「うまくいくと思えない」 国費巨大ファンド計画に懸念の声

2020年11月16日 06時00分
文部科学省

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 文部科学省と内閣府が計画する国費を活用した巨大ファンドは、大学の研究費ねん出が目的だ。だがマイナス金利下で国債など低リスクの金融商品の利回りは一段と低下。新型コロナウイルスの影響で相場の先行きも見えにくい。民間ファンドの幹部は「到底うまくいくとは思えない」と指摘する。(森本智之)

◆官民ファンド 目立つ赤字計上

 バブル崩壊後、アジア通貨危機(1997年)、リーマン・ショック(2008年)、コロナ・ショック(20年)とほぼ10年おきに「危機」は訪れている。外資系ファンドの関係者は「毎年利益を出し続けるのは至難の業だ」と話す。
 公的資金を預かる年金積立金の運用では、コロナ禍での世界的株安が影響し、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が19年度に約8兆2000億円の赤字を計上した。01年度以降の累積では大幅な黒字を確保しているが、コロナの状況次第では、黒字が目減りする可能性がある。
 安倍政権が積極的な活用を掲げた官民ファンドでは、赤字を計上するケースが目立つ。官民ファンドは民間が投資しにくい事業などに国がお金を出し、経済を活性化させる役割を担う。市場で運用するわけではないが、資金を回収できなければ最終的に税金などでの穴埋めを迫られ、国民負担が発生する恐れが出てくる。

◆収益確保できず解散決めたファンドも

 官民ファンドでは、農林水産省所管の「農林漁業成長産業化支援機構(A―FIVE)」、経済産業省の「海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)」など4ファンドで累積赤字が拡大。19年度末では4ファンドで計431億円に達した。現在は所管官庁だけでなく財務省が運営状況をチェックする。
 中でもA―FIVEについて政府は収益の確保が困難と判断。25年度中の解散を決めた。現在は収支の改善を進めているが、それでも最終的に120億円の赤字が残る見通しだ。

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