川辺川ダム 流域住民それぞれの思い
7月豪雨で氾濫した球磨川の治水対策をめぐって、12年前に蒲島知事が白紙撤回を表明した川辺川ダム計画が再び浮上しています。流域住民のそれぞれの思いを取材しました。「(2008年に)知事が言ったように、この川は“宝の川”」と言うのは、人吉市に住むラフティングガイドの木本千景さん。自宅は豪雨による浸水被害は免れましたが、球磨川のすぐそばにある実家の商業ビルは2メートル以上漬かりました。土砂に覆われた惨状に「早く全部きれいにしなきゃという思い。つらいと思ったり落胆などしている暇がない」。高校まで人吉市で過ごし、東京で大学生活を送りましたが、慣れ親しんだ川とともに子育てしたいと地元に戻りました。川辺川ダム建設には反対で、蒲島知事の意見聴取会でも「ダムには限界がある。寿命もある。環境の負荷はゼロではない。(川は)絶対に汚れる。ダムは造らないでほしい」と訴えました。一方、人吉市城本町の町内会長を務める城本雄二さんは、意見聴取会で川辺川ダム建設などを求める要望書を県に提出。自宅は球磨川から400メートルほど離れていますが7月豪雨で一帯が水に漬かり、町内の半数近くに当たる約100世帯が浸水被害を受けました。高齢者を避難させるために午前5時半ごろから一軒一軒回った城本さんが町内54世帯に考えを聞いたところ、51世帯がダム賛成だったといいます。「人命と自然では、人命を優先するべきだと思う。行政の方針がはっきりししないと私たちの生活再建計画が中途半端になる。ダムとあらゆる治水装置をつけるような発表を正式に早くしてほしい」と城本さん。治水対策をめぐって賛否が交錯する川辺川ダム。知事は11月19日、県議会全員協議会で治水対策の方向性を表明する予定です。