劇場版『鬼滅の刃』の“異常ヒット”に、どうしても「不気味さ」を感じてしまうワケ

みんなが必死で消費をしている
堀井 憲一郎 プロフィール

原作漫画は全部で205話まである。

だいたい「原作漫画2話ぶん」を「アニメ1話ぶん」にして放送していた。

アニメ26話で「原作漫画1話から53話」が描かれ、今回の「劇場版 鬼滅の刃」で「原作漫画の54話から66話」までが映像化された。

まだのこり139話ある。三分の一しか終わっていない。炭治郎と鬼殺隊には、この先かなり長い道のりが待っている。

話題の映画だからと見に行ったところで、『となりのトトロ』や『アナと雪の女王』や『君の名は。』とは違い、ひとつの話として消化できるわけではない。

長いアニメの途中を見るだけだ。

映画だけを見た人には、もともとのわからない部分があり、見終わってもこの先がどうなるのかはわからない世界が残る。映画の終わりに出るべき本来の文字は「つづく」である。

そんな「途中だけを見せてくれる作品」が空前のヒットを巻き起こしている。かなり不思議な現象である。

 

2017年の「鬼滅の刃」

おそらく私たちはいま、尋常な状態ではないのだろう。

もともと、ジャンプ連載中からかなり熱心に読んでいた私として、いまの状況は「悪い冗談」のようにしかおもえない。

『鬼滅の刃』は2016年からジャンプでの連載が開始され、私が真剣に読み出したのは2017年のなかごろからである。そのころ私のまわりの(大学の漫画研究会の部員とその若いOBたち、だいたい二十代)ジャンプを毎号読んでいる連中のなかで、『鬼滅の刃』が話題にのぼることはあまりなかった。