水素とは

水素の性質と活用

元素としての水素 [1]

地球上にあるすべての物質は、細かく砕いていくと原子という非常に小さな粒になります。原子の種類は約百種類で、根源的な物質ということで元素とも言われます。約百種類の元素には水素・ヘリウム・リチウム・炭素・窒素・酸素・・・のようにそれぞれ名前が付けられています。水素は、これらの元素のなかでも一番小さな原子番号を持ち、宇宙全体では一番多く存在している元素です。

図:さまざまな元素を、原子番号順に並べた周期表

さまざまな元素を、原子番号順に並べた周期表。右から左、上から下へいくほど原子の陽子数は増え、縦に並ぶ元素同士は化学的性質が似通っている。

物質としての水素 [2]

地球上にある水素の大部分は、化合物として存在しています。
水が「H2O」という分子記号で示されることはよく知られています。これは、水素原子2個と酸素原子1個が結合して、水という分子ができていることを意味しています。また天然ガスの主成分であるメタンはCH4という記号であらわされますが、これは炭素原子1個、水素原子4個からできています。このように水素は化合物として存在しています。水素は一つの原子では不安定なため、単独の場合には2原子が結合した水素分子(H2)として安定に存在することから、一般的に水素と呼んでいるのはこの水素分子です。自然界にはほとんど存在しておらず、他の化合物から人工的に作り出されて利用さています。
水素の形態として地球上で一番多いのは水です。ちなみに「水素」という名前は、水を構成する元であるということがその由来で、英語のhydrogenも、水(hydro)の元(gen)という意味です。

さまざまな用途に活用される水素

水素は産業用途として、肥料製造や半導体加工、さらに石油化学工業などで広く使われていますし、日常で広く使用されているニッケル水素電池という二次電池にも使われています(表)。すでに広く普及している家庭用燃料電池(エネファーム)では、都市ガスやLPGを原料に水素を製造し、その水素と空気で発電を行っています。
なお水素は、日本でも初期のガス灯や都市ガスに広く利用されていました(水素と一酸化炭素の混合ガスで、石炭から製造されていました)。一酸化炭素中毒の問題もあり、液化天然ガスの輸入開始とともに天然ガスに置き換わっていきましたが、それまで水素は身近な存在でした。

表 水素の主な利用方法

化学製品原料 アンモニア肥料、合成樹脂、メタノール、医薬品、過酸化水素
化学加工用 脱硫、漂白殺菌、油脂硬化、半導体加工
熱利用 石英ガラス溶融、合金の焼結、溶接、照明(ライムライト)
化学分析用 ガスクロマトグラフィー分析
浮力利用 観測用気球、飛行船
燃料用 液体ロケット燃料
電力 ニッケル水素電池、燃料電池

より詳しく知りたい

文献リスト

  • [1] 井口洋夫(1978)『元素と周期律』裳華房
  • [2] コットン・ウィルキンソン(1987)『無機化学』培風館
  • [3] 日本学術振興会「水の先進理工学」に関する先導的研究開発委員会(2011)
    『基礎からわかる水の応用工学』p.3, 日刊工業新聞社
  • [4] 容器保安規則(昭和41年5月25日通商産業省令第50号)第10条
  • [5] 江沢洋(2013)『だれが原子をみたか』岩波書店
  • [6] 国立天文台(2013)『理科年表 平成26年』p.383-丸善
    [7][6]p.407
  • [8] 岩谷産業(2014)『水素エネルギーハンドブック』p.12, http://www.iwatani.co.jp/jpn/h2/pdf/hydrogen_handbook.pdf
  • [9]ウィークス・レスター(1988)『元素発展の歴史 1』pp.193-200, 朝倉書店
    [10][8]p.10