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 コロナ禍が拡大するなか、株価は高値を保っている。どこまでが持続可能な水準なのか、慎重な見極めが必要だ。

 先週の東京市場では、日経平均株価が29年ぶりに2万6千円台を回復した。ワクチン開発への期待で値上がりした米国市場に足並みをそろえた。

 年初は2万3千円前後だったが、3月には1万6千円台に急落。その後、内外の金融・財政政策の効果もあって値を戻し、今月に入って上昇の勢いを増した。ただ、欧州で感染が急拡大した10月末や、国内で陽性判明者が急増した先週末など、売りが増える局面もある。

 先行きの不透明感はなお強く、実体経済の底割れを防ぐためにも金融市場の安定は重要だ。株価の堅調な推移は、一定の安心材料になる。

 一方で、過剰に上ぶれすれば、将来の下落圧力になる。企業収益と比べた株価水準(株価収益率)は、企業の減益予想もあって、相応に高まっている。過熱に至らぬよう、市場参加者は十分注意してほしい。

 日本銀行は10年前から、株式市場で上場投資信託(ETF)の買い入れを続けてきた。黒田東彦総裁下の「異次元緩和」で年間3兆円に枠を広げ、16年には6兆円に倍増。18年に「弾力化」を打ち出して事実上の減額に転じたが、コロナ禍で3月から枠を12兆円に増やした。

 当面、万一の市場の混乱に備えて買い入れ枠を維持することは理解できる。日銀も株価上昇が続く局面では実際の買い入れを控えており、現状ではこうした運用が望ましいだろう。

 ただ、中央銀行が株を買うのは世界的にも異例の政策だ。日銀が大株主になった上場企業が増え、企業統治への悪影響を心配する声もある。

 日銀は「リスクプレミアムの縮小」、つまり株価の値下がり懸念の行き過ぎを防ぐことを目的に掲げている。しかしそれをどう測っているかについては、株価収益率などの指標や市場参加者からの聞き取りで総合判断していると説明するだけで、不透明さが拭えない。買い入れが常態化し、累積額も膨らむにつれ、政策の費用対効果は薄れているのではないか。

 黒田総裁は国会で先週、ETF買い入れは金融緩和の一環だとして、出口の議論は尚早と述べた。確かに、日銀が掲げる物価上昇率2%の目標は達成が当面望めそうにない。しかし、個別の手段は状況や目的に応じて採否を判断すべきだ。ETF買い入れは2%達成まで続けると約束しているわけでもない。

 株価の水準とコロナの感染状況を熟慮しながら、手じまいへの道筋を考えていくべきだ。

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