ジェイコム男 B・N・F さんの名言集
1.「週刊新潮」2005 年 12 月 29 日号
?株をやり始めたのは、6 年くらい前からです。
最初の元手は 100 万円。
自分でアルバイトをして貯めたお金です。
?でも、株の勉強を特別にしたわけじゃありません。
株の売買はどうやったらいいかが分かる程度の本を 1 冊読んだだけです。
ちょうどネット証券が始まったばかりだったので、あんまり本とか読んでも意味がなかったんですよ。
自分で運用しているうちに、自然と身についた感じですね。
いや、別に数学とか得意だったわけでもないですよ。
ほら、ネット証券が始まって手数料も安くなったでしょ。
時間もあったし、それじゃあやってみようかなと思ったのがキッカケかな。
ネットのおかげで短期売買もやりやすくなったですしね。
?2001 年の初めに、元手を 300 万円に増やしました。
で、その年末には 6000 万円くらいになったかな。
それから半年後には瞬間的に億までいきましたが、その後すぐに損をして、02 年の年末にようやく 1 億円を超えました。
で、03 年半ばから相場も上げ調子になってきたので、それに乗って年末には 3 億ぐらい。
さらに 04 年に 10 億までいきましたよ。
今年は 9 月に上げ相場になったんで、そこそこですかね。
実は、ジェイコム株以外でも、東証一部の大型株に乗って結構儲けたんです。
銘柄ですか?
まあ、銀行株とかですね。
?ジェイコム株の初値予想は 100 万円くらいでした。
だいたい IPO(新規上場株)は初日にチェックしてるんですけど、100 万以下なら買いかなと思ってたんです。
なので、67 万 2000 円の初値がついた時点で大量に買おうと思ったら、いきなり 57 万 2000 円のストップ安でしょ。
これは買いだと思いましてね。
まあ、100 万くらいまでは上がるだろうと思って。
?でもね、今回の儲けはそれほどでもないですよ。
単一銘柄での儲けとしては確かに大きいですが、20 億なんて、今年 1 年の利益からすれば 3 分の 1 とかそんな程度ですよ。
だって 60 億くらい儲かってましたから。
?ただね、一日中ネット取引をやるのはものすごい緊張感があって、精神的にかなりキツイんですよ。
だから、今後もやめないとは思うんですが、投資額は減らそうと思ってます。
?まあ、この家は自分が買ったんですが、今はとくに欲しいものはないんです。
というか、金の使い方がよく分からないんですよ。
ある意味、ゲーム感覚で儲けたようなもんですからね。
2.「AERA アエラ」2006 年 1 月 2 - 9 日号
?ジェイコム株は安かったから買っただけです。
これまでにも 1 日で 2 億 5 千万円もうけたこともあったし、逆に 1 億 6 千万円損した日もあった。
?(投資術を)言葉で説明するのは難しい。
株取引を始めた 5 年前の下げ相場と 2005 年のような上げ相場では扱っている銘柄も数もやり方も違うし、市場に参加して独自で学んでいったので、お手本というのもないです。
?05 年のような株式市場全体の上げ相場では大型株の循環物色。
今日は造船とか銀行とか、その日に盛り上がっている業界の売買をしている。
?(判断の基準は)感覚というか慣れ。
トータルの値動きへの洞察力が一番大事。
日経平均や先物市場の動きを見ています。
?(株価収益率 (PER) や株価純資産倍率 (PBR) については)まったく見ないです。
長期保有だったら意味があるかも知れないが、短期の売買では下がるときは下がるし、上がるときは上がる。
業績のいい企業の株でも下がったら負け。
気にしてもしょうがない。
株価に織り込まれている。
?もうかっても、損しても精神的にかなりきつい。
やっててつらいんです。
1 回この世界に入ったら、何をしていても株で頭がいっぱいになる。
やめたいのに、やめられない。
?家族からも「やめたら」と言われる。
でも、いつでも値動きがある。
もうけのチャンスがそこにあるのに、失うこともつらい。
出来たはずのことをしなかったことで仕事放棄のような気がしてしまうんです。
?(もうけたお金は)数字が増えていっただけで、あまり実感がありません。
この家を買ったくらいで、ほかには使っていないですね。
?この頃(2000 年 10 月)はもうけるのが楽しかった。
?楽しかったのはこの頃(2002 年)まで。
それからはプレッシャーでつらくなってきた。
?(2003 年 5 月から)時代が良くなった。
流れに乗っていけばよかった。
?(休日のストレス解消法は)散歩くらい。
株のことを忘れたいんです。
?普通の子どもでしたよ。
?(成功の秘訣は)自分では分からない。
時代が良かっただけ。
ネットトレーディングが始まったばかりで、始めた時期が良かったんだと思います。
?他人の資金を動かすようなファンドは絶対にやらない。
株のことは忘れたい。
でももうかっているうちはやめられない。
大損するまでやめられないのでしょうね。
3.「週刊文春」2006 年 1 月 5 - 12 日号
?ほかにも前日から取引を持ち越していた銘柄がいくつもあり、ジェイコム株は新規公開株なので「見てた」ってだけです。
百万円ぐらいかと思ったら六十七万二千円で値がついたので、安いと思って最初は五十株ずつ何回か買った。
?九八年に NHK スペシャル「マネー革命」を観て、海外の投資家が個人で凄い金額を稼いでいるのに衝撃を受けました。
その後、“これから株が上がる”という景気のいい見出しの本を立ち読みして株をやってみようと思った。
最初は郵便のバイトやお年玉などで貰った百数十万円が元手でした。
?常時保有しているのは十~三十銘柄で流動性のある大型株が中心です。
日経平均先物で全体の流れを見ながら色んな銘柄を物色する。
相場が悪いときはリバウンド狙いです。
?(株は)楽しくないですね。
辛いだけなんです。
お金を持ったっていっても、結局こうやって(画面を指して)数字が増えただけじゃないですか。
ケチですし、損することも考えているので無駄に金を使いたくない。
翌日の取引に平気で六、七十億円持ち越すので、朝から一億円損したりする。
何十億円儲けてても凄く辛いんですよ。
でも、相場が動いているのに無視すると“仕事放棄”みたいじゃないですか。
それはそれで辛い。
?(「証券会社に勤めれば?」と聞かれて)人のお金はもっと辛いですよ。
仕事するにしても株関係は絶対やりたくない。
本とかも絶対書きたくないし。
頭の中「株、株、株」でとにかく株から離れたいので経済番組も絶対観ません。
大体、株で何十億円も動かすので他のことが小さなことに思えてピンとこない。
最初から株を知らない方が良かったかもしれない。
4.「週刊ポスト」2006 年 1 月 13 - 20 日号
?株投資で特別なことは何もしていません。
日経新聞はパラパラと目を通す程度で、とらなくてもいいと思っているほどだし、投資関係の雑誌もまったく読みません。
「会社四季報」の情報やニュースをインターネットで見るくらいですね。
?(株投資のきっかけは)ネット証券ができてきて、個人でも売買がしやすくなったこと。
?(ジェイコム株を)誤発注と知って買ったわけじゃありませんでした。
ジェイコムの初値予想は 100 万円くらいだったのが、ストップ安の 57 万 2000 円をつけたので、安いと思ったのです。
でも、05 年は 1 年で 60 億円以上の利益が出ているから、ジェイコム株での儲けは、自分では“すごい”という感想はありませんね。
?00 年 ~ 02 年当時は、全体的に株価が下落トレンドにあった時期でしたが、それでもスイングトレードなら利益が出せました。
株価が下降する時でも、一本調子で下げるのではなく、下げてはある程度値段を戻すというのを繰り返して、波を作っていく。
その下がった後のリバウンドを狙って買っていたのです。
具体的には、ランキング情報を見て、25 日移動平均線より株価が大きく下回っている銘柄を選ぶのです。
当時は、兼松、日商岩井(現・双日)、住友重機械工業、井関農機など、25 日移動平均線との乖離率が 60 ~ 70 % もある株が多くありました。
それらのような下がりすぎた株を買って、一時的に反発したところで利益確定していったのです。
?今の上昇相場では、超大型株を中心に取引しています。
売買高ランキングを参考にして銘柄を選んでいますね。
例えば、三菱 UFJ や住友金属工業などです。
この相場では超大型株を選べば、普通は儲けられると思います。
あと、大事なのは損切りを早くすることでしょうか。
僕自身は、想定より下がった場合には、上がるまで待つことはせず、早めに損失を確定させています。
?朝は 8 時 15 分に起きて、先物相場の動向や、米国株の状況を確認したりします。
もちろん、マーケットスピードで、扱っている銘柄の株価情報も見ます。
新聞やテレビは見ませんね。
あとは、9 時になったら、注目している銘柄の売り時や買い時を見つけて、取引するだけです。
午前の取引が終了する 11 時過ぎに遅い朝食をとって、午後も同じように取引をします。
15 時を過ぎたら、その日のニュースをネットで確認。
1 時間ほどその日の反省をしますが、16 時以降は株のことは考えないようにしています。
テレビゲームもやりませんし、近所に散歩に行くくらいですね。
?車は家族が運転するもので、僕はペーパードライバーなので運転しません。
食事も普通です。
家にあるものを食べることがほとんどですね。
服も地元のダイエーで買います。
?僕自身は、クレジットカードも持っていないですし、お金はほとんど持ち歩いていない。
現金は普段見ないようにしているんです。
時には数千万円単位で損失を出すこともあるので、いつも現金を見ていると“あんなに損をしたのか”と精神的なダメージが大きくなるからです。
?僕が株で稼いでいることは、ほとんど誰にも伝えていませんから(女性がいい寄ってくるなど)ありませんね。
こういう生活をしていると友人とも疎遠になりますから。
合コンなんかも特に行かないし。
(彼女はいる?)そのへんはプライベートなので……。
?もう 3 年前から株取引自体は、面白いとは思わなくなっています。
ただ、これが僕の仕事だと思っていますので、やり続けているのです。
もちろん、やめることもできるでしょうが、じゃあ、やめて何をするのかと考えてみても、思いつきません。
僕のような若者のことを「ネオニート」などと呼ぶらしいのは知っていますが、別に、その呼ばれ方については特に感想はありませんね……。
5.「週刊現代」2006 年 1 月 21 日号
?株式投資をやめようと思ったことは何度もあります。
資産が 80 億円になった今でさえ、「朝のたった 10 分間で 1 億円を損するかもしれない」リスクとプレッシャーで押しつぶされそうになる。
正直、精神的にきついです。
やめればいいんですが、そうすると儲けるチャンスを自ら放棄して 1 億円損をした気分になるので、それもきつい。
どっちもきついなら、株をやり続けるしかないなぁって感じです。
?ジェイコムの一件もあって、昨年は年初の約 10 億円の資産を 12 月末にはだいたい 80 億円に増やすことができました 。
ジェイコムだけじゃないんですよ。
他の銘柄で儲けた額のほうが多いです。
資産が約 80 億円といっても、僕の場合は実業で稼いだワケではありませんから、「資産」といえるかどうか。
この先ゼロになるリスクもあるし、先のことなんてわかりませんね。
?ジェイコム株を買ったのは、安かったから。
それだけの理由です。
みずほ証券による誤発注があったなんて、そのときは知りませんでした。
(12 月 8 日に)新規上場したジェイコムの公募価格は 61 万円で、初値は 100 万~ 120 万円くらいにはなると思っていました。
それが公募価格を下回っていたので、安いなぁと。
「おかしい」というより「安い」という判断です。
安くなければ絶対に買いません。
楽天証券で 2950 株、他の 2 社で 4150 株、3 社合計で 7100 株購入しました。
「ひとつの銘柄に 34 億円を投資するのは怖くなかったか」とよく聞かれますが、ぜんぜん怖くありませんでした。
?今回の件では、そもそも証券会社の誤発注が通るシステムに問題があると思っています。
警告が出るだけじゃなくて、(売買自体を)執行停止にするべきでしょう。
証券会社があんな(61 万株と多い)注文を出せることがおかしいんです。
もし個人が発注を間違えても「間違えました」では通らないし、無茶な注文も受け付けてもらえない。
証券会社には無制限にカラ売りが許されていることも不公平に感じます。
個人投資家はカラ売り規制があって、61 万株もの莫大な売り注文は出せませんからね。
欠陥のあるシステムのせいで間違いを起こしてしまった証券マンもかわいそうですよ。
?株式投資を始めたのは 5 ~ 6 年前の大学在学中でした。
当初 140 万円から始めたんです。
バイトして貯めたおカネとか、子供の頃から貯めていたお年玉とかが元手ですね。
最初は株関係の本を何冊か読みましたが、そのころはネット取引自体まだ歴史が浅く、参考になりそうな本はほとんどありませんでした。
今でもアナリストの銘柄レポートも、マネー誌や経済誌も読みません。
他人の意見に影響を受けるのがイヤなんです。
ですから、ボクのスタイルは、あくまで実践を繰り返すなかで覚えていったものです。
?世間ではネット投資家というと、みなひと括りに「デイトレーダー」と呼ぶ傾向があるけど、僕の投資スタイルは 1 日~ 1 週間程度で売買する「スイングトレード」です。
株をホールドする期間は長くても、せいぜい 10 日間。
たいがいは 2 ~ 3 日のサイクルで売買します。
「下がったら買って、上がったら売る」の単純作業の積み重ねです。
ムダな売買をやっていることも結構多いし、買った銘柄が予想以上に上下して、結果的に一日で手仕舞いする“デイトレード”になることはありますけどね。
?02 年末には、最初の 140 万円が 1 億円ほどになっていました。
その時点で、就職せずにこのまま株取引をやっていこうと思ったんです。
とりあえず 25 歳まで、これを続けようと。
ダメだったら、就職しようという考えだったんです。
?大学では特に経済や金融を学んだわけではありません。
両親からは「株なんかやめて、早く就職しろ」と言われてましたね。
資産が 3 億円くらいになったときも、父親から「どうせいつかは損をするんだから、早くやめたら」と言われていました。
?僕が株を始めたのは、IT バブル崩壊後の下げ相場からです。
もっとも下げ相場といっても、決して一直線に下がるわけじゃありません。
一定の下値に達したら、リバウンドで上昇するのが普通です。
当初は下げ相場のなかで、下値に達したと思われる銘柄を買って値上がりを取っていくスタイルでした。
01 年前半はこのやり方を繰り返してある程度儲けましたが、後半は損することが多くて精神的にもきつかったですね。
このときに起こったのが、9・11 の米国同時多発テロです。
あのときは KDDI とか日本テレコムとか通信株をたくさん持っていましたけど、これらが軒並みストップ安になってしまって本当に参りました。
?引き続き 02 年も相当苦しかった。
この年は前半こそ儲けたものの、後半の半年で儲けた分を帳消しにしてしまいました。
結局、資産は横ばいのままでしたね。
このころは米国株と日本株の連動性が強くて、乱高下する米国株価にずいぶん振り回されました。
米国市場の動きが気になって、朝の 5 時、6 時まで相場をにらんで、2 時間寝たら日本株にかじりつく??そんな時期もありました。
きつくて、もうやめようと思ったのも、そのころです。
このような下げ相場のときをくぐり抜けているので、株がいかに厳しい世界であるかは自分なりに理解しているつもりです。
?03 年の 5 月からは相場も上げ基調に変わり、機関投資家が大型株に投資する流れに乗っていっただけです。
それ以降はだいたい儲かっています。
?僕の投資スタイルは短期売買が大前提で、長期の株価予想はしません。
一日の予想が当たればいいんです。
つまり、一日の相場予想を着実に当てて、それをコツコツと積み重ねていく。
30 日続けば、結果的に 1 ヵ月の予想が当たったことになる。
長くてもせいぜい 1 週間単位の予想ですね。
昨年のように中期的に見ても大幅に株価が上昇した相場では、短期売買を繰り返すよりも中長期でじっくり持ってから売ったほうが結果的に儲かったでしょう。
でも、これが僕のスタイルですから変えるつもりはありません。
?上げ相場と下げ相場では、投資法が若干変わってきます。
上げ相場では個別銘柄の出来高推移、場中の板情報、日足チャートを中心に見ますね。
基本的にはチャート重視です。
利益確定売りや損切りのタイミングについては自分なりのルールが何パターンかありますが、詳しいことは言えません。
ライバルも多いですからね(笑)。
?取引は日本株のみです。
投資信託は手数料が高いし、短期でやるものじゃありませんから興味はありません。
外国株もやらないですね。
米国株なら多少はわかりますけど、中国株やインド株なんてさっぱりわからない。
基本的には、わからないものには手を出さないことにしています。
?昨年の前半は、IPO 銘柄だった通信会社の日本通信とオンライン・ゲーム会社のガンホー・オンライン・エンターテイメントで大きく儲けることができました。
二つの初値はそれぞれ 7 万円と 420 万円でそれほど高くなかったんですが、その後、連日の高値更新で急騰したんです。
この二つで数億円の資産を作ったのが大きかった。
その後の相場で大量の資金を投入することができましたから。
?8 月からは大型株で儲けました。
銀行、造船、鉄鋼、商社などの大型株はチャートを見れば一目瞭然で、直角的に値上がりしました。
住友金属工業なんか、8 月から 10 月までの 2 ヵ月間で 200 円台から 400 円台に急騰しています。
昨年の 8 月以降は相場の流れに乗り、大型株の売買を繰り返して儲けた形です。
?場中はずっとパソコンに張りついているので後場が終わったら、もう株のことは忘れたいんです。
とはいっても、これといった趣味もない。
たぶん株の刺激が強すぎて、ほかのことにはあまり興味が向かないんですかね。
気分転換といっても、ふだんは近所を散歩するくらいです。
学生時代に陸上競技をやっていたので、テレビで陸上競技やサッカーなどスポーツの試合を見るのは好きです。
お酒は自分から飲もうとは思いません。
彼女?
ノーコメントです(笑)。
?儲けたおカネを何に使うかと聞かれても、よくわかんないんですよ。
大きい買い物と言っても、家とクルマくらい。
トヨタのマジェスタを買ってはみましたが、ペーパードライバーなので乗っていませんし(笑)。
?株で儲けた僕が言うのもなんですが、やはり他人には株は勧められないですね。
特にサラリーマンのみなさんはやらないほうがいい、そう思います。
一度でも株をネットで始めると株価が気になって仕事に手がつかないんじゃないですか。
しかも、厳しい世界ですから、一時的には儲かっても結局、大損するまでやめられない人が多い。
?僕自身もいずれ株から身を引くときは、きっぱりやめるしかないと思います。
でも、本当にやめるとなると、さっき言ったようにみすみす儲けるチャンスを捨ててしまったという後悔の念にとらわれると思うんです。
続けるのもつらいし、やめるのもつらい。
どっちをとってもつらいのが株なんですね。
始めちゃったものは仕方がないんですが。
?昨年はかなり儲けましたけど、資産が大きくなればなったで、一日で 1 億円儲けるチャンスもあれば、一日で 1 億円損するリスクもある。
決してラクではないんです。
昨年 8 月以降、相場は急激によくなりましたが、こんな状態がいつまで続くかはわかりません。
この先もうしばらくはいい相場が続くでしょうが、これだけ水準が上がってくると下がるリスクもこれまで以上に高まってくるでしょう。
?相場は生きものなので、今のやり方がこれからも通用するとは限りません。
1 年後には今の方法が通用しなくなることも十分に考えられます。
とはいっても、何度も言ったように僕はしばらく株をやめられないでしょう。
ただ、今年は投資に振り向ける資産を少し減らそうとは思っています。
これだけの資金をフルで投資に向けるのは、正直しんどいです。
?将来どうするかって?
3 年後のことさえ何も考えていませんよ。
ただ、ファンドマネージャーにはなりたくないですね。
自己資金を運用するだけで精一杯でこんなにつらいのに、他人のおカネを運用する気にはとてもなれませんから。
6.「FLASH フラッシュ」2006 年 1 月 24 日号
?誘拐が怖いから顔は出しません。
?インテリアとか関心がないんですよ。
ゲーム?
昔はやりましたけど今は興味がないですね。
暇もないし。
だって、午後 3 時に市場が終わると、どっと疲れるんですよ。
それくらい精神の消耗が激しいんですよ。
?あの日はほかの株を見ていたら、新規上場のジェイコム株が目にとまったんですよ。
目に飛び込んできた株価は 53 万 2 千円。
ええっと思いました。
150 万円ぐらいを想像してましたから。
とりあえず 50 株買ってみたんです。
さらに 50 株買って。
するとまだ買える。
変だなぁと最後に思ったところでその日の相場が終わったんですね。
夜、ニュースを見るまで騒動は知りませんでした。
ああ、みずほがミスったんだなぁと。
22 億円といっても通知があって口座に金が振り込まれただけなんで、実感が湧くのはこうやってマスコミが押し寄せてくることぐらいですね。
でもそれどころじゃないんで(マスコミには)対応しないんですけど。
毎日株ばかりで精神的に苦しいし、常識もよくわからないので対応できないんです。
?(大学時代に株取引を始め)意外と利益が出てこれだけで生活できるじゃないかと。
就職もパスしました。
?株なんて知らなければよかったなんて思うこともあります。
寝ボケた頭でモニターの前に座ったら、いきなり 1 億円損してたなんてふつうですからね。
1 億円損したら、ほんとヘコむんですって。
何をやっても気分が晴れない。
三菱自動車をダイムラーが売却したときは、あおりで 1 億 3 千万円赤になって眠れなくて……。
けっきょく儲けるしかないんですよ。
本当に辛い……。
?必勝法を知りたい?
僕の言うことを聞いて損したらどうしようもないでしょう。
実践あるのみ。
それで自己流を身につけるしかないんです。
僕は世の中の動きはニュースを見ないので知りません。
よけいな情報はいらないから。
見るのは、株価のモニターだけです。
具体的には先物相場の株価。
すべては数字に出る。
チャートを観察していれば本当によく分かりますよ。
それについていくだけなんです。
六本木ヒルズですか?
興味ないですね。
贅沢品といえば、この家くらいですかね。
趣味は株かなぁ。
旅行も行きません。
酒を飲んでいても株価が気になるんで。
昔は 2 ちゃんねるにも書き込んでたんですが、しなくなりましたねぇ。
将来は本屋さんがいいな。
好きな本を読みながら一日過ごせそうで。
親からも早く株をやめろと言われてるんですが、なかなかやめられないんですよ。
7.「日本経済新聞」2006 年 1 月 21 日付
?みずほ証券のジェイコム株誤発注で二十億円稼いだ、千葉県市川市の個人投資家 (27) も「十七日から二日間で四億円を損した。上げ相場に慣れ切っていた」と話す。
8.「朝日新聞」2006 年 1 月 24 日付
?昨年末のみずほ証券の誤発注で、20 億円余りをもうけた個人投資家が、ライブドア騒動では 3 億円以上の損を出した。
東京証券取引所が全銘柄を売買停止にするという緊急措置が響いたという。
?この個人投資家は千葉県市川市に住む無職の男性 (27)。
ライブドア株 55 万株や関連会社のダイナシティの株は、たまたま強制捜査の前に売り抜けていた。
しかし、強制捜査後、個人投資家のろうばい売りが殺到し、約定件数が急増して、東証は予定の 3 時より 20 分早く全銘柄を売買停止。
ジャスダックなどでは IT 関連株も軒並み急落。
男性も売り注文を出したが、取引が成立しなかったという。
?男性は 5 年前の大学在学中に 160 万円足らずの資金で株取引を始め、IT 関連株などで 100 億円超の資産を築いた。
みずほ証券の誤発注の際に 20 億円を稼いで注目を浴びた。
?今回の損失額は 5 年間で最も大きかった。
「上げ相場の感覚だった。頭を切りかえて対応すべきだった」と悔やんだ。
9.「週刊文春」2006 年 2 月 2 日号
?いやあ、今日(ライブドアショックの一月十八日)は苦しかった。
過去最大の損失でした。
(損失の額は)……三億円ぐらい。
?日経平均は年初から横ばいでしたが、新興市場がすごく良かった。
だからこの辺の銘柄(パソコン画面上の新興企業銘柄群を指して)を買っていた。
まあ、ここ一年、相場が良かったので、悪かったときのことを忘れていたんです。
前日(十七日)朝も大きい損失を出したけど、引けにはマイナス九千万円ぐらいまで戻していたので、持ち続けずにそこで収めておけばよかった……。
?堀江(貴文)さんは相場に関係ないんじゃないですか?
相場は自己責任ですから。
例えば資金のうち八十億円を昨朝(注:明朝?)に持ち越し、一パーセント下がれば八千万円の損失の世界ですから。
10.「sabra サブラ」2006 年 2 月 9 日号
?ジェイコム株は誤発注とは気づかなかったんです。
前評判よりかなり安くなったから買っただけで。
?(「資産があっても、一度にジェイコム株 34 億円の注文は普通の人は出せない」と聞かれて)そうかもしれません。
なぜ多額の注文を躊躇なく出せるのか聞かれますが、心理が関係してると思います。
僕は、大学生から株を始めて、卒業前にはすでに 1 億円以上持ってました。
そこまで増やせた理由は、学生だったから、としか言えません。
いつも、株でお金がなくなっても就職すればいいや、という気持ちでしたから。
今もそうですが(笑)。
もし、僕に扶養家族がいたら大きな取引はできなかったでしょう。
?(「お金の感覚が麻痺しているのでは?」と聞かれて)それも違います。
なくなってもいいと思っていれば、大きなリスクが引き受けられるんです。
株取引では本当に気持ちが重要です。
そこを理解せずに、単に、株で儲けた人の本を読んでマネても役に立たない。
たとえば、損切りでも、取引している資金量や、その金額がおよぼす個人の感情の変化によって判断基準が変わってきます。
その感情の変化は、儲け本を書いている人とは全然違う。
結局、自分に合った方法でしか儲けられないんです。
僕も、IT バブルのときには大損したし、試行錯誤しています。
努力しないで儲けることはできません。
11.「週刊ダイヤモンド」2006 年 2 月 11 日号
?プロだったら慎重になり過ぎて失敗する局面でも、自分は素人同然だから強気を押し通せる。
?無理に背伸びをせずに、自分にしっくりくる投資法で、腰を据えて取り組むのが王道。
12.「週刊 SPA! スパ」2006 年 2 月 21 日号
?やめられないんです。
中毒なんですよ。
いくら儲かっても損することのほうがショックで、すぐに取り返したくなる。
だから一日が長いんです。
長くて、本当に辛いんです。
大損するまでやめられないでしょうね。
もしやめたとしても、日経平均が上がるのを見て、その分「損した」と、また自分が辛くなるのがわかってますから。
?大きな買い物はこの家と、新車のマジェスタ、パソコン 3 台ぐらい。
お金を使うの好きじゃないし、使い方もよくわからない。
今は株のことで土日も頭がいっぱい。
人といても落ち着かないから、外出も近所を散歩する程度。
今一番の望みは、株をやっていなかった学生時代のような、普通の暮らしがしたい。
?就職しないまま実家でパラサイト生活ですし、「株ニート」と批判されても、製造業で伸びてきた国ですから仕方ないでしょう。
13.「Diamond ZAi ダイヤモンド・ザイ」2006 年 3 月号
?(個人情報が)出てしまったのはしょうがないけど、慣れていないので急に取材が殺到して、正直精神的につらい時期もありましたね。
ええ、ZAi は読んだことありますから。
?(ジェイコム株は)予想初値が 100 万円と言われてましたから、気配値の 67 万円程度じゃ寄り付くわけないと思って見てたんです。
そしたらいきなり寄って、しかもどんどん安くなっていく。
これはチャンスだと思って 50 株ずつ買っていったんです。
?予想していた値段の半値だったから思い切り買えた。
?市場全体を見渡して、その時々で資金がきている銘柄を買ってるんです。
鉄鋼、商社、自動車、銀行……こういう銘柄は循環で物色されてますから、その時々の波に乗るっていうか。
あとは全体の動き。
日経平均先物を見ながらイケそうだったら多めに買うし、ヤバそうだったらすぐ降りる。
上げてもいないのに長期で持つことはまずないです。
手法といえるのはそれだけで、まぁ始めた時期が良かったんでしょうね。
?精神的にかなり辛いです。
NY 市場が下げていると、それだけで数億円損するわけで、朝から滅入りますよ。
そんな心配を毎日毎日。
もう株なんてやめたい、でも市場が開いているのにやらないのも(儲けるチャンスを逃すことになるので)辛い。
やってもやらなくても辛いから、しょうがなくやってるんです。
14.「月刊宝島」2006 年 4 月号
?部屋数ですか?
数えたことはないですね。
?今日は 1 億 3000 万円負けちゃいました。
ホント下手くそというか……。
?洋服には興味がないから。
?子どもみたいなものしか食べられない。
カレーとかハンバーグとか。
生魚?
ありえない。
?地合がいいから儲かっただけ。
?1 日 1 億損するか得するか、そんなところ。
一日 20 億円も稼げばアドレナリンが出るけど最近はないし、もうつらいだけ。
?目の前にエサがあるのにみすみすやめられない。
?やめられても、相場が上がっているのを見れば損した気分になって余計つらくなる。
15.「月刊 CIRCUS サーカス」2006 年 4 月号
?実は僕の元手、子供の頃から貯めてたお年玉と、大学時代にバイトで稼いだものなんです。
?2000 年に、当時まだ盛んじゃなかったネットトレードに興味を持ったんです。
次第にバイトより簡単に儲かることに気付き、就職も考えなくなった。
?これ(8 時 20 分に出始める気配値)を見ながら日経平均の動きをイメージすることが大事なんです。
寝坊しないために目覚ましを 3 つ、5 分おきにセットしてます。
でも、夜中に米国市場が気になって、朝方に寝ても、この時間には勝手に目覚めてしまいますが……。
米国市場が下げていると、それだけで数億は損します。
そんな日は朝から気が滅入っちゃうので、最近はあまり見ないようにしてます(笑)。
?(場が立っている時間は、トイレに行くヒマすらないのは)1 分の値動きで数千万円損することが実際にありますからね。
後場が終わると精神的に疲れ、しばらくはグッタリしてます。
?(2002 年後半は)親に就職を勧められ、資産も伸びず精神的に厳しかった。
?(2004 年は)大型株の動きがあまり良くなくなってきたので、仕手っぽい株や、フィデック、タカラバイオなどの IPO 銘柄など個別に盛り上がっている株を中心に売買しました。
?たまに、その銘柄を買っている人がパニックに陥るような暴落が起きることがある。
左の銘柄(石井鐵工所・福島銀行・クラリオン・東京テアトル)のほか、01 年末の宇部興産、02 年半ばの大手銀行株などです。
ところが、この暴落時が絶好の買い場なんですよ……。
?株価がジリジリと下がる状況を受け、ある人が損失に耐えられなくなり、株を売りますよね。
すると株価はさらに下がり、これを受けて別の人も損失に耐えられなくなって株を売る、すると別の人も恐怖に駆られ……。
?最後には、売ろうと思っていた人がほぼ売り尽くしてしまい、これ以上は売る人がいなくなる。
そして“この安値なら買いだ”と判断した人が殺到し、一時的に暴騰するんです。
これを“リバウンド”と言います。
?これ(乖離率)が 28 ~ 68 %(市場やセクター、地合いにより異なる)を超えると異常な高値、安値を付けているとある程度判断できます。
僕は有料のチャートソフトを使っていました。
でも逆張りは非常に難しいので、あまりおすすめできません。
?株価は不思議なもので、会社の価値は何も変わってないのに、その日のニューヨーク市場や先物の動向など、相場全体の雰囲気で上下するんですよね。
?仮に鉄鋼株を例にとると……たとえば相場の雰囲気がいい日などは、住友金属、新日本製鐵、神戸製鋼所、JFE ホールディングスなど、その分野の主力株が軒並み騰げるんです。
?連れ高にはパターンがあるんです。
たとえば鉄鋼なら、前兆として上の 4 社のどれかが、日経平均とともに騰げ始める。
しかしこの前兆段階だと、他の 3 社のどれかが、まだ騰がってなかったりするんです。
そんなときすぐ買いを入れるんですよ。
?騰げるときには相場全体が一気に騰がるから、連れ高を利用した方が儲かるんです。
?それ(連れ高が予測される瞬間を具体的にどう見極めるのか)ばかりは様々な企業の値動きを 1 日中見て“体得する”ほかないですね。
?毎日これ(登録銘柄リスト)を見続けると“一気に下がっていたハイテクが値を戻し始め、すると日経平均が上がり、相場が強くなってきたのを受け鉄鋼も騰げ始める”というイメージが湧くんです。
?儲かったのは僕の実力じゃなくて、単に時代のおかげ。
すべては相場環境しだいなんですよ。
?(IPO 銘柄は)インターネットの情報サイトで、どんな会社か、予想価格はどれくらいかを調べているだけですよ。
複数のサイトの予想株価と相場の雰囲気を総合すれば、今後の展開はだいたい読める。
?(先物相場は)非常に利用価値が高い。
どちらかといえば、先物が動いた瞬間、どれだけ早く反応できるかの勝負ですよね。
(注文を出す場面になると)考えるより先に手が動く。
それほど反射的なんです。
16.「週刊文春 BUSINESS」臨時増刊 4 月 5 日号
?いやあ、今日(ライブドアに家宅捜索が入った翌日の一月十七日)は大変だったんですよ。
ライブドアが下がって、新興市場も全部ダメで。
朝から二億円ぐらい損しました。
?今日は結構、大変だったんですよ……。
(画面上の値下がり銘柄ランキングを見せながら)これが百番目、百番目でもこれくらい下がってる。
?ライブドアは持ってなかったんだけど(笑)、大引けでは九千万円ぐらいの損失。
(何で取り返したの?)いやあ、フジテレビのデイトレとか……。
あと、楽天で結構戻したんです。
量(出来高)が多いから。
寄り付きは安かったけど、一回戻った。
まあ、四十億円ぐらいしか持ち越してなかった。
?(昼食のメニューは)ほとんどカレー。
?朝起きて、取引のあとも午後四時ぐらいまでいろいろやって、自由時間はそんなにない。
?(子供の頃は)自宅に八十本ぐらいゲームソフトがあったから、みんなで集まって遊んでた。
小学生の頃よく読んでた漫画は「少年ジャンプ」とか。
普通の子供ですよ。
?大学は中退してるんです。
四年までは大学に行ってたけど留年して、株をやってたら勉強が頭に入らなくなってきちゃった。
あと八単位取れば卒業できたんだけど、その辺から「億」になってきたし、株から目を離せなくなってだんだん学校に行かなくなり、「まあ、いいや」って。
?長時間座っているから椅子だけはいいものが欲しかった。
?最初の頃は、「株なんかやめて早く就職しなさい」って言われていた。
特に母。
相場が悪いときは大きな損失を出して、家族で食事をする時に頭を抱えて溜息をついたりしてたから。
儲かったら儲かったで、「そんなに(金が)あったら一生食べていけるんだから、……また損するかもしれないし」って。
自分でも百回以上やめようかと思った。
?(マスコミ誌上などで「ニート」と呼ばれることは)別にいいんじゃないですか。
株で儲かっているからって良く言われないほうがいいと思う。
製造業で伸びてきたのが日本のいいところだと思うんです。
資源のない国なのに、技術力でここまで成長した。
株で儲けて尊敬されるような世の中にはなってほしくない。
だから、株で儲けても「ニートだ」ってバカにされるような言い方でいいのかなあ。
?(投資顧問や出版の誘いは)全部断っています。
まだ本は書きたくないし、自分で株がそんなにうまいと思っていないので、人を混乱させたくない。
?(株をやめたらどうするか)考えないわけじゃないけど、それを人に言ったら意味がないじゃないですか(笑)。
17.「月刊宝島」2006 年 5 月号
?今日(3 月中旬)はプラス 6000 万円くらいですね。
?毎日チェックしているのは 700 銘柄くらいですね。
?1 月初旬は 12 月に IPO したファンコミュニケーションやナノメディアなどを中心に取引しました。
ライブドアショック以降はイートレード、インデックスなど新興市場の大型株を軸に。
2 月からは東証の大型株が中心でしたね。
?相場の状況は一日ごとに変化しますから、それに対応していっただけ。
とにかく、ボクは相場の流れに逆らわないだけなんですよ。
18.「文藝春秋」2006 年 5 月号
?「倉田(真由美)さん、デイトレード体験してみませんか?」
文藝春秋の W さんからこんなオファーをいただいた。
「うちで百万円用意しますんで、それでデイトレを実際にやっていただいて。勝った分は倉田さんのもの、負けた分はうちがかぶりますから」
「えっ!じゃあ、私は損することないの?」
「ええ。ノーリスクハイリターンってことになりますね」
そりゃおいしい。デイトレって大して興味なかったけど、一度は経験してみておきたい気もするしなあ。
「とりあえず、誰かデイトレの先生に基礎を教わりに行きましょう。倉田さん、誰か『この人に!』って希望はありますか」
デイトレの先生……だったらやっぱ、あの人がいい。
「みずほ証券のジェイコム株誤発注で、二十億円儲けたヤツ!確かまだ二十代なんだよね」
「ああ、彼ですか。最近ちらちら雑誌で見かけますし、オファーしてみましょうか」
そして数日後、W さんから連絡がきた。
「みずほ誤発注で大儲けした彼、OK とれました!彼のデイトレの様子を見に、彼の家に行きましょう」
我々は手土産にマクドナルドのハンバーガーを持って(何にしようか迷ったのだが、金持ってるし何でも買えるだろうから、一応気持ちだけでもってことで)、千葉にある K 君の家を訪ねた。
「この家も、彼が二億円くらいで購入したらしいですよ。現在の彼の資産は百億近いそうですから、二億なんて彼にとっては大したことないんでしょうけど」
「はあ?ひゃ、百億?」
どどど、どういうこと?株って、デイトレって、そんなに儲かるの……?
?「こんにちは」
豪邸の中から我々を迎えてくれたのは、見るからに全然日光に当たっていなそうな、ひ弱な感じの若者。着ている物も高級品なんかではなく、金持ちの匂いは全然しない。道を歩いていたら中学生にカツアゲとかされそうな、そんな青年であった。
「こんにちは、今日はよろしくお願いします。私たち、まったくの素人なので何も分かりませんが……」
とりあえずこれ、お土産です、とマックの袋を手渡す。家の中は家具も少なく、広いが閑散とした感じだ。彼がデイトレをしている二階の部屋に、我々を案内してくれた。
大きなパソコンにたくさんのモニター。それぞれに表や会社名が書かれた画面が開いているが、なんのことやらさっぱり分からない。
「ここで何億何十億を動かしているわけですね」
W さんが感慨深げにつぶやく。私は尋ねた。
「K さんて、もともと資産を持ってたの?最初はいくらくらいから始めたの?」
「最初はバイトで貯めた百六十万からですね。五年くらい前になりますか」
「えっ!百六十万~!」
驚きで声がハモる私と W さん。
「そ、それが五年で百億近くになったんですか!」
「まあ、始めた時期がよかったんですよ」
さらりと答える K 君。
「本屋で株で儲けた人の話を立ち読みして。僕もやってみようと思って、なんとなく始めたんですよね」
たった一冊の本がきっかけで、億万長者になったわけか。もしそれが「スロットで食う!」とか「パチンコで稼ぐ方法」とかだったら、また別の道を歩んだのだろうか。
「とりあえず場が始まったら、後ろで見ていてください。何をやっているのか分かんないだろうけど」
十三時の株式市場午後のスタートと共に、画面に釘付けになる K 君。しきりにいろんな会社の株価やらチャートやらを開いたり閉じたりしている。そして時折、数字を入力したりしているのだが、スピードが速すぎて何を書いているのか全然読み取れない。
「指値とか株数とか、どうやって決めてるんですか」
W さんの質問に、
「適当ですね」
K 君はあっさり答える。全然参考になんねーよ、それじゃ!
まあでも、確かに勘とかそういうものなんだろうな。長く真剣に株と向かい合っている人間にしか、分からないものってあるだろうから。
しかし、しばらく見ていても「なるほど、こういうもんなのか」という発見は、まるでない。ともかく何をやっているのか皆目分からないのだ。私は前日徹夜で原稿を書いていたこともあり、
「悪いんだけど、すごく眠いから横になって休んでてもいいかな」
場が終わる三時まで、うとうとさせてもらうことにした。相当疲れていたので、初めて来たお宅、しかも初めて会った人の前でもけっこうへっちゃらで眠れる自分の神経がありがたかった。
思いの外ぐっすり眠れて、すっきりした私。対して W さんは消耗しきった顔をしている。午後三時、本日の勝負の時間は終わった。
「まあ、こんな感じで毎日過ごしています」
K 君はようやく画面から顔を上げ、私たちに言った。
「今日の場はどうでしたか」
「そうですね、午前中はあんまり動きがなかったですけど……後半はけっこう激しかったですね」
「今日はいくらぐらい稼いだんですか?」
すると返ってきた答えが、
「うーん……三千五百万くらいですか」
はあー?さ、三千五百万……!い、いちにちでそんなに……?
絶句する W さんと私。
「た、単位は円だよね?ペソとかじゃなくて……」
「は?」
「何言ってるんですか、当たり前でしょ倉田さん」
だって、日給三千五百万だなんて。
?「勿論、損することだってありますよ。一日で一億損したこともありますし」
K 君は言う。
「刺激が強過ぎて、辛いですね。簡単に何千万何億が動くから」
「……楽しいの?株……」
「いや、全然楽しくないです。苦しいですよ」
即答する K 君。そして彼は続けた。
「でも、止められないんですよ。いつも頭の中は株のことばっかりですから。場が終わってもああすればよかった、こうすればもっと勝てた、ってずっと考えてますし。もう、完全に中毒ですね」
こんなに刺激のあるものって他にないですから、と。二十代で一生遊んで暮らせるだけのお金を手に入れて、でもあんまり幸せそうじゃないように見える。
「僕はお金を遣うことが、全然楽しくない人間なんですよ。食べるものも特にこだわりないし、着るものなんて何でもいいし。趣味もないですしね」
本当に、株だけの人生みたい。確かに、他人と交流することが全くない仕事(?)って、恐ろしくつまらなそうだよなあ。私も服を買ったりバッグを買ったり高いものを食べたり、「金を遣う」ことでハッピーになれるタイプじゃないので、彼の気持ちは分かる気がする。
株、デイトレについては聞くこともそれ以上ないので(ある程度のことを知らないと質問なんてできないし)、我々二人はお暇することにした。見送ってくれた若き億万長者の姿は弱々しく、少し寂しげに見えた。
19.「週刊ポスト」2006 年 5 月 5 - 12 日号
?(「その後どうしているか?」と聞かれて)特に変わらないですよ。
取材を受けることが多くなったくらいかな。
?資産ですか?
今は上げ相場ですから僕も増えていますよ。
130 億円くらいですね。
?ライブドアショックではちょっと損しました。
まァ 3 億円くらいですけど。
3 年くらい上げ相場なので、下げ相場の儲け方を忘れていたんですね。
3 年前の感覚なら 10 億円は稼げた。
?昨日(4 月 17 日)も相場が悪くて 1 億円くらい損したけれど、その辺がこれからの反省材料ですね。
?僕だって負けるとキツイんですよ。
もっとコテンパンに負けたら、きっと株を止めるでしょう。
いや、もしかしたらかえってヤル気が出るのかなァ……。
20.「月刊 CIRCUS サーカス」2006 年 6 月号
?昨日は合計で 8000 万円くらい勝ちました。
?相場の状況は一日ごとに変わるんで、それを見極めます。
「昨日は IT 系だけど、今日は銀行、証券の金融系だな」というような感じで投資先はその都度変えています。
?相場状況にもよりますが、セクターで分けて監視しておくのは重要です。
昨年、上げ相場の例でいうと鉄鋼、銀行、証券、商社などは同時進行で連れ高したのですが、造船はいつも一歩遅れて上がりました。
高値に追いつこうとする。
それはセクターごとに比較するからわかるんです。
?(「もし今 200 万円くらいの資金ならどういう投資をしますか?」と聞かれて)投資スタンスにもよりますが、売買代金急増ランキングや値上げ率ランキングで上位にくる新興・東証二部の中小型株に順張りですね。
場合によっては逆張りもします。
あと、損切りをきっちりできるかどうか。
?なんで株価が下がったのか。
すぐに戻す下げなのか。
買った後、すぐに上がる株こそかえって少ない。
そこの見極めですね。
それには何より、株を毎日見ていくことです。
相場は上がるし下がるし、まさに生き物。
本を読むよりも相場に出て、その感覚を体得するのが重要です。
?先物の値段の上げ下げは様々なセクターに影響を与えるのでチェックは欠かせません。
21.「NET M@NEY ネットマネー」2006 年 6 月号
?ぼく自身、PC のことはそんなに詳しくないんです。
特にこだわりもないですし……。
?今はモニターが 6 台ありますけど、昨年 9 月に引っ越しをするまで、SOTEC のノート PC 3 台を使って学習机でトレードしてました(笑)。
株式投資を始めた 5 年前はノート PC 1 台のみでしたし。
?昔、たまたま朝の 4 時に目が覚めて NY の株価をチェックしたらすごい下げ。
腹が立って、マウスをディスプレイにぶつけたら、映らなくなっちゃって。
相当焦りましたね(苦笑)。
?トレードは長時間座ったままなので椅子は革張り。
奮発しました(笑)。
?(「機種を教えて?」と聞かれて)ハードは eMachines の J3022(Celeron D 350) × 3 台、SHARP 製の 14 インチモニタを計 6 台です。
?(「なぜその機種にしたの?」と聞かれて)株式投資だけに専念したいので、余計な機能やソフトを入れないシンプルな仕様が組める機種にしました。
取引以外には全く使いません。
?(「いくらかかったの?」と聞かれて)PC 関連はトータルで 50 万~ 60 万円。
トレード専用の大きめデスクや椅子を含めると、もうちょっとかかったかなあ。
?(「どう使ってるの?」と聞かれて)ハード 3 台にそれぞれモニタを 2 台ずつ接続。
モニタは計 6 台。
下の 3 台はすべて取引画面。
上の 3 台は海外の株価チェックなどに使用。
?(「オリジナルの技ってある?」と聞かれて)PC にあまりこだわりはないけど、テンキーのあるキーボードを使っていること。
証券コード、売買注文の入力には必須です。
?(「回線は?」と聞かれて)光ケーブルです。
引っ越しする前から光に替えました。
少しでも処理速度は速いほうがいい。
ささいなことでも積み重なると大きいですから。
?(「セキュリティは?」と聞かれて)セキュリティソフトも含めてかなり気を使っていますね。
金額が金額なので暗証番号も定期的に変えたりしています。
22.「WILD LIFE ワイルドライフ」(藤崎 聖人)第 19 巻
?今のような売買を始めたのが 2000 年 10 月この時は 160 万円で……2000 年末に 300 万、2001 年末に 6000 万、2002 年末に 1 億、2003 年末に 2 億 5000 万、2004 年末に 10 億、2005 年末に 100 億、そして 2006 年現在の 130 億に至ります。
?やっぱり一番大きいのは 25 日線からの乖離率をよく見て投資していたからではないでしょうか。
?要するに僕が下げ相場でも勝っていた理由は、この 25 日線から大きく株価が乖離し、下がりすぎた株を安く買っていたからなんです。
大量の売り物が出て株価が下がる兆候が出ると多くの人が狼狽し、投げ売りが始まります。
しかし倒産したわけでなければ株価はゼロにはならない。
どこかで反発し、リバウンドが取れるというわけですね!
?ちなみにこれ(クラリオン・東京テアトル・石井鐵工所)は当時(2001 年 12 月 19 日)僕が買っていた三種類の株ですが僕が買った日から反発し、上昇していくでしょう?
これらの会社の 25 日線からの乖離率はどれも 60 % くらいあったはず……どうみても下がりすぎだったんですよね。
?ただし、乖離率ばかり見ていると、倒産寸前の大赤字とか不正が発覚して上場廃止とか…そう簡単にリバウンドしようがない会社に手を出してしまうこともありますから注意が必要です!
僕がこれらの会社(クラリオン・東京テアトル・石井鐵工所)の株を買ったのは、この時、株価が暴落した理由が「無関係な他社の倒産」だったからです。
この 3 社は当時業績があまりよくなく他の無関係な会社が倒産しただけで、みんながここもやばいんじゃないか、という発想になり暴落しましたが……僕にはこの 3 社は倒産するような状況には見えなかった……だから買ったんです。
?株式投資で最も重要なのはそういう理由の分析も含め全体の流れを見る力……すなわち“洞察力”なんです。
?とにかく毎日株価の動きを見てみることですよ。
会社員の方や学生の方で日中のザラ場が見れなかったとしても、家に帰ってから株価を見て、どうして今日は上がったのか下がったのか、自分なりの理由を見つけていくといいと思います。
今の時代、別に株を持っていない人でも、会社名をヤフーなどの検索エンジンに入力すればチャートは一瞬で見られますから……。
これから株を始めてみようという人は、とりあえずどこかの会社を買ったつもりになってしばらく見ていくのがいいかもしれません。
?それと初心者の方にアドバイスしたいのは、業種(セクター)ごとの盛り上がり方(トレンド)を見ることですね。
〇〇百貨店という会社なら小売業だし、〇〇建設なら建設業……要はその会社がどういうジャンルに区分けされているかということですよ。
例外は低位株や新規上場した会社の株。
そういう会社はその会社本来の業種ではなく“低位”というセクター、“新規上場”というセクターとしてジャンルを作ります。
株というのは業種全体で値上がりしたり値下がりしたりすることが多いですから、自分が選んだ一つの会社を見るだけでなく同業他社がどうなっているかを見るのがとても大事なんです。
僕がジェイコム株を買ったのも別に誤発注に気づいたからではなく、この時期に新規上場した会社はしばらく強いと睨んで注目していたからですしね。
?日経全体の上値が重くなって買える株が少なくなったりすると、低位や新興にお金が流れ急上昇したりします。
あとは売買代金や出来高の推移もよく見て、下がっていてもたくさんの人が買っているなとか、上がっていても少人数しか買ってないな、と見極めることが重要です。
そうすれば、次に強いのはどの業種か、それからその業種の中でどの会社をいつ買うべきかどんどんわかっていくものなんですよ。