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 公立小中学校のすべての学年に少人数学級を導入するかどうかで論議が起きている。

 法律を改正して1クラスの児童・生徒数の上限を「40人」から「30人」に引き下げ、あわせて教員の数を確保することをめざす文部科学省に対し、財政負担を懸念する財務省が待ったをかけるという構図だ。

 いわゆる3密の回避などコロナ禍への対応が直接のきっかけだが、少人数にした場合の学習効果や教員数の国際比較など、基本となるデータやその読み方が共有されないまま、政治家も参入してそれぞれの主張を戦わせている感が強い。

 明日を担う子どもたちは現在どんな状況下にあり、すこやかな成長のためには何が必要で、いかなる施策を講じるべきか。その観点に立って議論を深め、いま考えられる最良の道をとることを政府に求めたい。

 子どもの人数は年々減っており、それだけ見れば教員を減らしても問題はないという財務省の意見はもっともに思える。

 だが経済格差の拡大などにより、子どもたちの成育歴や家庭環境には、以前にも増して大きな差異が生まれている。外国籍の子も珍しくない。多様化する現場にどう向き合い、いじめや虐待などにも対処していくか。教員にのしかかる負担を考えれば、現場に相応の人数を配置するのは当然といえる。

 加えてのコロナ禍だ。

 教室で子ども同士が適切な距離をとることができ、たとえ感染拡大によって遠隔授業を強いられる事態になっても、一人ひとりにしっかり教員の目が行き届く。文科省がそうした態勢づくりを進めようとするのは理解できる。ただ、その唯一の方法が30人学級かとなると、疑問や異論も出てくるだろう。

 そもそも文科省の構想でも30人学級の完成には10年の年月がかかる。その間の児童・生徒のために、勉学はもちろん、部活動などでも教員を支えてくれる外部人材の登用・充実に力を入れなければならない。

 なかなか進まない働き方の見直しも急がれる。たとえ30人学級になっても、個々の学校単位では増える教員数はわずかだ。日々の業務に忙殺され、「ブラック職場」扱いされている現状を是正しなければ、良い人材も集まらないだろう。

 教員と他のスタッフとで仕事を切り分ける。IT機器を活用し、授業だけでなく習熟状況の把握や指導に役立てる――。かねて言われてきた、こうした取り組みを幅広に探ってほしい。

 教育に予算をつけることに異を唱える人はいないだろう。どんな使い道があり、優先すべきは何か。知恵を絞るときだ。