囚われの月
そう言って、斎藤一は目を細めて笑った。 夜、壬生の屯所から離れた商家の離れに連れて行かれた俺は、斎藤に背を押されて部屋に足を踏み入れた途端、 体を強張らせていた。 「土方副長。芹澤局長亡き後、会津藩の後ろ盾しかない我々には、あなたの力が必要なんですよ。おわかりでしょう ……?」 耳朶に囁かれるその言葉と、体をそっと撫でられる斎藤の手に、俺は唇を噛み締めた。 新撰組発足の後ろ盾となった会津藩でさえも、言うなれば幕府の使いっ走りであるわけで、思うよ うに金子が振り分けられるわけでもない。 芹澤が生きていた頃は、町の者から金子を200両300両と徴収する汚れ役を担っていたお陰で 皮肉にもどうにかやりくりはできていた、という状況だった。 金子が足りない。このままでは隊士達の不満が爆発するだけでなく、下手をすれば内紛にもなりか ねない。 どうにかして、金子を手に入れなければならない。 だが、多摩から京に上がってきた俺達には頼るべき後ろ盾がいないのだ。 薩長でさえ、尊攘派の商家を味方に引き入れて、資金を手にしているというのに、だ。 俺は頭を抱えていた。 「……何か、お悩みですか」 ふいに声が頭上から聞こえ、俺は息を飲んだ。いつのまに入ってきていたのか、斎藤一が立ってい る。 「金子の事で悩んでいる。……このままでは、隊士達の不満が爆発してしまう」 俺は苦々しく呟くと、斎藤は膝を折り、俺の顔を覗きこむような格好で座った。 「金子を手に入れる方法はいくらでもあるじゃないですか」 「……何?」 斎藤は口角をあげて笑うと、俺の腕を掴んだ。 「多摩でしていたみたいに、夜鷹紛いの事をして金を貰ったら如何です」 「―――――……ッ!!」 斎藤の言葉に、俺の体が強張る。 「おや、『どうしてお前が知ってるんだ?』と言いたげですね」 「……ッあれは、」 まだ試衛館に食客として住み込む以前の事だ。石田散薬を売り歩くだけの、大した実入りもない、 つまらない毎日に飽きて、当時まだ二十代前半頃だった俺は、好奇心も手伝って……金子と引き換え に、名も知らぬ男と……寝た事があった。 誰にも…勇さんにも総司にも…誰にもバレてないはずだった。 「誰にもバレていないと…思っていたんですか」 斎藤は薄く微笑むと、強張った俺の顎をツイと掴みあげた。 「一度だけだったら、私の耳にも届かなかったでしょうが……、あなたが金子と引き換えに見知らぬ 男に抱かれていたのは一度だけじゃないでしょう。ほんの一寸の間の我慢で、行商で売り捌いた散薬 の何倍もの金子が簡単に手に入るんですから。何度ですか? 何度、男に抱かれたんです?」 俺は唇を噛み締めて、ゆるゆると首を振った。斎藤は目を細めて、俺の耳朶に唇を寄せる。 「――――――……お言いなさい。何度、ここを男の逸物で貫かれたんですか」 俺の腕を掴んだ斎藤の手が、強い力で俺の体を引き寄せてくる。抱きしめられた、と感じた次の瞬 間には、袴越しに臀部を撫でられた。 「さ、いと……ッ」 「私の道場にもね、一人いたんですよ。あなたと寝たという男がね」 俺は斎藤の言葉に身を捩る。 「石田散薬と書かれた幟を持っていた、色白の女のような顔をした…すらりとした美人だと」 斎藤はくつくつと笑った。 「あ、あれは……」 「橋の桟に凭れて、行き交う男を物欲しそうに眺めていたと言うじゃありませんか。あなたを買ったという男ですがね、あ なたと擦れ違う時に手を引かれたと言ってましたよ。そのまま近くの廃寺に連れて行かれた、と。 ………鬼副長、と言われて隊士達に恐れられてはいるが、本性はとんだ淫乱だ」 斎藤の言葉に、俺は身を竦ませる。 「………で、何度抱かれたんですか。黙ってると、言いますよ。局長と、隊士達に。……あなたもお嫌でしょう? 鬼副長としての権威が失墜するのは」 俺は斎藤に抱きしめられたまま、喘ぐように呟いた。 「――――――……ッご、五度…………」 俺のその言葉に、斎藤の表情が変わる。 「………決まりですね。あなたは、ご自分の身体で金子を稼がれるといい。商家には、稚児を愛でている変態も数多い から……、あなたのその容姿とその男好きのする体だったら、500両は下らないんじゃないですか? 五人、相手すれ ば……簡単ですよ」 そう言って、斎藤はぞくりとするほどの冷たい笑みで笑った。 行かなければ、斎藤は勇さんに言うのだろう。過去、俺が男に抱かれる事で金を貰っていた事を。 興味本位とは言え、見知らぬ男と寝て金を貰うなど……常識人の勇さんにとってはそれは侮蔑の極みかもしれない。 だが、男に抱かれるのは……それが初めてじゃなかった。自分の顔が、身体が、男好きのするものだと気づいたのは 奉公に出された11歳の頃だ。大旦那に呼ばれて、まだ何も知らないでいた俺の体を好き勝手に弄り回し、彼はまだ子 供だった俺に快楽と射精を教え込んだのだ。 乾いた地面が水を吸収するように、俺は簡単にその行為に溺れていった。 六十を過ぎた大旦那の、玩具を使う…ねっとりとするようなしつこい快楽に身体が慣れた頃、なかなか店に出てこない 俺を叱りにやってきた若旦那に見つかり、第二の苛みが始まったのだ。 それが、俺にとって初めての『男に抱かれる』経験だった…と言ってもいいかもしれない。 夜な夜な俺を呼び出して、若旦那は俺の体を抱いたのだ。 「―――――――…黙り込んで、どうしたんです。怖いんですか」 さすがの斎藤でも、昔の奉公先での出来事など知りはしないだろう。俺は小さく笑った。 「……別に」 またあの頃のような責めに遭うだけなのだろう。今更、何も知らない小娘のように身を震わせても仕方がないのだ。 「さぁ、着きましたよ」 斎藤の手が俺の腕を掴み、商家の脇の路地にするりと身を滑り込ませた。踏鞴を踏んだ俺の体を、斎藤が抱き寄せ てくる。あっと息を飲んだ俺を、斎藤は強い力で抱きしめた。俺は腕を突っぱねて、斎藤の腕の中から逃れようと身を捩 る。それを制しながら、斎藤は言った。 「これから行く商家の離れには、三人の旦那が待っています。あなたは、今日と明日の二日をかけて彼らの欲望に応え なければなりません。 ……例えば、自慰をしろと命じられれば、その命令に背く事は許されませんよ。何て言ったって、あなたは彼らに金で 買われたのですからね。三人で500両ですよ。破格だとは思いませんか。三十代の男に対して払う金額ではないで しょうね。 何故だかわかりますか? 三人とも、あなたの肩書きと容姿に惹かれたんですよ。あなたの、『新撰組副長・土方歳 三』という肩書きと、鬼だ夜叉だと恐れられている副長のその容貌にね。 そりゃ、滅多にない経験ですよ。あの、泣く子も黙る鬼副長を、金を出せば好きなだけ抱けるんですから」 「…………」 斎藤は俺の顎を掴み上げると、ニヤリと笑った。 「彼らに気に入ってもらえれば、500両と言わず900両でも出すかもしれないですね。まぁ、彼らの機嫌を損なわないよ うに、みっともないぐらいに足を広げて欲しがってくださいよ……男を」 斎藤はそう言うと、襟ぐりを引き寄せて噛み付くように口付けをした。 「―――――――……ッ」 「いい顔ですよ、土方副長」 手の甲で唇を拭う俺の腕を掴んで、路地を歩いていく。 俺は目を閉じた。
た。 そこの一番奥の座敷に通された瞬間、俺は息を止めた。後ろに立つ斎藤の手が俺の肩を掴む。 「ここで二日間過ごしてもらいますよ」 十畳ほどある部屋の畳の上に広げられた白い布。四方に立つ燭台。掛け軸がかけられているはずの床の間には何も 掛けられておらず、ただ無骨な塊がいくつかゴロリと転がっているのみだった。 その塊が一体何か、それを知らぬ俺ではない。 畳の上に広げられた布が、畳を汚さない為のものだという事もすぐにわかった。 「直に旦那が来ますよ」 「………お前は……屯所に戻るのか」 俺の問いに、斎藤が薄く笑う。 「いて欲しいんですか、俺に? 見られても平気なんですか。男達に抱かれて善がってるあなたの姿を」 「――――――……ッ」 俺は俯く。三人の男に一体どのように抱かれるのかわからない今の俺にとって、斎藤だけが唯一の支えとも言えた。 斎藤に見られるのは恥ずかしい。だけど………。 「お着きになられましたかな」 廊下を歩く足音が近づいてきた。俺は斎藤と共に部屋の下座に正座をした。自然、顔が俯く。 部屋に、三人の男が入ってきた。小太りの男、背の高い男、小柄な男。どれもが皆六十代の老人だった。 俺は目を合わせないままに頭を下げる。顔を上げた途端、彼らの目が舐めるように俺の顔を見つめるのを感じていた。 「……ほぉ。あなたが新撰組副長ですか」 「これはこれは……噂に違わぬ美人ですな」 男達は俺の顔と体を舐めるように眺めている。 「土方さん。ほら、着物をお脱ぎなさい」 斎藤のその言葉に、俺はびくりと体を震わせる。救いを求めるように斎藤を見た俺に、斎藤はにこりと笑った。 「あなたのそのいやらしい体を皆さんにお見せしなさい」 俺は唇を戦慄かせながら、のろのろと立ち上がる。袴を脱ぎ、帯を解き、着物を脱ぐ。襦袢だけになった俺を、三人は 舐めるように見つめていた。 「襦袢も必要ないでしょう」 斎藤の言葉に、俺はついに最後の砦の襦袢を脱ぎにかかった。するりと肩を滑り落ちていく襦袢の肌触りに、鳥肌が 立つ。 斎藤の命令で、下帯は着けて来ていなかった。露わになった俺の裸体に、三人が息を飲むのがわかった。 救いを求めるように見た斎藤は、にこりと微笑んだ。その笑みは、今まで一度も見た事のない優しい笑みだった。何故 か俺の胸がどきりと高鳴る。 「さぁ、そこに座って足を開きなさい。いやらしくひくついている恥ずかしいあそこを彼らに見せなさい」 斎藤の無慈悲な命令に、俺の身体が震える。 俺はその場に座り込むと、震える足をゆっくりと開かせて行った。布を掻く足先がガタガタと震える。俺はきつく目を閉 じた。 「ほら、土方さん。さっき屯所を出る時に教えたでしょう。何て言うんですか?」 俺は目を閉じたまま眉を寄せて喘いだ。 「――――――……お、俺の、……いやらしくヒクついた……ここを、」 俺は膝裏にやった手を動かして、ゆっくりと尻たぶを開いた。奥に眠る菊座を彼らに見せた。 「ここを、ゆ、指で……ぐ、ぐちゃぐちゃに……か、かき……掻き回して……ください」 恥ずかしさのあまり、声が震えた。皆に見られ、恥ずかしい言葉を言い、興奮するのがわかった。 彼らが膝を進めてきた。六本の腕が伸びてくる。彼らは俺の右足と左足を掴み、隠すところなどなくなってしまうほど大 きく開かされる。見られる事でムクムクと勃ち上がり始めていた一物を、三人のうちの誰かが握り締めてくるのを感じた。 びくりと身体が震える。 斎藤の目が気になった。俺はきつく目を閉じる。 誰のものかも知れない手が、俺の一物を扱き始めた。それは、同じ男だからこそわかる、快感のツボを知りえた動き であり、俺の身体はすぐに上気した。白い布の上に横たわった俺の身体は、男達からの愛撫で敏感に反応し、小刻み に震えた。 「ッぁ、あ、あ!!」 体を押さえつけられ、蜘蛛の手のように幾つもの触手に身体中を弄られ、俺の唇からは堪えきれず声が漏れた。 内腿を撫でていた指が、するりと菊座へと伸びる。ヒクつくそこを、その指は触れた。敏感になっている入り口を突かれ 俺の身体が震える。 「い、いや……ッぁ、あ!!」 唾液で濡らした男の指が、入り口の皺を伸ばすようにまさぐり、やがて堅く閉ざされたそこを無理矢理広げるようにして 侵入してきた。引き攣れるような痛みに、俺の喉が仰け反る。 「だ、駄目だ…ッは、入らない……ッ痛い……痛い!」 喘ぐ俺の言葉を無視して、なおも男は指を入れてこようとする。 その時だった。 「駄目ですよ。閉じてる蕾に無理矢理指を押し込んでは」 今までずっと存在を消している斎藤の声だった。いきなり現実に引き戻された俺は、びくりと体を震わせて、周囲を見 渡す。障子に寄り添うようにして、斎藤は座っていた。 「四つんばいにさせて、蕾を舐めて解してあげるといいんですよ」 「な、なるほど…そうか、そうか」 無理矢理指を突き入れようとしていた男が頷く。と同時に、他の男達が俺の腕を引いて体を起こし、髪を引っ張って四 つんばいにさせた。 「こうすれば、苦もなく私達も楽しめるというものだ」 背の高い男が前に回り、俺の髪を掴みあげて、勃起した逸物を唇に押し当ててきた。俺は拒む事もできず、口腔の中 にその男の汚らしい逸物を含まされる。喉の奥まで突っ込まれ、何度も餌付いた。 「――――――‐……ッん、ぅ、ううううう!!」 ぐちゅぐちゅ、と喉の奥まで深く突き入れられ餌付いた瞬間、自分の一物をぬるりと扱かれた。びくりと腰が震えたと 同時に、別の男の舌がヒクついた俺の菊座を舐った。 もう、斎藤に見られているという理性と恥ずかしさはなかった。上と下とを同時に責められ、快感を引き出され、いつの 間にか嬉々として、俺は男の一物を音を立てて嘗め回し、腰を揺らして男の指を咥え込んでいた。 「……ッん、んふぅ……ぅん、ん、んぐ…」 みっともなく、女のように声を漏らしながら、俺は男達に汚されていく背徳と倒錯に身を溺れさせていく。 男の指ですっかり解されてしまった頃には、一度目の男の精汁を飲みこんでいる頃だった。 ぐったりと弛緩する俺の腰を引き寄せ、指で中をかき回していた男が別の男を呼ぶ声が聞こえた。 ぐちゅぐちゅ、とかき回されるそこに、今中を暴れまわっている指とは別に、太い指が一本増える。引き攣れるような痛 みに喘ぐ俺を無視して、二人の男は好き勝手に指を動かし始めた。 「い…いや……ッ指……く、くるし……」 白濁に汚されたその唇を戦慄かせ、俺は力なく喘ぐ。 「中をかき回すたびに、私達の指を物欲しそうに締め付けてくる…」 「前の一物は、もう二度も果てたようだよ…」 男達の好色な声が聞こえてきた。 「ほら、私達の一物が欲しければ、自分から腰を下ろすがいい。淫乱な新撰組副長…」 唐突に指が抜けた。後ろを振り返った俺の目に、あぐらを掻く男の姿が見えた。始めからずっと俺を指で弄っていた男 だった。 そのあぐらを掻いている股間から、屹立した一物がそそり立っている。初老の男には似つかわしい大きな一物だった。 俺は虚ろな目でそれを見つめ、のろのろと体を起こす。男と向かい合わせになるのには抵抗があった俺は、そのまま 男に背を向けた格好で、あぐらを掻いた男の股間に腰を落とした。 手で男の一物を支え、のろのろと腰を落とす。存分に男達に弄られて緩んだそこは、何の抵抗もなく男の一物を受け 入れた。 「あ、あ、あ、あッ」 ぐちゅり、と音を立てながら中に沈みこんでいくその感覚は、眠っていたはずの俺の浅ましい獣のような性欲を掻き立 てるものだった。 全て奥まで沈み込んだ後は、自然と腰が動き始めた。 「見たか。あの【鬼】だと言われて恐れられている新撰組の副長が、自ら腰を動かしているぞ」 「なんて淫らな顔をしているんだ…」 背の低い男が立ち上がり、俺の前に立つ。両頬を手で挟まれ、唇に己れの一物の先端を押し付けてきた。俺は抵抗 する事もなく、手でそれを掴み、奥深くまで一気にくわえ込んでやった。 「こっちもだ」 背の高い男が、俺の空いた手に自分の一物を握らせる。俺は男にされるがままに手を動かした。 「んぐぅ、ぅ、うう、んはぁ、はぁ、あッあ!!」 もう、理性を保つ事すらできなかった。
「大した淫乱ですね、土方さん」 俺は体を動かすのも億劫で、じろりと目で斎藤を睨むだけしかできなかった。 「あなたの綺麗な身体が雄豚達の精汁で汚されている様は、随分と嗜虐心を誘いますね」 「………」 「今宵だけで何度男の精をその身中に受けましたか」 「……忘れた」 代わる代わる俺を責め立てた男達は、皆初老という歳にも関わらず、驚くほどの絶倫だった。 「……いつ屯所に帰られるんだ」 のろのろと体を起こし、汚れた体を濡れた手拭いで拭っていく。 「二日間の約束ですから、明後日の夜ですよ。次に旦那方が来るのは、明日の夕方。……良かったですね、明日の朝 と昼はゆっくり過ごせますよ。………誰もここに来なければね」 「……なんだと?」 斎藤はうっすらと笑みを浮かべるのみだった。
の淀んだ空気とは無縁の、いつもと変わりない日常が、その向こうにあった。 俺は襦袢を着、先ほど小間使いの女が置いて行ったらしい昼食の盆を取るために、障子をそっと開けた。 盆に伸ばした手を、ふいに掴まれ、俺は「あっ」と声を漏らしていた。 刀は勿論ない。ここへはあの男達以外訪れてはこないだろうと思っていた。 俺の腕を掴んだ男は、そのまま俺の体を中の部屋に突き飛ばした。そして後ろ手に障子を閉める。 「………へぇ。親爺が何やら隠しているとは思ってはいたが……男とはなぁ」 その口ぶりからすると、この屋敷を提供した昨日の三人の男のうちの一人の息子らしかった。 「しかも、俺と同じ年頃の男と来た。……よほど床上手なんだろうな」 男は俺の腕を引き寄せ、間近で顔を見てくる。 「その猫みてぇに気高そうな顔で、どうやって親爺達を誑かしたんだ?」 男の手が俺の襦袢の襟ぐりを掴み、そのまま剥ぐ。床に体を押し付け、襦袢に隠れた俺の一物を握り締めてきた。思 わず声を漏らした俺に、男は好色そうな笑みを浮かべ、なおもしつこくまさぐってくる。 「なぁ、俺もお前を抱けるんだろ? ここの屋敷は親爺のもんでもあるけど、俺のもんでもあるんだしよ」 反論も抵抗もしない俺の体を、好き勝手にまさぐってくる。 「………何だよ、反応なしかよ」 弄っても弄っても声を上げない俺に、男は舌打ちした。と、ふと床の間に置かれた玩具を見つける。 「なるほどなぁ。お前、昨日は親爺達にこれで可愛がってもらったのか」 男が手にしたのは、べっとりと濡れた男の一物を象った張り型だった。思わず表情が強張る。 「ち、違う……そんな、道具は使ってない…ッ」 べっとりと濡れたその液体が薄気味悪く、俺は尻でいざって首を振った。 男が舌なめずりをした。 「雌猫みてぇに尻向けろよ」 腕を伸ばして、男が俺の体を床に押し付ける。 「――――――……ッい、嫌……ッ」 暴れる俺の体を押さえつけ、尻を高く持ち上げさせるという屈辱極まりない格好を取らされる。 俺が抱かれてもいいと言ったのは、金をくれるあの三人の男だけだった。好きにしていいのは、あの三人だけという約 束だった。 斎藤はいない。 「………ッあ、あ!!」 濡れた張り型が、昨夜の交歓で濡れてヒクつくそこに宛がわれる。ずぶずぶと何の抵抗もなく突き込まれ、俺の身体 はゾクゾクと震えた。 昨夜一晩で呼び覚まされた俺の浅ましい獣は、いとも簡単に呼び覚まされたのだ。 「こりゃあ、いいや」 男が、俺の喘ぐ表情を眺めて舌なめずりをする。そして、音が漏れるほど激しくその張り型を動かし始めた。 「あ、あぁ、ッあん、んんッ」 緩んだ口からは、絶え間なく喘ぎ声が漏れる。それは、ただ張り型を突き入れられている快感だけのはずだった。 「―――――‐!?」 ふいに、その張り型を受け入れた部分が熱く疼くのがわかった。ひくりと腰が震える。 男が、張り型を動かす手を止める。その途端に襲ってくる、激しい痒みと焦燥感に、俺は腰を震わせた。 男に「もっと動かして」と哀願するか、動かない張り型を自分で動かしてその痒みを凌ぐしか方法はなかった。 張り型には、何かが塗られていたのだ。 その痒みに、身体が震える。噛み締めた唇から思わず甘い声が漏れそうになった。 「――――――‐……ッあぁ……」 思わず漏れたその声に、男が反応した。 「動かして欲しいか」 男のその言葉は、これ以上ない甘い囁きにしか聞こえなくなっていた。俺は必死に頷き、舌たらずの声で、「動かして 」と頼んだ。 男の手が再び張り型を抉るように動かし始める。そのたびに、全身を甘い疼きが駆け巡り、俺は絶え間ない甘い喘ぎ 声を上げていた。 男の生唾を飲み込む音が聞こえた。 次の瞬間、張り型が抜かれ、変わりに男の猛り狂った一物がずぶりと俺の中に入ってきた。張り型とは比べ物になら ないそれに、俺の身体が仰け反る。 「あ、ああああああッ い、いい、いいッ もっと、もっと」 恥ずかしげもなく腰を揺らめかせ、俺は男を誘う。 男の手が、俺の髪をひっ掴む。仰け反るような格好を取らされ、俺は喘いだ。 「女みてぇにひぃひぃ喘ぎやがって……ッ」 体を荷物のように仰向けにひっくり返された途端、男の両手が俺の首にかかった。指の力が込められ、そこで初めて 交歓の最中に俺は首を絞められているのだ、という事に気づいた。 首を圧迫する息苦しさと同時に、喩えようのない快感が全身を走り抜けていく。 次の瞬間、俺の意識は暗転した。
瞼の裏側に揺らぐ蝋燭の火を感じ、俺はのろのろと目を開けた。饐えた臭いの中、黒の着物に身を包んだ背中が見え る。何やら荷物を纏めている、といった感じに見えた。 「………………さ……いと……」 体を起こそうとして、俺は自分の体に羽織がかけられている事に気づく。斎藤の羽織だとすぐにわかった。 「どうして……まだ約束の刻限じゃねぇだろうが……」 喉から漏れる掠れた俺の声に、斎藤が振り返る。その顔は無表情だった。 「……約束違反をされたのでね。帰りますよ」 斎藤はのそりと立ち上がると、手を伸ばして俺の腕を掴んだ。 「や……くそく、いはん?」 「契約の500両に加えて、200両を上乗せさせました」 斎藤はそれだけを言うと、俺に着物を差し出した。それきり斎藤は何も話をしない。 「………やはり私はどうかしていたらしい」 帯を締め終えた頃、斎藤はようやく口を開いた。 「……………は?」 立ち尽くす俺に、斎藤は手を伸ばしてくる。男に首を絞められた痕を撫でてくる。 「あなたが他の男に抱かれている姿を想像した時、私はえも言われぬ昂奮を感じたのを覚えています。その昂奮をもう 一度味わいたくて、商家に金子と引き換えにあなたを提供したのだが、実際その光景を目にした途端気が触れてしま いそうになりました。……おかしいですね」 斎藤の言葉に、俺は唖然となる。斎藤は腕を組み、首を傾げている。 「どうしてこんなに腹が立つんでしょうね……」 それって……。その言葉の先は、恐ろしくて口にはできなかった。なんとなく、黙っている方が今の俺にとって幸せな んじゃなかろうか、とさえ感じさせた。 「……さ、斎藤、帰ろう。ここには一秒だっていたくねぇ……」 俺の中に一つの確信が芽生えた以上は、それを刺激しないように斎藤を促すのが一番得策と思えた。 「そうですね。私も、屯所に戻ってゆっくりと考えたいですから。……あなたの事を」 そう言って、斎藤は薄く微笑んだ。 「一応、解決策として思いついた案があるんですよ、土方さん」 商家の裏口から外へと出ながら、斎藤は呟いた。 「それを実行するには、今のあなたでは無理でしょうね。昨夜と今日の昼、随分と身体を酷使されたようですから、」 斎藤は低い声で呟きながら、俺の手を握る。指を口に運び、カリッと歯を立てられ、ぞくりと鳥肌が立った。 「―――――…そのうちに」 斎藤のその囁きは、俺を絡め取っていった。
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*あとがき*
こちらは、同人ROM『比翼連理』内に収録する予定の斎藤×土方短編として書いていたものです。
が、あまりにも暗い上に長ったらしく、意味のわからない話になってしまったので(汗)、ボツにしました。
書いててあまり楽しくなかった…(泣)。でも消すには、これに費やした時間が勿体無い…ので、
勇気を出して(…ある意味次回作までの『時間稼ぎ』?)UPする事にしました。
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