東南アジアで2番目に大きな国土で、人口は5千万を超す。ミャンマーは今後の経済発展の可能性から「アジア最後のフロンティア」とも呼ばれる。
その針路を占う総選挙で、軍による政治支配を拒絶する国民の意思が改めて示された。いまだ権力に固執する国軍は民意を真摯(しんし)に受け止め、かたくなな態度を改める必要がある。
公式集計によると、アウンサンスーチー国家顧問の率いる与党、国民民主連盟(NLD)が改選議席の8割以上を得た。前回より議席を増やし、単独過半数を維持した。一方、国軍系の最大野党は議席を減らした。
半世紀以上におよぶ軍による統治が転機を迎えたのは5年前のことだ。自由で開かれた選挙が行われ、民主化を求めて軍政を批判してきたNLDが、地滑り的な大勝を収めた。
だが、道のりは半ばである。憲法の規定で、議席の4分の1はあらかじめ軍人に割り当てられている。改憲には議会の4分の3を超す賛成が必要で、軍の意向を覆すのは不可能だ。
NLDは今年、軍人枠の撤廃でなく、時間をかけて段階的に減らす現実的な提案をした。しかし軍はこれを拒み、国政に影響力を残そうとしている。
軍政が民主化への流れを容認したのは、国際社会で孤立し、経済が低迷する国の行方を案じたためだ。
実際、欧米による経済制裁は緩められ、外国からの投資は大きく増えた。その流れを止めるのは賢明ではない。国軍の最高司令官は投票日に「選挙結果は受け入れる」と表明した。その言葉どおり、改憲などに柔軟な姿勢を示すべきだ。
2期目を託されたスーチー政権にとって、多民族国家をどうまとめていくかが課題だ。
公約としていた少数民族武装勢力との和解は進んでいない。西部ではイスラム教徒ロヒンギャに対する軍の掃討作戦により、大量の難民が生まれた。
スーチー氏のロヒンギャへの冷淡な対応は国際社会を失望させた。国際司法裁判所は、ジェノサイド(集団殺害)につながる迫害を防ぐよう命じた。早急に抜本的な対策を講じることが求められる。
少数派の人権が守られない民主化はありえない。国民の熱烈な支持で再選されたからといって、国際社会の批判に耳をふさいではなるまい。
軍政の時代、制裁で圧力をかける欧米から一線を画した日本は、軍とスーチー氏の双方とパイプがある。それを生かし、東南アジア、中国、インドを結ぶ位置を占めるこの国が、国際社会に開かれた民主国家の道を歩むよう促す努力を強めたい。
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