検診徹底しなかった…脊柱側わん症女性が校医・能勢町と和解

投稿者: | 2010年4月2日

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(読売新聞2010年4月2日より)
 小中学校の学校医が学校保健法で定められた脊柱検診を怠ったために,背骨がねじれて曲がる「脊柱側わん症」が悪化したとして,大阪府能勢町の女性(18)が,同町と在校時の学校医に約5000万円の損害賠償を求めて大阪地裁に起こしていた訴訟は,町と学校医が計900万円を支払うことで和解した。
 訴状によると,女性は町立小・中学校に通学。中学3年だった2006年,大学病院で「特発性脊柱側わん症」と診断された。治療しているが,完治する見込みは少なく,2年前に提訴した。
 和解は3月26日付。和解条項で,徳岡由美子裁判長は,町が検診を徹底していなかったと指摘。 学校医にも十分な反省を求めた。

 同町は09年度から小学5年と中学1年の希望者に,側わん症の早期発見に効果的とされる撮影検査を実施。対象児童・生徒の9割近くが受診したという。
 女性の代理人弁護士は「脊柱検診の必要性が学校と保護者に周知された」と評価。同町は「子どもたちの病気を早期に発見するため,より充実した検診に努めたい」としている。

 検診(健康診断)は,基本的にスクリーニング(ふるい分け)が目的ですから,検査の精度には限界があります。
 検診に,どこまでの精度が求められるかは,極めて難しい問題です。

 記事の事案は,5000万円請求に対して,900万円での和解。請求額の2割弱です。
 このケースは,恐らくは,「割合的認定」に基づいて和解協議されたものと思われます。

 「割合的認定」とは,裁判官が,その時点の仮の心証として,たとえば「原告の主張に2割の正当性を認める(=原告勝訴の確率が2割)」といったことを表明することです。 裁判官は,かかる心証に基づいて,損害額に対して「割合的認定」の率を掛け,和解金額を設定します。
 法律上の根拠はありませんが,裁判官が,当事者双方に対して和解案を説明・説得するために,よく使う表現です。
 判決では白黒どちらかしかありませんが,和解では,より柔軟な解決が許されます。