加藤和樹のエンタメCafe

【加藤和樹のバンキシャレポート Vol.13】エンタメカフェ in 大阪~6月17日ゲスト・上原理生さん

2018/07/28


 

エンタメカフェin大阪

 
――パレロワイヤルの場面でのロナンとダントンとのやり取りも注目するポイントですね。

上原:この場面でダンスするんだけど、田舎から出てきたばっかりのロナンはリズムが取れないんですよ。

加藤:だから、ダントンに教えてもらってる。

上原:「こうやるんだよ」って。あそこはお互い遠慮しないでできるね。デムーランリュシル則松亜海さん)がキスをして去って行く後、ロナンは何をやってるの?

加藤:ボースの田舎では人前でキスするような人はいなかったから、「何をしているんだ」という気持ちでいるんですよ。日によって感じ方は変わってくるので、遊んでいるわけではありません(笑)!

上原:「さあ、何が出てくる?」という感じで、毎回楽しいね。

 
――ロナンと革命家たちの関係性が変わってくるのが、「自由と平等」の場面です。

加藤:妹のソレーヌソニンさん)とダントンの関係があるから、僕が演じているロナンとしては、ダントンは他の二人とは違う立ち位置にいるんです。信頼はしているけど、心の中で分かり合えない部分もあるから、ダントンに説得されるのが一番つらい。

上原:聖職者・貴族・平民と三つの身分に分かれる当時のフランスで、同じ平民の中でもプチブルジョアと労働者階級とが分かれていた。あの場面で、同じ平民同士でも違いがあるという現実を初めて見せつけられる。現実を痛感して、それでも動こうとするんです。だから、2幕が始まってロナンが来てくれたことがすごく嬉しくて。

加藤:そこで最初に声をかけてくれるのがダントン。まだ心の中ではもやもやした気持ちがあるけど、「これが自分の意志なんだ」と思って飛び出していくんです。

上原:あの場面から皆が一致団結して、一つの行動を起こしていく。仲間として歩みだす大事なシーンですね。我々もロナンに教えてもらって、深く感じることができた。ロナンは労働者階級にも影響を与えたし、革命家たちにも意識の改革をもたらして意識の改革をもたらしてくれた存在なんです。

加藤:ロナンはそれまでの生きるベクトルが復讐や怒りだったのが、途中から未来や希望に代わっていきますよね。彼が変わったタイミングが2幕の頭の場面だと思う。革命家たちと一緒に行動することで、誰もが自由に生きられる時代を目指すんだと未来を描けるようになったのは、ロナンの大きな成長だと思いますね。

 

エンタメカフェin大阪

 
――ロナンの妹、ソレーヌ(ソニンさん)との関係は?

上原:マズリエ兄妹はなんでそんなに仲がいいの?

加藤:兄妹の二人しかいないしね。俺と徹平ちゃんとでソレーヌに対する接し方が違うから、兄妹の年齢差が違って見えるという声もあって。

上原:面白いね。

 
――サ・イラ・モナムールを歌う前の場面で、ロナンとオランプに気づいたソレーヌがダントンと何か会話しているようですが……?

上原:ソレーヌが「あれ、誰?」とオランプのことを聞いてくるんですよ。「彼女でしょ?」と言うと「聞いてない!」って怒るんですよね。

加藤:そんな会話をしてるんだね(笑)。

上原:日によって会話が違うんですけど。そうだ、一度こんなことがあった。オランプを見て怒ってるソレーヌに「あの人が(ロナンと結婚して)お姉さんになったら、お前も(オランプみたいに)いい洋服を着せてもらえるかもしれないよ」といったら、……ニヤッとしたの(笑)。

加藤:ハハハハ。

上原:何を喜んでるんだって(笑)。

 
――革命の成功で終わる『1789』ですが、その後の革命家3人が待ち受けている運命を思うと切なくなる幕切れでもありますね……。

上原:今日、最後の「悲しみの報い」を歌っているときに、それを感じましたね。彼らは待ち受けている未来を知らないけれど、でも「世界が変わってほしい」という願いを持っていて。ロナンの死をきっかけとして人権宣言を書いたのに、21世紀の今も世界では悲しいことが起こっている。悔しい思いはあるけれど、「皆が自由に生きられる世界を願った人たちがいた」という瞬間を切り取った作品だから。微力でも、僕たちが演じることでお客様に少しでも感じ取っていただけたらなと思いますね。

加藤:ロナンは未来をオランプと皆に託して自分の人生をまっとうする。自分が生きてきた意味が感じられたから、最後は笑顔なんですよね。自由と希望に満ちた未来しかないとロナンは思っているから。

上原:だから、最後に救われるんだよね。

 
――上原さんから見た加藤さん、加藤さんから見た上原さんはどんな方ですか?

上原:律儀で真面目でストイックな男だなと思いますね。それは座長の器だなと思いますよ。優しいし、周りにも気を使ってる。和樹が舞台袖で小型扇風機を使っていて「これ、いいね」と言ったら、後日革命家3人にプレゼントしてくれたんです。和樹に関しては、男気あふれるエピソードしか出てこない。素敵な男だなと思いますね。

加藤:僕からすると、理生ほど男気がある人はいないと思う。違うと思うことは「違う」とはっきり言いますし。子役に対してもアプローチの仕方も、皆はどこか子供だからと甘やかし勝ちだけれど、彼はちゃんと対等に見ているんです。一昨日、その姿を袖で見て「えらいな」と思いましたね。

上原:芝居って気持ちいいものでしょう。「最高のパフォーマンスをお客様に届けようね」という話をしてたんです。

 
――いい関係性ですね。

加藤:刺激し合ってるものね。

上原:そう、刺激し合ってる。このカンパニーはスーパーダンサーがいて、役者の方々がいらして、僕みたいに歌をやっていた人間がいて、それぞれに武器がある。どれだけ努力をしてきたかがわかるから、自然と尊敬できるんですよね。

加藤:妥協しないで常に高め合っているのがすごいなと思うし、「自分も頑張らないと」と思えますね。

 
ゲストコーナーの最後に上原さんの今後のご予定について。『にっぽん男女騒乱記』『ピアフ』に続き、2019年には『レ・ミゼラブル』にご出演されます。

上原ジャベール役を演じさせていただきます。もう、革命しません(笑)! アンジョルラスは自分の中で特別の存在になっているけれど、前回で全部出し切ることができたから、「挑戦したい」という気持ちになったんです。

 
そして、上原さんを見送った加藤さん。最後のご挨拶です!
 
加藤:理生に会って、人の声の圧倒的な力を思い知らされましたね。毎日一緒に芝居をして、刺激をもらっています。今日は理生をゲストに来てもらいましたが、これからもいろんな方を呼んで、いろんな場所でイベントができればいいなと思っています。今日はありがとうございました!

 

【エンタメカフェを終えて~バンキシャから】
互いにリスペクトし合う加藤さん、上原さん。男気あふれる二人のトークで、『1789』という作品への理解が深まりました。

これまで取材でお会いしてきた中でも感じてきたことですが、こうしてイベントでお話を伺っていると、加藤さんはどんな球を投げてもしっかり返してくれる抜群の安心感があります。しかも返ってくる言葉が上滑りしたものでなく、ご本人の実感から来るとても誠実なお答えなのです。言葉に嘘がない方だなと思います。今回一番感じたのは、現在演じているロナン役と『1789』という作品への強い思い! 楽しいトークの中にも情熱を傾けて作品に取り組んでいる様子がひしひしと伝わってきました。
 
加藤さんとイベントでご一緒して、夢咲さんや上原さんがおっしゃっていた「180度視野を持っている」「座長の器」「男気あふれる」という言葉どおりの方なんだと、改めて感じています。
 

取材・文/ 大原 薫
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