【69号(2003.3)】
耳鼻咽喉科医長 土生先生のこと
つい2週間程前、国立熊本病院副院長で同級生である木村圭志先生より電話があった。彼からの電話は珍しいので一体どういう用件だろう、と思いながら受話器を取った。
この2日程前に、同じ耳鼻咽喉科医でもあり大先輩の渡邊桂吉先生が体調を崩されたこともあって、真っ先にその件を聞いた。しかし、彼の電話の用件は別のことであった。詳しく渡邊先生の状態を説明し終わったところで、本来の目的である本紙への執筆依頼をきり出した。
毎回送付頂いている「くまびょう」については、必ず目は通していたものの、まさか自分に原稿依頼がこようとは終ぞ思いもしなかったことで、大変驚いた。
話を聞いてみると、「VOICE」(登録医の声)の欄へ「病診連携について何か書け」とのご下命である。自分自身は登録医として登録した憶えはないのだが、と躊躇していると「何でもいいから書いてくれ」という。こうして散々悩んだ末に渋々承諾した次第である。
現在の耳鼻咽喉科医長である土生健二郎先生と筆者との関係には因縁浅からぬものがあり、筆者が大学を卒業し解剖学第二講座に大学院学生として入局した2 年後に土生先生が入局してこられた。話を聞いてみると、出身校が福岡県立嘉穂高校で同窓であり、弟と同級生であることもわかった。その後、筆者は耳鼻咽喉
科教室へ入局したが、彼もまた同じく耳鼻咽喉科教室へ入局してきた。そして共通の恩師である医療法人田中会「田中病院」の田中民夫先生(理事長・院長)の 下で、非常勤医兼当直医として病院に住み込んで耳鼻咽喉科の基礎を徹底して叩き込まれた。
その後、彼は国立熊本病院へと医員として派遣され現在に至っている訳だが、彼の温厚な人柄、じっくりと慎重に仕事に取り組む姿に魅かれ、多くの後輩が彼の教えを請い、頼りになる兄貴分として信用を集めているのは当然である。
彼の専門領域である耳科学・平衡神経学領域のみならず耳鼻咽喉科全般にわたって、我々開業医の良きアドバイザーとして、また指導者として厚い信頼を得て おり、国立熊本病院そのものが、耳鼻咽喉科領域の一つの地域医療の拠点病院として高い評価を得ておりご同慶の至りである。
ここ数年は救急医療の面でもご尽力頂いており、熊本市の西部地区の中核病院として、益々発展されんことを祈るものである。