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大原薫の観劇コラム
【大原薫の観劇コラム】Vol.1 ミュージカル『グレート・ギャツビー』
2017/05/19
ジェイ・ギャツビー/井上芳雄(舞台中央)
写真提供:東宝/梅田芸術劇場
井上芳雄の背中が物語るグレートな愛
新シリーズ「大原薫の観劇コラム」が始まります! 今が旬の舞台を徹底レビュー。今、このときしか味わえない感動を皆様と共有して、劇場に足を運んでいただくきっかけになればと思います。よろしくお願いいたします。
第一回はミュージカル『グレート・ギャツビー』。井上芳雄さんの新たな代表作となったギャツビーに迫ります!
演出家・小池修一郎さんが宝塚歌劇団でF・スコット・フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」を世界初ミュージカル化したのが1991年(初演時のタイトルは『華麗なるギャツビー』)。今回は宝塚版の脚本を元として、演出・音楽を一新して初の男女キャスト版として上演された。華やかなステージングで盛り上げながら、一人の女性を思い続ける男性の純情にスポットを当てる。
今回のポイントは気鋭の作曲家・リチャード・オベラッカーさんが全編の作曲を担当していること。シルク・ドゥ・ソレイユの『ドラリオン』『KA』などを担当し、このほど開幕した『BANDSTAND』でブロードウェイデビューを果たした。『BANDSTAND』は第二次世界大戦直後のジャズバンドの話で、「音楽が時代のスタイルをとらえただけでなく、役のキャラクターを深く掘り下げた。音楽が緊密に物語と統合されて、パワフルなミュージカルシアターを創り出す」(AM NY)と高評価を受けた。スウィンギングなテイストは『BANDSTAND』と『グレート・ギャツビー』に共通する。
最近の日本のオリジナルミュージカルでの海外音楽家とのコラボレーションは『王家の紋章』のシルヴェスター・リーヴァイさん、『デスノート』のフランク・ワイルドホーンさんなどがあるが、これらは海外のクリエイターが日本文化に寄せて新たな創作を目指したもの。今回はアメリカ文学の舞台化で(作曲の依頼が来る前から『グレート・ギャツビー』が愛読書だったという)、オベラッカーさんが作品の持つ世界観を体現できるところが大きな強みだ。ギャツビー邸のパーティの軽快なチャールストン、もぐり酒場アイス・キャッスルのダークでジャズィーなナンバー、ドラマチックなタンゴなど多彩な音楽で時代を表現する。
ジェイ・ギャッツビー/井上芳雄、デイジー・ブキャナン/夢咲ねね
写真提供:東宝/梅田芸術劇場
オベラッカーさんの音楽とあいまって、小池修一郎さんの華麗な演出が舞台に映える。時は「ジャズ・エイジ」。1920年代、第一次世界大戦後の好況は、1929年の世界恐慌で終わりを告げる。繊細な色合いが美しい衣裳(生澤美子さん)、時代の感覚を伝える振付(桜木涼介さん)のダンスを巧みに活かしながら、刹那に燃えた輝きを鮮やかに舞台に映し出す。タイプの違う場面を緩急自在につなぎ、躍動感のある表現で見せて、観客を陶酔の世界に誘った。小池さん独特の美意識に彩られた造形の中で、作品の焦点はギャツビーの純愛に絞り込まれる。
特に印象的なのは終幕近く、ギャツビーの半生がリプライズする場面。ギャツビーのドラマがここに凝縮する。そして原作とは違うデイジーの最後の行動とラストシーンの歌に、小池さんがギャツビーに寄せる共感と深い思いがにじみ出た。
■□■BUTAKOME☆Information ■□■
ミュージカル『グレート・ギャツビー』
原作:F・スコット・フィッツジェラルド
音楽:リチャード・オベラッカー
脚本・演出:小池修一郎
出演:井上芳雄、夢咲ねね、 広瀬友祐、畠中洋、蒼乃夕妃、AKANE LIV、田代万里生ほか
日時・会場
■東京公演
2017年5月8日(月)~29日(月) 日生劇場
■大阪公演
2017年7月4日(火)~16日(日)梅田芸術劇場メインホール
※公演の詳細は公式サイトへ
BUTAKOME☆INFORMATION
6月12日(月)午前8時から、字幕版は6月17日(土)午後7時から
WOWOWプライムにて放送
スペシャル・サポーターは井上芳雄さん!!
★★★WOWOW『第71回トニー賞』公式サイトへ★★★
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