参院選の不平等 抜本改革の約束どこへ

2020年11月19日 07時21分
 一票に最大三倍もの格差があった昨年の参院選をめぐる裁判で最高裁は「合憲」と判断した。中途半端な合区では一票の不平等はなくならない。抜本改革に消極的な政治の怠慢を許してはいけない。
 「鳥取・島根」と「徳島・高知」をそれぞれ一つの選挙区にする合区が二〇一五年に導入された。四・七七倍あった格差は一六年の参院選では三・〇八倍に縮小した。この改正を評価し、一七年の最高裁は「合憲」判断を出した。
 しかし、抜本改正はここまでだ。改正時に「選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討し、必ず結論を得る」と約束していたのに、それは果たされず、昨年夏には三・〇〇倍の格差が残った。
 最高裁が今回「合憲」としたのは、まず合区が維持された点だ。議員一人当たりの有権者数が最多だった埼玉の議員定数を増やした公選法改正を評価したためでもある。だが、これは場当たり的な微調整だ。だから福井の一票に比べ、宮城の一票の価値は〇・三三票分しかない不平等が残った。最高裁判事十五人のうち、一人は「違憲状態」、三人は「違憲」との反対意見だった。
 憲法の要請は、有権者が同じ重みの一票を投じ国会議員を選ぶことではないのか。そうでないと主権者として平等に国政に関与できない。とくに憲法改正が呼び掛けられる状況下では、一議席の重みは格別である。改憲発議ができる三分の二以上か否か、その議席数は国民の意思を正確に反映した数字であるべきだ。
 あくまで選挙時点での著しい格差を「違憲」と言わず、将来の「政治の努力」に対する期待込みで司法がお墨付きを与える構図は、もはや主観的とも映る。
 衆院だと二倍、参院だと三倍程度の格差ラインを目安に司法判断しているとさえ思える。衆院と参院はほぼ同一の権限があるのだから、参院だけ格差が著しくていいはずもない。
 政治が抜本改革に乗り出さずとも是正の姿勢さえ見せれば、司法が斟酌(しんしゃく)してくれるようなメッセージさえ与えうる。これでは不平等はなくならない。政治家は利害当事者だから、司法こそもっと厳しくあるべきなのだ。
 目指すべき道は見えているはずだ。少なくとも参院選では格差が起きにくいよう、全国を大きなブロックに分けた選挙区にすることだ。選挙は民主制の命綱であるゆえ、その実現を求めたい。

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