『羽毛恐竜』に『血の王』、新発見が続くティラノサウルスの仲間たち

超肉食恐竜ティラノサウルス徹底研究!
小林 快次, MOVE編集部 プロフィール

「ティラノ軍団」1軍メンバーにも変化が

恐竜の特徴とは、これほど細かく定義されていて、これらの違いから、種の違いや系統関係、進化の足跡を確めていくのです。そしてこれらを他のティラノ軍団と比較検討した結果、リトロナクスは晴れて一軍メンバー入りを果たします。

さらにここまでの発見と研究によって、一軍の構成メンバーに変化がありました。

まず、一軍メンバーだったモンゴルのアリオラムスは二軍落ち。それにかわって、これまで二軍メンバーだったビスタヒエベルソルが、一軍昇格を果たしました。また、2011年に中国で発見された大型スター、ズケンティラヌスも無事に一軍メンバー入りしています。

ここでわかったことは、一軍のなかでもスター軍団(ティラノサウルス、タルボサウルス、ズケンティラヌス)の脇を固めているのが、アメリカ南西部発のメンバー(リトロナクス、ビスタヒエベルソル、テラトフォネウス)ばかりであるということ。

2011年にユタ州でテラトフォネウスが発見された際には、その南東400キロの地域に二軍のビスタヒエベルソルが棲んでいたことから、「よもや一軍、二軍の交流戦などは実現していまい……」などと妄想が膨らみましたが、どちらも一軍選手ということになってしまったわけです。

それだけではなく、一軍のスターメンバーと南西部軍団は、カナダとの国境付近の一軍メンバー(ゴルゴサウルス、アルバートサウルス、ダスプレトサウルス)よりも頭が前後に短くて幅が広いという、「進化したティラノサウルスの面構え」を備えていることがわかってきました。言い換えれば、南西部軍団はスターメンバーに限りなく近いということです。

そしてリトロナクスは、南西部軍団の中でもその特徴から、スター軍団に入る一歩手前の存在であることも判明しました。スター軍団の特徴として、目が前に向き、獲物との距離感をしっかりとって襲っていたことがわかっていますが、このリトロナクスの目もスター軍団と同様に、前を向いていた可能性があったのです。

* * *

この連載の続きは、メルマガ「MOVEファンクラブ通信」で11月20日(金)に配信予定です。

今すぐメルマガに登録するにはこちらから。

〈小林先生監修&著書のMOVEシリーズ〉

『恐竜 新訂版』
2015年、2016年の最新の発見も網羅した、恐竜図鑑。画期的な羽毛恐竜クリンダドロメウスや飛膜をもったコウモリのような恐竜イー、2016年に発表された日本の恐竜フクイべナトルなど、最新情報がもりだくさん!
 
『恐竜2』
370万部の大人気学習図鑑シリーズを牽引する「恐竜」の最新研究を徹底紹介した図鑑が登場! ティラノサウルス徹底研究、最新恐竜図鑑 2016年から2019年に発見された主な恐竜を紹介。ほかの図鑑には掲載されていない恐竜も多数掲載!
 
『MOVEmini 恐竜』
最新の情報が豊富に掲載された、いちばん新しい恐竜図鑑! ポケットサイズながらも、美しいイラストや迫力のある写真で、臨場感あふれる恐竜図鑑になっています。2018年や2019年に発表された、ハルシュカラプトルやボレアロペルタ、バハダサウルスなどの新種の恐竜も掲載。
『はじめてのずかん きょうりゅう』
脳医学者がつくった「賢い子」を育てる 画期的図鑑の第二弾! ファースト恐竜図鑑として、おすすめです。肉食恐竜ティラノサウルス、スピノサウルスから植物食恐竜トリケラトプス、ステゴサウルスまで人気の恐竜を網羅。
 
『ぼくは恐竜探険家!』
「はやぶさの目」とよばれる、気鋭の恐竜学者・小林快次氏が恐竜学者としての道のりを、恐竜少年とよばれた少年時代から、「はやぶさの目」とよばれ、数々の大発見をなしとげるようになった現在まで、あますところなく語りつくしました。これからの恐竜研究恐竜学者にあこがれる子ども達の必読書です!