9日、鹿児島県日置市で男女5人が殺害された事件では、岩倉知広被告(41)が殺人などの罪で起訴されています。この事件の裁判員裁判が11月18日から始まりますが、11日、岩倉被告がKTSの記者との面会に応じました。岩倉被告ははじめに殺害したとされる父親について「殺すつもりはなかった、首を絞めて落とそうとしただけ」と殺意を否定するような発言をしました。
11日朝、岩倉知広被告(41)がKTSの記者との面会に応じました。
岩倉被告は2018年、逮捕された当時よりも少し痩せたようすで、伸びた髪を後ろに束ね、落ち着いた表情で面会室に姿を見せました。
18日から始まる裁判について岩倉被告は淡々とした口調で次のように話しました。
岩倉被告
「(事件から裁判まで)これだけ長い期間あったということは裁判官がこの事件についてちゃんと考えてくれたということだと思います」
記者
「裁判が始まるのは嫌ではないですか?」
岩倉被告
「嫌といっても仕方がないことですし、自分の考えを話したい」
2018年4月、日置市東市来町湯田の住宅で、この家に住む岩倉久子さんの親族の女性など男女3人が死亡しているのが見つかり、その後、近くの山林でさらに2人の遺体が発見されます。
岩倉被告は5人を首を絞めて殺害した殺人と死体遺棄の罪に問われています。
死亡したのは岩倉被告の祖母、久子さん(当時89)と父・正知さん(当時68)。そして、正知さんと連絡がとれなくなったとして消息を尋ねに訪れた伯母の岩倉孝子さん(当時69)、その姉の坂口訓子さん(当時72)、それに、被告と同じアパートに住んでいた後藤広幸さん(当時47)の5人にのぼります。
事件の発端は、岩倉被告がテレビを見るために祖母の久子さんの家に行った際に、久子さんに小言を言われ、かっとなって暴行を加えたこととみられています。
これについて岩倉被告は「祖母から『相撲取りみたいだ』と言われたが、それだけではない。前から嫌がらせを受けていた恨みの蓄積もあった」と話しました。
捜査関係者によりますと、岩倉被告は「祖母を殴ったあと、父親が刃物を持ち出してきてもみあいになった。『お前を殺して自分も一緒に死ぬ』と言われた」と供述したということです。
父親への殺意について尋ねました。
記者
「なぜ殺害にお父さんが持ち出した刃物を使わず、首を絞めたのですか?」
岩倉被告
「そんな(殺す)つもりはなかった。(首を絞めて)落とそうと(失神させようと)しただけです」
うつむきながら慎重に言葉を選び、岩倉被告は父親への殺意を否定するような発言をしました。
その一方、祖母と父親以外の親族や知人の印象について尋ねると、岩倉被告はこれまでの恨みや思い込みともとれる言葉を口にしました。
岩倉被告
「根も葉もない噂を流されたり、無視されたり、車に細工をされたり、もしかしたら毒を食べさせられたかもしれない。いたずらでは済まされないことをされた」
事件については「裁判に影響があるので話せない部分も多い」としながらも、雑談には笑顔を見せながら話す場面もありました。
記者
「もし過去に戻れるとしたら、どこに戻りたいですか?」
岩倉被告
「子供のときはしがらみも一切なかった。でもこれまで自分の世界しか知らなかったが、ラジオを聞いたり本を読んだりすることで別の世界を知ることができる。今はとても落ち着いて生活できています」
最後に厳しい判決が予想される裁判について尋ねるとー。
岩倉被告
「判決は裁判官が決めることなので、自分が言えることではない。相手が何をしてきたのかを話さずに終われません。公平に裁判をしてもらえると思うのでありのままを話します」
約30分間の面会の後、岩倉被告は何度も頭を下げて面会室を後にしました。
岩倉被告の裁判員裁判は11月18日に初公判が開かれ、判決は12月11日に言い渡されます。