滞る政権移行 米の政治空白が心配だ
2020年11月18日 07時32分
政治空白が長引けば米国の安全保障に支障を来す。大統領選の敗北を認めないトランプ氏のせいで政権移行が滞っている。トランプ氏はバイデン次期大統領への引き継ぎを即刻始めるべきだ。
米国民の大半が選挙結果を受け入れ、各国首脳もこぞってバイデン氏に祝意を示した。世の中が「ポスト・トランプ」に動きだしている中で、トランプ氏本人はこの流れにあらがっている。
「不正選挙だ」と主張して法廷闘争に持ち込んだ。ところが不正の証拠を示すことができず、次々に敗訴している。裁判で選挙結果が覆る見込みは薄い。
それよりもトランプ氏には果たすべきことがある。選挙に敗れた大統領でも円滑な政権移行のため後任に協力する−。トランプ氏はこの伝統を踏みにじってはならない。
末期を迎えてレームダック(死に体)化した政権と、新政権が始動するまでの移行期間は、政治空白になりがちだ。それをできるだけ解消するために、新旧政権がスムーズに引き継ぎをすることが肝要だ。
二〇〇〇年の大統領選はフロリダ州の開票をめぐる混乱で、最終結果が一カ月以上も確定せず、政権移行作業が遅れた。翌年九月の米中枢同時テロに関する連邦議会の検証報告は、新体制確立の遅れがテロ防止に響いたと指摘した。
こんな不安定な時期にトランプ氏はあろうことかエスパー国防長官を解任した。人種差別デモ鎮圧に軍投入をちらつかせたトランプ氏に異を唱えたことも理由だろう。安全保障体制に動揺と混乱をもたらし、国外の対立勢力につけ入るスキを与えかねない。
それでなくとも米国のコロナ危機は深刻だ。新型コロナウイルスの感染者が千百万人を突破し、一日の新規感染者数は日本の累計感染者数を上回る。医療現場は逼迫(ひっぱく)。政治の強い指導力が必要とされる時だ。
主権者の意思を政治に反映させる機会である選挙は、民主主義の根幹である。その結果を受け入れないのなら、民主主義は機能不全に陥る。
「欧州最後の独裁者」と呼ばれるベラルーシのルカシェンコ大統領は、八月の大統領選で自分の当選を言い張り政権に居座っている。正統性はとうに失っているにもかかわらず。
民意をないがしろにするトランプ氏の態度は、ルカシェンコ氏と二重写しになる。
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