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コロナ第二波にもがく欧州「だから日本も危ない」は早計 なぜあそこまで感染が広がるのか - 宮下洋一 (ジャーナリスト)

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欧州各国で10月末、再ロックダウン(都市封鎖)が始まった。秋になり、新型コロナウイルス第二波の感染が拡大し、入院患者や集中治療室(ICU)の収容率が増加。第一波を超える脅威が訪れている。

スペインは、夏場に解除した非常事態宣言を再び発出し、フランスやイタリアも飲食店の営業停止や交通規制、不要不急の外出を禁じるなど、欧州人は第二波の猛襲に困惑している。

11月4日現在、欧州連合(EU)とイギリスの感染者は累計800万8149人、死者は22万8182人を超えた。中でも、イギリスでは4万7250人、フランスでは3万8289人、スペインでは3万6495人が感染し、亡くなっている。また、スペイン紙エル・ムンドによると、9月21日以降、人口10万人あたりの死者は、スペインが9.22人と最多で、フランスが5.55人、イギリスとロシアが4.76人、イタリアが2.79人。ドイツは0.84人と圧倒的に低い数値を示している。

第二波の感染拡大は続くものの、死者の数は第一波に及ばない。1日の最高死者数がイタリア969人、スペイン888人、フランス605人(各国保健省調べ)だった第一波に対し、第二波ではそれぞれ221人、157人、288人(同)に収まっている。少ないと過信してはならないが、第一波と異なることは事実のようだ。

なぜ、欧州では夏以降に感染爆発が起き、予想できた第二波の対策に暗中模索しているのか。科学の世界とは別次元において、欧州には独特の文化や生活様式があることが見えてきた。

パーティに参加した
若者の中で広がる感染

「スキャンダラスで無責任だ」

パリ・テノン病院感染学科のジル・ピアル部長は、欧州各国で次々と摘発される違法の遊宴「コビッド・パーティ」の現実について、そうため息をついた。外出禁止令が解除された夏場から、感染爆発を促した最大の要因は若者の違法パーティだといわれる。マスクを外し、酒やダンスに夢中になり、薬物にも手を染める。

フランス国営放送は10月、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)上で客を集め、参加者のみが知る場所で主催されたパーティ現場に隠しカメラで潜入。唯一マスクを着用して潜入した記者に対して「麻酔科と蘇生科で働いている。いつも遊んでいる」と明かす医師の姿もあった。

イギリスでも、野外レイブ(ダンス音楽)パーティに参加した若者たちが地域の感染率を高めたデータがある。8月には同国東部ハートフォードシャー州のボアハムウッドで若者600人が酒とダンスに酔いしれ、警察の取り締まりを受けている。

10万人あたりの感染者数が欧州最悪を記録し続けたスペイン・マドリードでは、これらの〝極秘〟パーティが10月の約3週間だけで400件ほど見つかり、前月には2953施設が罰金の対象になったと地元メディアが報じた。バルセロナ大学に通うアンナ・マルティネスさんは「コロナを怖いと思わなくなった」と自信満々に答え、「遊びに行きたい人たちの気持ちだって理解できる」とも言った。

スペインで二度目の非常事態宣言が発出された10月25日夜、若者は「自由が欲しい!」と街中で叫んで抗議した。陽性者の約3割がこのような交流の場で感染していることも、スペイン保健省のデータから明らかだ。

同国の感染症情報センター(RENAVE)が発表した年齢別コロナ感染者グラフによると、5月10日までは、70歳以上が全体の約37%を占め、15~39歳までは約15%の感染に過ぎなかった。しかし、それ以降は、前者が約11%で、後者が約38%と逆転している。死亡者の割合にも大きな変化が見られる。5月10日まで、70歳以上が全体の36.4%を占めていたが、現在は12.3%と3分の1まで減少した。

コロナ陽性者が急増し、各国政府は防止策としてロックダウンを行い、メディアは危機的状況を伝え続ける。だが、医療従事者側からは、これらとは違ったトーンの声もささやかれる。

スペインの集中治療・危篤・冠状動脈医学会のリカール・フェレール会長は、10月21日付の主要紙エル・パイスで「基礎疾患を持つ患者の特徴を把握した上で、それぞれに対症療法を行っている」と語った。薬の使い分けで、第一波ほどの緊急事態に陥らないとの考えを示した。


(出所)スペイン保健省やAtresmedia(アトレスメディア)報道資料等を基にウェッジ作成 写真を拡大

バルセロナにあるバイデブロン病院のマリアホセ・アバディアス医師は「患者は急増している」と述べる一方、第一波の緊急時はICUに220人入院したが、現在は27人で「7月から安定している。3分の2は入院させない。逼迫も医療崩壊もしていない」と地元紙エル・ペリオディコ(10月24日付)に説明した。

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