2012年に発表されたユティラヌス・フアリ(Yutyrannus huali)は、世間の大きな話題をよびました。なぜならこの恐竜は、大きな体を羽毛が覆っていたからです。
発表時の論文のタイトルは、「中国の白亜紀前期の地層から発見された巨大な羽毛恐竜」。全部で3体の化石が見つかっていて、一番大きなもので全長9メートル、体重が1.4トン(1414キロ)。この時代のものとしては、ティラノ軍団の中でもかなり大きく、重い種です。他の2体は亜成体のもので、どちらも体重500キロほどでした。時代はエオティラヌスやディロングと同じ、白亜紀バレミアン期(1億2940万年前~1億2500万年前)。
このユティラヌスの特徴は、頭の鼻筋の部分にある半月状のトサカです。ただし、頭にトサカがある恐竜の発見はこれが初めてではなく、たとえばティラノ軍団・二軍メンバーのグアンロンにもトサカがあります。
ただ、ユティラヌスは比較的大きいサイズの持ち主でありながら、残念ながら一軍メンバーには入れず、二軍メンバーということになりました。なお、中国ではティラノサウルスの仲間以外にも、こうした「羽毛恐竜」の化石がたくさん発見されています。
そしてところは変わりますが注目したいのは、2013年にテラトフォネウスと同じユタ州南部の国立公園内で発見された、リトロナクス・アルゲステス(Lythronax argestes)です。棲息した時代はテラトフォネウスよりも少し古く、7990万年~8060万年前のカンパニアン期中期。
リトロナクスの名前は、「lythron」は血、「anax」は王を意味するので、さしづめ「血の王」ということになります。テラトフォネウスの「殺戮モンスター」に負けず劣らず、なにやら物騒な命名ですね。
この時に発表された、「暴君恐竜の進化は、白亜紀後期の海の上昇と下降を追跡する」とのタイトルがつけられた論文では、テラトフォネウスの特徴にいくつかの修正がくわえられました。大まかには次の2点です。
非常に細かい修正で読者のみなさんにはピンとこないかもしれませんが、これも恐竜学においては重要な情報です。一方、リトロナクスはというと、以下のような特徴が挙げられています。