欧州で感染激増 「対岸の火事」ではない
2020年11月21日 06時37分
欧州でも新型コロナウイルス感染者が激増している。各国は行動制限を強化したが、抗議デモも相次ぐ。忍耐と結束で乗り切りたい。感染が急速に拡大する日本にとっても、対岸の火事ではない。
欧州では九月以降、感染者が急増し、ピーク時でフランスで一日当たり五万人、イタリアでは四万人を超え、ドイツでも二万人を突破した。英国では累計感染者数が約百四十万人に上った。春に続く第二波の襲来だ。医師や看護師の不足など医療体制も逼迫(ひっぱく)している。
日本などアジアに比べ、冷え込みが厳しく乾いた気候で感染が広がったとみられるが、拡大規模が格段に大きい理由は不明だ。
感染拡大防止のためフランスは全土で外出を禁止し、飲食店を閉鎖。ドイツも飲食店の営業を禁じ、劇場、映画館などを閉鎖、英国イングランドもロックダウン(都市封鎖)を実施している。
経済より新型コロナ対策を優先した形だが、反発も強い。イタリアでは数千人規模のデモが繰り広げられ、ベルリンでマスク着用義務化に反発する人たちに、極右らも加わり、連邦議会(下院)議事堂に乱入しようとするなど、ドイツ各地でもデモが続いている。
後手に回れば経済はさらに悪化し、ますます厳しい規制が必要となる。今、コロナ対策は必要だ。同時に、経済的に苦境に陥った企業や従業員への十分な手当ても欠かせない。
コロナ禍で疲弊した加盟国への経済支援には、欧州連合(EU)が設立を決めた七千五百億ユーロ(約九十二兆円)規模の復興基金の活用が重要だ。
基金は「法の支配」順守が配分条件。EUは司法やメディアへの圧力を強めるポーランドやハンガリーを批判し、両国の反発で欧州議会での基金承認手続きが遅れている。最近では東欧でも感染が拡大している。両国は基金成立のために協調を優先すべきだ。
基金とは別にEUは、加盟国間の患者移送のため、二億二千万ユーロを拠出することを決めている。すでに、フランスやイタリアからドイツへの患者移送が進んでいる。EUの結束を生かしたい。
感染第二波は、夏のバカンスシーズン中の旅行で広まったとみられている。年末年始休みを控えた日本にとって、欧州の状況や取り組みは参考にもなるはずだ。
日本は欧州を渡航中止勧告、入国拒否対象地域としている。水際対策を徹底したい。
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