夜になると、
窓の外からバイクの音。
やっと帰ってきたなと
ソワソワしながら、
顔には出さないようにする。
音が聞こえてから数分後に
玄関の扉が開くと、
やっぱりねとうれしい。
「バイクを置ける家がいい」
彼の希望で探してみると、
意外とバイク置き場は
貴重なのだと知った。
諦めかけていたときに、
やっと見つけたこの家。
“バイク置き場あり”の
文字を見つけた瞬間に
「っしゃ!」とうれしそうに
ガッツポーズした彼を、
いまでもまだ覚えている。
かわいかったな、
本人には言わないけど。
部屋は5階建ての
マンションの最上階。
エレベーターがないことに
僕はウッと思ったけど、
彼は「いい筋トレじゃん」と
どこか楽しそうだった。
住んでみたら確かに、
自然と足腰が鍛えられている。
インドア100%の僕だから、
これくらいの運動は
したほうがいいのかもしれない。
広々したリビングダイニングは、
僕らのお気に入りになった。
休日には大きなソファで
ふたりでゲームをしたり、
黙々と漫画を読んだり。
見た目はクールな彼だけど、
カーレースのゲームのときは
体ごと動いちゃうし、
負けたら口がへの字になる。
わかりやすいなぁと思いながら、
「もう一戦やる?」と
ちゃんと聞いてあげている。
床に寝転がりたくなったら、
のそのそと和室に行く。
すりガラスの格子、
光を通してくれるからすきだ。
クッションと
もふもふの毛布が
ポンと置かれた和室は、
眠い人の休憩場所。
寝転がりながら
スマホをいじっているうちに、
いつのまにか夢の中。
どうやら眠気は伝わるらしい。
ひとりが和室に来ると、
自然ともうひとりも
するすると吸い寄せられるから。
遠くの山から流れてくる
たっぷりの風を感じながら、
ふたりでスピスピ眠る。
しっかりとした睡眠は、
ベッドのある洋室で。
昼寝のせいで
夜に眠れない日は、
ふたりでポツリポツリと
たわいない話をする。
起きたら忘れているくらいの、
くだらない会話が落ち着く。
荷物が少ないふたりだから、
和室にある押し入れだけで
すっぽり収納できてしまった。
せっかくのオープン収納、
なにかしらで使いたいねと
何気なく話していたら。
いつのまにか、
ふたりのコートが1枚ずつ
かけられていて笑ってしまった。
スッカスカだ、贅沢な使い方。
洗面所に続く
アーチの入り口は、
どこか海外風でおしゃれだ。
僕にはかわいく見えるけど、
彼には西部劇に出てくる
ウエスタンドアに見えるらしい。
掃除は苦手だったけど、
彼と住むようになって
たまにやるようになった。
トイレやお風呂が
ピカピカになっていると、
なんだかうれしそうだから。
きれいなお風呂に入ると
彼はふんふん鼻歌を口ずさむから、
言わなくても伝わってくる。
朝が早くて夜が遅い
忙しい彼だから、
「行ってらっしゃい」も
「おかえり」も言うのは
ほとんど僕のほう。
たまには出迎えてほしいなぁと
思ったりもするけれど、
まぁいいか、このままで。
「行ってきます」と
「ただいま」を聞けるのも、
けっこういいもんだから。
文・くまのなな
東京都在住のフリーライター。1991年生まれ。漫画と水遊びとおもちが好きです。主にツイッターにいます。
@kmn_nana
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