川辺川ダム、熊本知事容認表明 白紙撤回から12年、豪雨被害に「重大な責任」

西日本新聞 古川 努

 7月の熊本豪雨で氾濫した球磨川流域の治水策を巡り、熊本県の蒲島郁夫知事は19日、県議会全員協議会で、最大支流の川辺川へのダム建設を容認する考えを表明した。現行の貯留型ダム計画の「完全な廃止」と、環境に配慮した「新たな流水型ダム」(穴あきダム)の建設を国に求める。2008年に「脱ダム」へとかじを切った流域は未曽有の災害を経験し、ダム建設を前提に「流域治水」へと大きく転換する。

 蒲島氏は表明の冒頭、県内で65人が死亡し、流域で6千棟以上が浸水した今回の豪雨災害について「知事として重大な責任を感じている」と反省。「二度とこのような被害を起こしてはならないと固く決意し、一日も早い復旧・復興を果たすことを心に誓った」と述べた。

 続いて10月から開いた意見聴取会に触れ、「どの会場でも寄せられたのが球磨川に対する『深い愛情』。『球磨川の清流を守ってほしい』と語られる姿に胸が熱くなった」と心境を打ち明けた。

 その上で被害防止の確実性を担保するため、治水の選択肢からダムを外すことはできない、と判断した経緯に言及。有識者の意見を踏まえて流水型ダムとの結論にたどり着いたとし、「平時には流れを止めずに清流を守り、洪水時には確実に水をためる『流水型のダム』を(治水策に)加えることが、『現在の民意』に応える唯一の選択肢だと確信するに至った」と説明した。ダム構造などについての具体的な説明はなかった。

 蒲島氏はさらに「命と環境の両立」を目指す「緑の流域治水」を理念として掲げ、国に環境影響評価(アセスメント)の実施を求めることも表明。「県や流域市町村、住民が一体となって、事業の方向性や進捗(しんちょく)を確認していく仕組みを構築していく」との考えを示した。20日、赤羽一嘉国土交通相と会談し、治水の方向性について説明する。

 球磨川では過去に相次いだ水害を受け、国が川辺川ダム計画を発表。だが流域で賛否が交錯し、09年に当時の民主党政権が中止を表明。ダムの代替案が費用や工期の面でまとまらないうちに今回の豪雨災害が発生した。 (古川努)

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