影
ながされながら
夜空見上げれば
どこか懐かしい
懐かしい月が
月が
ノイズ
夜風がやわらかくカーテンを揺らし
青白い手の
輪郭が、ぶれ
はしる、ノイズ
きえてゆくホログラムのように
き えてゆく
青白い手の
その先の
窓際に
残されたナイフ
煌々と
つ
きに
ノイズ
>わたしは影の逆投影
あなたはそこから あふれていった
ありあまる夜の 星くずのやさしさ
はるかな高みで もろもろの祈りを受容し
夜明けには あらゆる傷を
とりどりの姿にひらく
ながれの果てで あまたの澱みを清浄して
世界のおわりに すべての
きよらかな あやまちをゆるす
ハートフル ドラゴン
めざめのふちで囁いた 万の言葉のうちの
ひとつだけを かなえるという
透きとおったみどりの聖獣
ときには遠く また近く
落雷のようにひらめいて
ついには しんみりと
雨のように わたしをみたし
あなたはそこから あふれていった
ありあまる夜の 無聊にたえかねて
>タイトルにもなっている「ハートフルドラゴン」という言葉が強すぎて、
>読み手が作品に入り込む間口を狭くしていると思う。
まくら辺まで海がせまってくる
耳たぶの岬を
ひとむれの蟹が離脱する
貝殻のがらがら、星々の鎖、花時計の憂鬱
それからそれから半世紀にわたる大小便など
にぎやかな
薄明へ
ぬれた砂と一本の骨から、あのひとを
復元しよう、家の壁はかたむき
窓はへんに歪んでいるから、見えるだろう?
ぼくらにしか知りえない事物のうらおもて
火のそばで
ぼくは裸になって骨を抱いた
少量の血をささげ、ゆるやかに砂をのんだ
ここで失われるものが
べつのくぼみを満たしてゆく感覚
砂のひとへ
たとえば父よ
祭礼の夜には、炎の過剰が
あなたの欠落をくまどるのだ、骨は
少量の血を吸い、ゆるやかに砂をまとった
カボチャあたまに灯がともり
潮騒のような鼓動を打ちはじめた
ねえ、ぼくの肩をかしてあげるから
立ち上がって、手をつないで
いっしょに水族館へ行こう
まわる魚の切り身をたべながら
焼酎のお湯わりをのもうね
こわれた陶器の恋人のことや、腐った希望
愚にもつかない肉や、埒があかない野菜の
鍋料理を、二人で、野暮ったくつつこうよ
なあ、父さん
酔うほどにめざめてくるぼくらの饗宴
せめて、朝日が、のぼる、までは、さ
>まわる魚の切り身をたべながら
>焼酎のお湯わりをのもうね
>鍋料理を、ふたりで、野暮ったくつつく
>こわれた陶器の恋人のことや、腐った希望
>愚にもつかない肉や、埒があかない野菜の
>鍋料理を、二人で、野暮ったくつつこうよ
>こわれた陶器の恋人のことや、腐った希望
>愚にもつかない肉や、埒があかない野菜の
>鍋料理を、二人で、野暮ったくつつこうよ
目をとめてくださった方、感想をくださった方ありがとうございました。
この作品は多くの方々の目に触れる価値のない単なる言葉の羅列に過ぎない
ので消去いたしました。これを機に深く反省したいと思います。
管理人さんへ 削除して結構です。
違う肌の色をしていたのだ
液体の中に紛れ込んだ暗い金属片のように
緩やかに回遊しながらも受け入れられず
何も望んでいやしなかった――
盲者が色を識らないように
幼い統覚には望みを知ることができなかった
掘っても泉はなく 探しても果実はなく
知らない土地には在ったのだろうが
そのことすら知らずに
いわれのない迫害を受けた
柔らかい鍵穴に鉄鎚が押し込まれたように
血飛沫があがり 痛みは止まず
敏感な内部組織はむき出しになり
言葉を恐れ しぐさを恐れ 人を恐れた
やがて血は皮膚の色のように黒く固まり
心にこびりついた――
無垢な精神の死を悼み
帰らぬものへ心焦がれ
ひとり泣いた
冷たい音楽のように悲しみは流れ
転調は周到に行われて
やがて憎しみへと凝固した
暴力しかなかった
エーテルの壜を砂で満たすように
筋違いな方途で渇きを潤していった
望みは別にある そんなことは解っていた
ただ回路の乱れた機械人形のように
己の柔弱さを知らぬ者たちを斬りつけ
自分の傷と同じ形の傷口をつけていった
近くの海はひどく波立っていて
それに呼応するように
支配し 破壊していった
遠くの海はひどく穏やかだった――
漣の音が聞きたくて
おおらかに抱擁されたくて
だがもはやそれは叶わぬことだと知っていた
親を殺した
桎梏を食いちぎる野獣のように
愛と苦悩による繋縛から逃れようとして
そして良心は崩れ落ち溶壊した
もはや繋ぎ止めるものはなく
黒々とした自由の大地を
くすんだ欲動のままに駆け 吼えた
ただ 一人残された夜には
犠牲者の苦しみにあてられて
悲しみが心を深く抉るのだった
殉教者のような悲しみだった――
殺害人は今日も疾駆する
薄青い精神の腐敗を食い止めるため
世界の与えた傷創の旗印に殉ずるために
そして殺害人は世界に殺される
>世界の与えた傷創の旗印に殉ずるために
それは
全てを見透かすように
それは
全てを呑み込むように
僕を圧倒する
それでも何故か心地良く
僕はその空間に
身を委ねた
途端
黒洞々とした闇に吸い込まれそうになり
慌てて僕は
地面に足をつけた
例えばそれは、南国の蝶のように、
甘い香りを発し、
闇に伏せた光を好んだ。
夜の東京が好きだと、そう言った。
確か、雨だった土曜日。
こいつを買ってみたものの、
どこか白けていて、
そんな気不味さに雨は良く似合っていて、
サーッと言う雨音を聞きながら、
ろくな話もせずに、歩いて国道沿いまで。
ぼんやり明るい自販機の前で、
温かいジョージアを渡す。
微笑。そばかすだって、悪くねぇ。
お前を選んだのは大した理由なんか無くて、
ただ、綺麗な青いシルクが、
モルディブの海で染めてきたような青いワンピースが、
お前の痩せた胸や濡れた足元で
儚く揺れたから。
アルコールで滲んだ俺の目に、
南国の青はまた揺れる。
マタドールに挑発された思春期の雄牛は、
多分こんな感じ。
うっとりするぜ。
うっとりするぜ。
45rpmで世界が回り続けるなら、
それはきっと素敵な事。
ネオンも汚水も光の雨もピアノの音も
みんな綺麗に混ざればいい。
俺とお前も、そうなればいい。
> 陳腐な単語を接ぎ合わせて、というのが第一印象。
> キザな歌謡曲の歌詞のようだ。
> 好みの問題かも知れないが漢字変換の多さもうっとうしく感じる。
> 連ごとのカタカナのバランスとか、一貫している
> 言葉遣いのリズムはうまいなと思う。
>dさん
「線路の上を歩いて海を渡る
それ自体はけして珍しい行為じゃない
だが
心してきいてほしい
次の駅にたどり着くことのできる者は
きわめて稀である
「大洋をどこまでも縦断する一本の直線
それは島嶼
それは紡がれたほそい蜘蛛の糸
それは世界をやさしくコーティングするシナプス
それは人類にただひとつ残された叡智
「必需品 まずは
一本のおおきな水筒と
絶縁体の手袋と靴を用意すること
線路は帯電していて触れると必ず体を蝕む
また駅間の距離は定かではないが
夜通し歩いても二日は優にかかる
「マリーノ超特急は週に一本
南回りの便ばかりが走っている
急げ 急いで海を渡れ
列車がぼくらを飲みこむ前に
ぼくらの運命が
サイコロのように決まってしまう前に
「線路のまわりの波はおだやかで
はるか向こうには灯台がかすんでいる
口笛を吹きながら渡った
私を祝福する太陽と空と海と線路と
旅の道連れにウミネコの泣き声と
駅までの道のりはけして退屈しない
「われわれの旅程の
妨げとなるのは高波だけではない
強い紫外線と海風は確実に体力を消耗させる
波に洗われる線路は
常に横揺れをくり返し
海を渡るわれわれを拒絶するかのようだ
「そして今やかなしいことに
イルカもクジラも人類の敵なのだ
彼らに見つかったら最後
四肢から徐々に喰われて
私の存在した証はどこにもなくなってしまう
「このちいさな街に生をうけて
なにひとつ不自由なく暮らしてきた
それなのにどうしてだろう
駅がぼくをいざなうんだ
旅に出ようとぼくをいざなうんだ
「海を渡るには駅を見つけなくてはならない
駅の正確な場所は誰も知らない
規約上は誰にも訊いてはならない
秘密裏のうちに目くらめっぽうに
探す 薔薇の薫りのする方へ
「駅員は親切にも最低限の必需品を用意して
ボン・ボヤージュ! 旅に出る者を祝福する
駅員は海を許しなく渡る者を取り締まる
彼らはためらいなく密航者を射殺する
駅に駅員のいたためしはなく
さびれたプラットホームがぽつんとあるだけだ
駅は
存在しない
「風をつらぬいてきこえるのは
マリーノ超特急のユニゾンシフト
姿をみたことはない
音だけの幻の列車だ
私は思い出す私の成し得なかったくさぐさを
ユニゾンのこだまはいつまでも続く後悔のように
「ぼくははだしで
海上のプラットホームに立っていた
これからぼくの渡るまっすぐな線路だけを見ていた
次の駅は
かすんでまだ見えない
歩きはじめる
>ぼくらの運命が
>サイコロのように決まってしまう前に
海には人がいつも溢れている。カモン、カモンと鴎は空を飛び交っている。海の青は、カモン、カモンと空の青に混ざりこみ、鴎はいまだ完全には混ざりきらない二つの青の間を、行ったり来たり彷徨いながら、新しい青の侵入を待っている。ぼくが新しい青になれるなら、その可能性があるなら、ぼくは新しい青になって、カモン、カモンとあの空と海に混ざりこむだろう。
海には、海には、海には。鴎が、白い。青い空が、海と鴎に混ざり、茫洋と薄れてゆく陽光は、女の名前みたいにうつくしく、彼女は実在しながら、姿はなく、黒人は、砂浜に足跡を残し、誰かの助けを待っているのだが、なく、海に流され、黒人の腐乱した死体に、白い鴎が群がり、鴎は黒く、同時に青く、ぼくは、そんな光景を見ていた。見ていると、海が溢れ、彼女は実在せず、海は人であふれ、冬に近い季節の海に誓い、背中に釣竿を背負った男は、黒人だった。白人だった。
それから、黒人が海に飛び込んで、一瞬で空に落ちる様態を見届けたあと、白人は海に飛び込んで(黒人と一寸の狂いもない同じ地点に!)、黒人よりも随分緩やかに、空に落ちる白人は、中空で、先に空に落ちた黒人を追うように、落ちていった。白と黒が、青に。ぼくは、「白と黒が、青に」の少し上あたりを、しつこく飽きるまで眺め、それに飽きてしまうと、海に飛び込んで、空に落ちた。中空で、ぼくが青に。「ぼくが青に」の少し上あたりに、鴎が飛び交い、一瞬で青がはじけた。白が消えた。
>海には、海には、海には。鴎が、白い。青い空が、海と鴎に混ざり、茫洋と薄れてゆく陽光は、女の名前
>みたいにうつくしく、彼女は実在しながら、姿はなく、
つづら坂のてっぺんが赤く燃えて
曲がり角のそれぞれに暗がりが生まれる
それがくねくねと蛇のように眼下の町へ
影法師が一組
手前の角の煙草屋の暗がりからあらわれて
穏やかな夕日にそっと目を伏せると
そのまま背後のたそがれの中に溶けていった
煙草屋の軒先にうずくまった暗がりから
誰かが手招きしているような気がして
たずねてみると名前が欲しいと言う
それは私にとって
必要のないものに思われ
私は彼にくれてやった
すると今度は名前を呼ぶ声が欲しいという
私は彼に乞われるままに
次々に私を暗がりにくれてやった
彼は私に礼を言うと
やはり背後の夕日の中へ溶けていくのだった
やがてなんにもなくした私は
彼のいた煙草屋の軒先に腰をおろし
暗がりで
誰かが通り過ぎるのをじっと待っていた
時間はろ過されたように
一滴一滴ゆっくりと世界を染めて
頭上から群青が深まり
そして
暮れて
煙草屋の軒先にうずくまった影
だけが残って
静かだ
うずくまった影が
さっきまで心だった場所に
暮れていったつづら坂の情景を
焼き付けようとしている
>つづら坂のてっぺんが赤く燃えて
>曲がり角のそれぞれに暗がりが生まれる
目をとめて下さった方、批評を下さった方ありがとうございました。
この詩は多くの方々の目に触れる価値のない単なる言葉の羅列に過ぎない
ので消去いたしました。これを機に深く反省したいと思います。
管理人さんへ 削除して結構です
「壊れてしまった、もう鳴らない」
真っ先に思った
夜の海で落としてしまった、いや俺ごと落ちたと云う方が正確だろう
堤防が途切れる処で
ただ、島を
見たかっただけだった
イヤな事が続いて酷く酔っ払っていたんだ
ケータイどころじゃない
俺だってあやうく死ぬ寸前で
見上げた海面が炭酸水みたく泡立ってた
水は
冷た過ぎると痺れるなんて知らなかった動かないが手足は未だあるのか眼球膨れる鼻とハラワタ喉の奥捻じ上がる塩辛い痛い痺れる痛いいやもう痛くない何故か頭の中に炎上するビルが浮かんだ月の光がひんやり射して静かでキレイだキレイだけどそれが何だ、て云うんだああ、こんな処で終わるのか音が無いこの泡は俺が吐いているのか最低で終わるなんてそれこそ最低だ、どうか、
どうか、
俺に
起死回生のチャンスをくれないか
真っ黒に水を吸って
全身真白に膨れ上がった
俺は
夜の浜辺をそぞろ歩いてた
男の恋人同士に
消滅寸前で
助け出された
ごめん、ムード台無しにして
俺はまさに無様の中の無様王だ
でも
無様でも何でも構わない
あんな処で終わりたくなかった
有り難う恋人達
二人は優しかった
舌焼ける缶コーヒー
自分らの上着にくるんで
ずっしり濡れた身体を両脇から捉えられた宇宙人みたく抱え国道脇まで寄り添い
タクシーを止め
ケータイも財布もポケットの中一切がっさい落とした俺に
札を何枚か握らせ
「そんな事どうでも好いのよ。しっかり帰って眠りなさい」
連絡先も名前も教えず
いたわりながら後部座席に押し込んだ、
バックミラーの中小さくなってゆく手をつないで見送る二人を
塩で焼けただれ半ば潰れた目で
見送った
彼らに出会えて好かった
すげえな神様
きっと
あなたはそこにいるんだな
生まれて初めて、
心から、有り難う
なのに真っ先に思ったのが
「壊れてしまった、もう鳴らない」
だなんて
他に考えるべき事なんて
いくらでもある筈だったろう
お前
単なるバカだろう
だからこんな目に遭うんだろう
「番号がわからない 下の名前と生まれた町しか メールもやらない、て 今時めずらしくないか 故意じゃない でも、もう会えない 去年 空港で 出会っただけの あの子に」
なんてな
メモリーがなんだ
大バカ野郎
生きていれば偶然だってあるだろう
本当に会いたいと願いさえすれば
いやもっと
他にも願うべき事はあるだろう
あの二人に何か返す事だって
それから
彼ら以外にも
歯がガチガチ云う
俺、生きてんだな
運転手さん、暖房上げてくれて有り難う
魂込めて起死回生図れ、
俺
>たもつサマ、dサマ
>たもつサマ
>dサマ
>あらためて、たもつサマ、dサマ