「Perfume、そしてAKB48が登場したあたりから、地道にライブを積み重ねてブレイクするという、ボトムアップ方式の売れ方がアイドルの王道になっていった感があります。ライブや特典会を主体に活動していると、最初のうちはどうしても男性ファンの割合が多くなるんですね。
しかし、そのような売れ方のスタイルも、次第にテンプレート化していきました。ここ何年かはメジャーでもインディーズでも、アイドルに女性ファンが割と早い段階で増え始めるのは当たり前になってきており、それはメディア露出のタイミングと密接に関わっているのです。
というのも、やはりAKB48が特に顕著だったと思うのですが、2007年8月の水着グラビア解禁(「週刊プレイボーイ」<集英社>、「週刊ビッグコミックスピリッツ」<小学館>を皮切りに、徐々にグラビア誌やコミック誌の巻頭に進出。さらに一般誌にも進出するプロモーション戦略を取るようになりました。そしてブレイクのきっかけとなったシングル『大声ダイヤモンド』(2008年10月発売の10thシングル)のリリース以降、あらゆる雑誌を席巻していったのです。そうすると当然、多くの人々の目に触れやすくなりますし、若い女性ファンの増加にもつながっていきました」(同)
“アイドル好き”をオープンにしやすい時代になったことも寄与?
一方で岡島氏は、「1990年代にはアイドルに対する偏見があった」と語る。昨今のように、若い女性ファンまでもがアイドルのライブや握手会などに足を運ぶ状況は、いかにして生まれたのか。
「今ではアイドルファンへの差別的な意識はだいぶ緩和され、趣味の一つとして浸透し、人前で『アイドルが好きだ』と公言するのが憚られるようなこともなくなったのではないでしょうか。例えば毎年夏に開催される『TOKYO IDOL FESTIVAL』というイベントですと、3日間で207組のアイドルが出演した今年は合計8万人以上の客が来場していますし、アイドルというジャンル自体の市場がかなり膨らんできています。
そしてAKB48のブレイク以前に、モーニング娘。を擁するハロー!プロジェクトがあれだけ世間的に認められたというのは大きかったですね。2000年代の親の世代にとって、自分の娘にハロー!プロジェクトの映像や音楽を見せたり聞かせたりするのは、いたって普通のことだったでしょう。
その娘が成長して10~20代になったとき、乃木坂46やAKB48などのアイドルにハマるのも、ごく自然な流れです。これはジャニーズやK-POPにもいえることですが、もはやアイドルは親子2世代、3世代にわたって楽しめるカルチャーに育っているのではないでしょうか。
とはいえアニメやマンガ、ゲームといったコンテンツに比べてしまうと、まだまだアイドルの市場は小さいのが現状。乃木坂46に限った話ではなく、アイドルという文化を売り出していくためには、男性ファンだけを相手にしていても厳しいですし、女性ファンを取り込まないと成立しません。女性ファンが増えている背景にはもちろん、そういったビジネス的な事情もあります」(同)