GoTo事業 ブレーキを踏む時だ
2020年11月20日 07時53分
新型コロナの感染が急激に再拡大している。だが政府は観光や飲食を促すGo To事業を継続する姿勢を変えていない。感染対策と経済の両立は必要だとしても今はブレーキを踏む時ではないか。
菅義偉首相はコロナ禍について「最大限の警戒状況にある」と言明している。その一方で、Go To トラベル、イートの双方を続ける方針を表明している。
GoTo事業の狙いは、コロナ禍で売り上げが激減している観光や飲食の分野で消費を刺激することだ。元々は感染拡大が沈静化した場合に実施する対策でもあった。
しかし政府は今夏の感染拡大期に開始し、再び感染が激増する今も姿勢を転換していない。警鐘を鳴らすと同時に感染拡大につながる政策を後押ししている形で、ブレーキとアクセルを同時に踏んでいるようなものだ。
感染者数は、東京都や愛知県、北海道などを中心に、最多記録を更新している。重症者が増え、医療が逼迫(ひっぱく)する気配を見せ始めている地域もある。
この状況下で西村康稔経済再生担当相は、GoToトラベルの利用について「国民の判断だ」と述べた。だがトラベルは国が約一兆三千億円の予算を投入して行っている国策である。感染リスクが高まる中、国策の責任を国民に押しつけるのなら、見過ごすことはできない。
事業全体の仕組みにも問題点がある。トラベルでもイートでも不正に近い行為が横行している。高級宿泊施設や予約サイトばかりが恩恵を受け、真に救済を求めている民宿や小規模な飲食店には支援が行き届いていないという指摘もある。
感染対策ばかりに傾斜すると経済的痛手が深まり、生活苦が増えるなどかえって被害が広がるとの見方がある。それに異論はないが、事業はあくまで観光、飲食などに絞った消費促進策だ。
コロナ禍はあらゆる業態に打撃を与えているが、特に非正規労働者など収入が比較的低い人々への影響が甚大だ。生活苦への対応は資金給付など直接的な支援策を強化するしか手はない。
観光や飲食業全体に効果があるのであれば事業継続には原則として賛成だ。だが今は、いったん停止するか規模を縮小するタイミングではないか。矛盾点を改善した上で、感染状況を見ながら徐々に再開するなど臨機応変に対応すべきである。
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