恐竜の特徴とは、これほど細かく定義されていて、これらの違いから、種の違いや系統関係、進化の足跡を確めていくのです。そしてこれらを他のティラノ軍団と比較検討した結果、リトロナクスは晴れて一軍メンバー入りを果たします。
さらにここまでの発見と研究によって、一軍の構成メンバーに変化がありました。
まず、一軍メンバーだったモンゴルのアリオラムスは二軍落ち。それにかわって、これまで二軍メンバーだったビスタヒエベルソルが、一軍昇格を果たしました。また、2011年に中国で発見された大型スター、ズケンティラヌスも無事に一軍メンバー入りしています。
ここでわかったことは、一軍のなかでもスター軍団(ティラノサウルス、タルボサウルス、ズケンティラヌス)の脇を固めているのが、アメリカ南西部発のメンバー(リトロナクス、ビスタヒエベルソル、テラトフォネウス)ばかりであるということ。
2011年にユタ州でテラトフォネウスが発見された際には、その南東400キロの地域に二軍のビスタヒエベルソルが棲んでいたことから、「よもや一軍、二軍の交流戦などは実現していまい……」などと妄想が膨らみましたが、どちらも一軍選手ということになってしまったわけです。
それだけではなく、一軍のスターメンバーと南西部軍団は、カナダとの国境付近の一軍メンバー(ゴルゴサウルス、アルバートサウルス、ダスプレトサウルス)よりも頭が前後に短くて幅が広いという、「進化したティラノサウルスの面構え」を備えていることがわかってきました。言い換えれば、南西部軍団はスターメンバーに限りなく近いということです。
そしてリトロナクスは、南西部軍団の中でもその特徴から、スター軍団に入る一歩手前の存在であることも判明しました。スター軍団の特徴として、目が前に向き、獲物との距離感をしっかりとって襲っていたことがわかっていますが、このリトロナクスの目もスター軍団と同様に、前を向いていた可能性があったのです。
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