お久しぶりにブログを更新しました。
実はここのところしばらくブログにも、ブログに書くようなネタにも触れていませんでした。
というのも、基本的にTwitterの炎上に触れることが多いブログでした。ただ、Twitterの炎上というものがほとんどが「ただ中高生が騒いでるだけじゃね?」「それを叩いて喜んでるイキり大人がいるだけじゃね?」という構造にほんわり気づいて「取り上げる意味ねーな」と思ったからでした。
ただ、近年の流れがどーもあまりよろしくない。
今回取り上げるのは、タイツメーカー「ATSUGI」のTwitterアカウントになります。
\11月2日は #タイツの日/
— アツギ【公式】 (@ATSUGI_jp) 2020年11月1日
なんと…本日のために✨
様々なイラストレーターさんにアツギの商品を着用した女の子を描いて頂きました!✨
タイツの日、1日を通して
朝・昼・夜のシチュエーションで女性の脚もとを彩るタイツ・ストッキングのイラストをお楽しみください!#ラブタイツ #タイツの日 pic.twitter.com/DKVfC5yzJ4
(消えそうなのでスクショも貼っておく)
アツギの商品を着用した女の子のイラストをイラストレーターによって描いていただく…という企画だったのだが…。
これががっつり炎上した。なんでかー。そこをまとめつつ、今後の企業アカウントがどうふるまっていけばよいかを触れていく。
先に僕が考えている「本企画批判派」の考えの大前提を上げておく。
①今回の批判の対象は「企業アカウントの行動」であり、イラストや、イラストレーターではない
※ついては重要な要素だと思うのですが特定のイラストについてここでは触れません。
②イラスト自体の批判ではないので、当然イラストは存在していてよい。
③快/不快でイラストの表現規制をしてはいけないが、消費行動は快/不快により左右される
この大前提を頭に置きながら読んでいってほしい。
※逆にこれに当てはまらない、例えば「イラストレーターはゴミ!!!」「こんなイラストあるから馬鹿が騒ぐんだ!!イラストを規制しろ!!」と言っている人々は対象にならず、僕の考えている「批判派」には含めていません。そういう人々はまあ騒いでろって感じ。
①炎上の中身
まずどういった炎上か触れていく。
最初に11月2日にATSUGI公式Twitterが冒頭に触れたツイートを行い、
事前に企画されていたのだろう、次々とイラストレーターがタイツを履いた女の子のイラストをアップロードしていった。
まあ有名なイラストレーターも多く、それなりにリツイートされたのだけれども…。
性的搾取
性的消費
タイツの件
ATSUGI
と、トレンド入りすることに。
(※11月3日10:28時点のトレンド)
主な批判として、女性側から批判が上がり、それに対してイラストのファンや表現規制反対派から反論が上がっている。
否定的な派閥からは「タイツメーカーが男性から見られる目的のイラストを上げるのはちょっと…」という声が上がり、逆に肯定的(否定的な論調への批判)な派閥からは「気にしすぎ」の声が上がる。
それに対する批判↓
ここでずれているのが、僕が大前提としている批判派への反論・批判はなく、どちらかというと「表現規制」に対する反論が多く見受けられる点である。
正直、この手の案件は「炎上」というからややこしいのであって、どちらかというと「不評」なだけである。
タイツメーカーは当然、女性が多く購入する者である(男性購買者を否定しないが、大半は女性だろう)。当然、Twitterをフォローしているのも女性が多いだろう。
そういう女性たちから「不評」を買っている、と言うのが現状である。
これは例えば、一つのアニメ作品がここにあったとして、それに対して「つまらん」と言っている(=ただの感想)だけで、別にこれを製作会社が無視するのは構わないし、ファンが「つまらなくないだろう!!」と怒るのも自由だし、「つまらん」と言っている層に黙ってもらうこともできる。
つまり別に「これは性的消費ではない!!」とおぎの議員などが主張し、それを通してもらってさっぱり構わないし、ここで性的消費であろうがどうであろうが、別に表現規制されなくても、本企画批判派としてはどーでもいいし知ったこっちゃないのである。
ただ、それは「企業活動としてそれでいいのか?」という問題が浮上するわけである。
たびたび重ねて言うが、本件、イラストレーターが悪いわけでも、イラストが悪いわけでもないので、別段イラストはいいもんだし、そういうフェチも別にあるじゃん?よくね?ってとこなのだ。
イラスト自体の表現規制の問題ではなく、消費者側が「買う気起きねえ」と言っているだけなので、表現規制の問題はここでは触れる必要性がない。
他にも例を挙げると、僕はあるアニメが好きだったが、公式がやたらめったら作品内のキャラクター同士のBL推しをしすぎたことで見なくなってしまった。それで僕が「BL推しはちょっと…」という意見を発信するとする。別にこれは「あらゆるところでBLをやめろ!!」「BLは不快なモノ!!規制しろ!!」というお話ではなく、「単純に消費者として消費する気起きないよ」という意見なのである。
快/不快で「表現規制」はしてはいけないが、購買を決定するのは快/不快なのである。
極端に言えば、本件を通じて「別にTwitterで騒いでる人がおっても購買に影響ありませんわ」と企業が判断するならそれでいいのである。企業活動と言うのはそういうものである。
しかし、そうではないと僕は判断したのでこういった記事を書いているのである。
というわけで、別に表現規制うんぬんはどうでもいいので企業活動の一面として切り取っていく。
購買に影響があるかどうか…という観点で切り取っていく。
②企業活動としてどうか?
・イメージ戦略の観点
まず、イメージ戦略として問題があるかどうかについてである。
ATSUGIのイメージ戦略として合っているかどうか。
Twitterで拝見した意見で一番しっくり来たのが「これがそもそもセクシーランジェリーのアカウントがいうならまだ合っている」という意見だった。
そもそも、女性は男性に見せる目的でタイツを着用していないので、男性向けに魅せるようなイラスト自体がブランディングに合致しているかどうかで言うと、おそらく合っていないだろう。
アツギの企業HPである。
そもそも、通常のストッキング・タイツを扱っている企業であり、「美しく快適なレッグウェアを提供していきたい」という記載がトップに来ている。
これが別に「男性へ美しくみられるためのストッキングへ…」という企業理念やイメージ戦略を主軸としている場合は、今回のような批判は無視しても構わないと考える。
全体的に見るに、あくまでも主軸は「男性から見られるものとしてのタイツ・ストッキング」ではなく「女性自身が着用するものとしてのタイツ・ストッキング」を明確に主軸に置いている(快適性などにも触れているし)。
そういった観点で見ると、マーケティング戦略として「女性を主軸に置いたイラスト」を今回の企画で取り上げるのであれば、イメージに合致すると思われる。
あくまでも本企画では、「男性から見られる」ということが主軸にあったイラストが多く見受けられ、特にあからさまなイラスト(パンツが見えそうなエロティックなもの、男性を意識し、パンツを見せようとしているイラスト)や、そういったイラストを描く人が参加したことで、特に消費者からは「男性から見られることを主軸に置いているようで、不快である」という意見が多く出た。 (※当該イラストは既に消えているらしい)
実際に男性ファンから「エロいw」といったリプライも数多く飛んできていたので、「男性から見られる」という意識をした宣伝であれば成功であろう。
だがそれは企業のブランドイメージと合致していない。
また、それ以外にも、「快適性」を訴えかけているのであれば、モデルさんに実際に利用してもらってその快適性を訴える…という方向でもいいわけだ。
Twitterのマーケティングを考えるに、何も今回のように二次元イラストの流行りに訴えかけなくても、「このタイツめちゃくちゃ履き心地いい!!!」という方向でバズって取り上げられることもよく起こりうるので、それで言うと機能性・快適性に主軸を置いた企画を取り上げるほうが、企業のイメージとしても合致していると思うのだが…。
快適性…ではないが、実際に2年ほど前にATSUGIが、モデルである最上もがとコラボしている宣伝ツイートが過去に7000RTと伸びている。
この方針で問題ないと思うのだが…。
考え得るハナシとして、もちろんだがモデルを使ったイメージ戦略と言うのは非常に金がかかるので、予算的な話で通りやすかったのもあるのかもしれない。
・企業規模から考えた、Twitter運用に対する批判
Twitterのマーケティングで大きく勘違いしがちなのが、この「リツイートの数」である。当然、企業がツイートを多くリツイートしてもらい、Twitterのトレンドに入り、人気を呼ぶことはよいことだろう。宣伝としてはばっちりである。
ただ、一つ勘違いしないでいただきたいのが、「リツイートの中身」である。
リツイートをたくさんされたからと言って、それが必ずしもよいものばかりではないということである。
本企画、ただただ「リツイート数を伸ばす」ということだけに着眼した場合、大成功な企画だろう。最初のツイートは2800RT、そのほかイラストレーターが上げたイラストは、企業のタグを入れた状態で1万RT~5000RTと大きく伸びている。
単純に「#ラブタイツ」「#ATSUGI」という名前を広げる…ということに重きを置くなら成功である。
しかし、ここでいう「リツイートの中身」は、先に挙げたような、ブランドイメージと違う「男性が見るものとしてのタイツ」を奨励する人々のリツイートなのである。
(※何度も言うが、これは性的嗜好に対する批判ではなく、ブランドイメージとの相違の批判である)
そこが多少のリスクを承知の上で、全く無名のメーカーが「ブランドイメージと違っても、ともかく名前を広げよう」と血迷ったのであればまだわからなくもないが、最上もがとコラボできる財力があってそれはないだろう…と思う。
それで言うと、ATSUGIは「リツイートの中身を気にせずにともかく伸ばせ」という状況ではなく、もう一つ段階を超えた「リツイートの質もよい宣伝ツイートを目指す」という状況に向かっていると思うので、なぜ男性目線の宣伝に手が伸びたのかがイマイチわからない。
やはりそこには、「なんだかTwitter上でバズることが、企業アカウントとしてウケるらしいぞ!」というざっくりとした上層部の理解と、Twitterノリがわからないゆえに「わかる人に一任するしかない状況」が最悪に噛み合うことになっているんじゃないだろうか…。
上層部「なんかTwitterで人気になるとニュースにもなるらしいなあ…」
Twitter担当「私Twitter長くやってますが、こうやると絶対ウケますよ!」
上層部「なるほど! よくわからんがバズるならヨシ!」
じゃないけども。
加えて、近年の企業アカウントを見るに、どうもそこを勘違いしている人が多く、企業アカウント同士でなれ合ったりしゃべったり、Twitterノリに合わせることばかりに主軸を置いている企業アカウントも存在する。
もちろん、距離が近いことはよいことだが、もう時代遅れなのである。
それ(なれ合いやTwitterノリ)は、「企業アカウントは公式情報を発信する者であり、なれ合ったり、Twitterノリにノッてくることはあり得ない」という価値観の状態から、シャープやタニタ、NHKなどが発信したことで話題になったからであり、そんな時代はとっくの昔に過ぎ去っている。
そこを雑な理解をし、「企業アカウントをさも個人アカウントのように気軽に話しかける存在にするといいらしいぞ」ということになると、今回のATSUGIのような、似たようなことが起こりかねない。
もちろん企画自体は事前に考えられたものだろうが、明らかに担当者側の裁量が大きくなっている印象があり、Twitterのノリに合わせて発信している印象がある。
最近タカラトミーも話題になったが、これも結局はブランドイメージをほったらかしにして、Twitterノリにあまりにも近づきすぎたゆえの失敗である。
基本的にTwitterのノリ自体、アングラに近いものもあり、そもそもが企業アカウントと相性は悪いのだ。だからこそ、そのアングラと企業アカウント、企業のブランドイメージが絶妙にマッチした時に大ウケするのであり、これは非常に高度な戦略なのであり、「ただただTwiiterノリで話せる奴が企業アカウントを運営する」というだけなら、そこらの中高生引っ張ってくれば誰でもできる話なのである。
・結論
結論として、ATSUGIの今回の企画は
①ブランドイメージに合っていない
②購買層と違う層への支持が多い
③加えて、購買層から不快の声が多い
という観点から、企画として失敗であると判断する。
これを強調するのは、何度も申し上げている「企業アカウントとして、企業の行動としてどうか」を主軸に置いて批判しているからであって、イラスト自体の存在の可否は問うていないからである。
企画としての批判、前も言ったような「このアニメつまんなくね」というような批判なので、イラストレーターの人格や、イラスト自体の存在を否定するものではないことは繰り返しお伝えしておく。
結局は、その使い方の問題なのだ。
(補足:2020年11月5日 1:05)
よくよく調べていくと、アツギは以前からかなり赤字低迷のようだ。
↑2019年時点で赤字(当初黒字5億予想)
↑2020年度頭でも赤字がさらに拡大
↑炎上のちょうど2日前には、希望退職者を募る記事まで。
2年連続の赤字に加え、コロナの大打撃。
アツギはもはやモラルがどうとか、なりふり構っていられなかったのかもしれない。
多少のリスクは承知で、燃えてもいいのでなんとか話題に……。
というところで、今回の企画は起死回生の一撃のつもりだったのだろう。
世間は残酷かな、こうやって話題になった後に、「アツギのやつ性能よかったんだけどな~」という声が出る。機能性や健康を訴える動画も地道に上げていたようだが、再生数は伸びず。
↑Youtube公式の「伝線を防ぐには」の動画。
再生数は1000回弱。
地道な、企業イメージに沿った丁寧な発信をしても伸びないのなら、いっそのこと…。
そういった発想に陥ったのかもしれない。
今回取り下げた以上、あくまでも「炎上商法」まではいかないとは思うが、
少なくとも「多少コンセプトと違ってもゴリ推ししよう」というスタンスであった可能性(=ここで指摘している「コンセプトの違い」は理解した上で、そのまま企画を信仰させている)はあり得るかな、と思った。
正直者が馬鹿を見る世界にはなってほしくない。
ATSUGIの、真面目な投稿が報われる方法は何かなかったのだろうか。
今回のように燃やすしかなかった? そんなことはないはずである。
ないはずなのだが…。
(追記おわり)
③今後の企業アカウントの運営方法
正直、中小企業のような小さな企業は、多少の炎上商法に頼ってしまう(なれ合いやTwitterノリで認知されようとする)ことは多少致し方ないことだとは思う。
ただ、ATSUGIは少なくともある程度の企業規模がある企業である。
(中小企業の製造業は一般的に資本金3億円以下と言われるが、ATSUGIは200億円)
であれば、Twitterノリに乗る必要など一切なく、ひたすらにブランドイメージに合ったツイートや企画を呟いていくほうが良いのである。
(※上記追記にて一部訂正済み)
そもそも、Twitterノリ自体が非常に危険な諸刃の剣であることを理解せずに使用している企業アカウントは多く見受けられるが、本件をきっかけに企業アカウントはTwitter運用を考え直してほしい。
元々、Twitterノリは「あまりにも固くなった負の企業イメージをやわらげよう」という意味合いはある。警視庁の例もそれだ。
ただ、「和らげようとしてぶっ壊してしまう」のは論外であり、タカラトミーの件もそうだが、「一番大事な企業理念や企業イメージは何か?」を念頭に置いたうえでTwitter運用をしないと、購買層でもないTwitter住民から「別にこのままでいいよ!!」と言われることを鵜呑みにし続け、いつかはただTwitterで有名なだけで、実際の購買層からは最悪のイメージを持たれるが永遠に気づかないという地獄のアカウントが出来上がってしまうことになる。
だから、企業アカウントは以下を意識していただきたい。
①壊したい負のブランドイメージは何か
②壊してはいけないブランドイメージは何か
③これからの発信は、その二つが明確になっているか
もしTwitterで運用していく場合、この3つを確認しながらツイートするなら多少マシになると僕は思っている。
あくまでも、企業アカウントという固いイメージを壊しつつ、大事な企業理念は守ったうえで発信を行っていく。
そういったTwitter運用が今後は必要になってくると考える。
それで言うと、ATSUGIは、最後に取り上げた、警視庁の元中の人が運用する「炎上しないTwitter運用」を頼ったほうがよいのかもしれない。