神奈川県の29市町村 新型コロナで「避難所見直した」 半数以上で収容人数が減少

2020年11月15日 12時35分
 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、密を避けるため災害時の避難所を見直したか県内33市町村にアンケートで尋ねたところ、29市町村が「見直した」と回答した。1人当たりの面積を広げるなどしたため収容できる人数が減る自治体が多く、「避難所を増やしたくても使える施設がない」「運営人員が確保できない」などの課題も浮かんだ。 (杉戸祐子)
 アンケートは十月に実施した。「見直した」と回答した二十九市町村のうち、九市町が施設数を増やし、十一市町が学校体育館に加えて教室も使えるようにするなど面積を広げたか、広げる調整をしていた。
 収容できる人数について、見直し前と同等かそれ以上を確保できたと答えたのは七市町村。三浦市は、震災時十七カ所、風水害時十九カ所としていた避難所数を二カ所ずつ増やし、想定収容人数も千六百八十人ずつ拡大した。
 「減る」「減るだろう」と回答したのは十八市町。小田原市は風水害時の避難所を三十四カ所から四十三カ所に増やしたが、一人当たりの面積を増やしたため収容人数は約五万人から約三万四千人に減った。愛川町は避難所を九カ所から三十五カ所に増やしたが、収容人数は約七千五百人から約四千七百人に減った。
 課題を尋ねたところ、十四市町が「避難所として使える施設が少ない、スペースが足りない」、十八市町が「運営要員が足りない」と回答した。大半の自治体が避難所の利用者数を抑制するため、在宅避難や親類・知人宅への避難などを呼び掛けている。また、全市町村が間仕切りやテントなどの備蓄や提供業者との協定を進めている。
 内閣府は六月、都道府県を通じて自治体に避難所のレイアウト例を通知。間仕切りなどの使用のほか、人と人の間隔は二メートル空けるのが望ましいなどと示した。

◆「混雑見える化」9市町導入 厚木市、多目的トイレ…役立つ情報も

室内用テントを張り、避難者同士が密集しないような避難所開設の訓練をする厚木市職員=厚木市で(市提供)

 アンケートでは、避難所の密を避けるため、混雑状況をインターネットなどで随時発信し、“見える化”する仕組みを九市町が導入したことが分かった。また、五市町村が「実施予定」と回答した。
 厚木市は、市内全百四十四カ所の避難所のうち、風水害時に開設する五十三カ所について、それぞれの想定収容人数と実際の避難者数を三十分〜一時間おきにホームページに掲載する。所在地や多目的トイレの有無など、避難所選びに役立つ情報も載せる。
 導入のきっかけは昨年十月の台風19号。城山ダム(相模原市緑区)の水位が上がったことから県が緊急放流し、相模川流域の自治体が避難指示や避難勧告を出した。厚木市内では、過去最多の五千七百九人が避難した。浸水想定区域外や川から離れた避難所は収容人数に余裕があった一方で、相模川沿いの市街地や浸水想定区域内にある避難所では訪れた住民に別の避難所に移ってもらう事例があったという。
 市危機管理課の遠藤真課長は「避難所は密になりがちのため、感染拡大防止の観点から避難の前に混雑状況を確認し、なるべく空いている避難先の選択に役立ててほしい」と話す。
 随時発信の「予定なし」と回答したのは十市町。平塚市は「避難所の施設は広く、避難状況によって利用スペースを拡大するため、他の避難所への移動は基本的に想定していない」、大井町は「避難所ごとに地区指定を行っていることなどから、『空いている避難所へどうぞ』というような発信は考えていない」と説明した。
 また、避難所としてホテルなどの宿泊施設を活用するのは十市町だった。「予定なし」と答えたのは十一市町で、多くは「管内に宿泊施設がない」と答えた。 (杉戸祐子、曽田晋太郎)

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