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 政府は新型コロナ対策本部を開き、「Go To キャンペーン」の一部見直しを決めた。感染症や経済の専門家でつくる政府分科会の提言を受けたものだ。自治体との連携を密にして運用の細部を詰め、感染が急拡大している現下の状況を早期に抑え込まねばならない。

 この10日間ほど、人々が不安といら立ちをもって見ることになったのは、医療関係者と政府の間にある認識のギャップだ。

 中川俊男日本医師会長は11日に「第3波」の到来に言及し、分科会の尾身茂会長も強い危機感を表明した。こうした動きを受けて、社説も「大流行の入り口に立っている恐れがある」と指摘し、税金を使って人の移動や会食を推奨するキャンペーンについて、その扱いを検討すべきだと書いた。

 だが、社会経済活動の維持に軸足を置く政府の反応は鈍かった。加藤官房長官は菅首相肝いりのこの事業の推進を表明。当の首相は笑顔で「静かなマスク会食」を促し、西村康稔担当相からは、キャンペーンを利用するかどうかは「国民の皆さんの判断だ」と、開き直ったような発言も飛び出した。

 経済を支える大切さは多くの人が理解するところだ。だとしても今後の展望や状況に応じた施策を示さず、「始めた以上はやめられない」とばかりにキャンペーンに固執する姿勢は、政権への不信を深めた。

 分科会はおとといの提言の冒頭で「個人の努力に頼るだけではなく、人々の心に届くメッセージを期待したい」と書いた。市民とのコミュニケーションの不全は安倍政権のころから再三指摘されてきたが、一向に改善されない。説明を嫌い、木で鼻をくくる答弁を繰り返す菅政権になって、むしろその病は深くなっている感がある。

 飲食店などへの営業時間の短縮要請や感染が拡大している地域への移動の自粛など、分科会の提言は様々だが、市中感染が広がってしまえば、その効果は未知数だ。何より力を入れるべきは、これまで同様、医療提供態勢の維持・強化だ。

 地域によっては、ベッドに空きがあっても医療従事者が足りず、患者の受け入れが困難になっている。この先、入院先を確保しても感染拡大のペースに追いつかないとの声もある。

 病院や福祉施設でのクラスター(感染者集団)が多発していることも気がかりだ。気温が下がり、乾燥する季節を迎え、これまでとはまた違った対策が求められているのかもしれない。幅広く検査を行い、感染者を早期に把握できる態勢づくりが欠かせない。政府はそのための支援を惜しんではならない。