豚熱 西日本ピリピリ 「ワクチン帯」後退 感染イノシシ相次ぐ
2020年11月15日
豚熱に感染した野生イノシシの発見が西日本で相次いでいる。10月中旬以降、奈良、大阪、和歌山の3府県で感染イノシシが初めて確認された。農水省は封じ込めに向け、いわゆる経口ワクチンベルトを設けて対策を進めてきたが、抑え込めていないのが現状だ。西日本での一層の感染拡大が懸念される中、養豚関係者は警戒感を強めている。
野生イノシシを巡っては2018年9月、岐阜県で初めて豚熱の感染を確認。その後、全国にじわじわと広がっている。同省は感染拡大を食い止めようと、経口ワクチンベルト対策を始動。西日本では当初、三重、福井、滋賀の3県を貫くようにワクチンベルトの構築を進めた。
だが、野生イノシシの感染拡大に歯止めがかからない中、ワクチンベルトの“最終ライン”は徐々に移動。現在では、兵庫と京都・大阪の府県境まで後退している。
10月に入り、感染イノシシの確認が近畿地方で相次ぐ。14日の奈良を皮切りに、29日の大阪、30日の和歌山と、立て続けに3府県で確認された。兵庫を除く近畿の全府県に広がった形で、大阪府の担当者は「ここまで感染が広がったのか」(動物愛護畜産課)と驚きを隠さない。
“最終ライン”が突破される懸念も高まっている。大阪で感染イノシシが見つかった場所は、兵庫との府県境までわずか10キロほどの地点だった。
さらに最終ラインが未完成であることも懸念材料だ。新型コロナウイルスの影響で経口ワクチンの輸入が止まり散布が遅れるなどしたためだ。散布作業は11月中旬までかかり、それまでは感染イノシシが素通りする恐れもある。
兵庫県の担当者は「イノシシの移動距離などを考えると、既に突破されている可能性がある」(畜産課)と危機感をあらわにする。
豚熱の終息に向け、野生イノシシでの早期封じ込めは不可欠だ。現在、農水省は飼養豚へのワクチン接種を進めるが、十分な免疫を獲得できる豚は8割程度にとどまり、感染リスクは完全にはなくならない。ウイルスを持つイノシシがいる限り、生産者は常に侵入リスクを抱えながら養豚を営むことになる。
北海道大学大学院の迫田義博教授は「野生イノシシでの感染が予想以上に早く広がっている。さらに先回りして経口ワクチンを散布するなど、対策の再検討が必要だ」と指摘する。
<ことば> 経口ワクチンベルト
豚熱が発生した地方を取り囲むように、野生イノシシ向け経口ワクチンを帯状に散布する対策。農水省が昨年9月、イノシシ対策の柱として打ち出した。東日本と西日本の2本のベルトで挟み込み、野生イノシシがベルトの外側に豚熱ウイルスを拡散するのを防ぐ。「防疫帯」などとも呼ばれている。
野生イノシシを巡っては2018年9月、岐阜県で初めて豚熱の感染を確認。その後、全国にじわじわと広がっている。同省は感染拡大を食い止めようと、経口ワクチンベルト対策を始動。西日本では当初、三重、福井、滋賀の3県を貫くようにワクチンベルトの構築を進めた。
だが、野生イノシシの感染拡大に歯止めがかからない中、ワクチンベルトの“最終ライン”は徐々に移動。現在では、兵庫と京都・大阪の府県境まで後退している。
10月に入り、感染イノシシの確認が近畿地方で相次ぐ。14日の奈良を皮切りに、29日の大阪、30日の和歌山と、立て続けに3府県で確認された。兵庫を除く近畿の全府県に広がった形で、大阪府の担当者は「ここまで感染が広がったのか」(動物愛護畜産課)と驚きを隠さない。
“最終ライン”が突破される懸念も高まっている。大阪で感染イノシシが見つかった場所は、兵庫との府県境までわずか10キロほどの地点だった。
さらに最終ラインが未完成であることも懸念材料だ。新型コロナウイルスの影響で経口ワクチンの輸入が止まり散布が遅れるなどしたためだ。散布作業は11月中旬までかかり、それまでは感染イノシシが素通りする恐れもある。
兵庫県の担当者は「イノシシの移動距離などを考えると、既に突破されている可能性がある」(畜産課)と危機感をあらわにする。
豚熱の終息に向け、野生イノシシでの早期封じ込めは不可欠だ。現在、農水省は飼養豚へのワクチン接種を進めるが、十分な免疫を獲得できる豚は8割程度にとどまり、感染リスクは完全にはなくならない。ウイルスを持つイノシシがいる限り、生産者は常に侵入リスクを抱えながら養豚を営むことになる。
北海道大学大学院の迫田義博教授は「野生イノシシでの感染が予想以上に早く広がっている。さらに先回りして経口ワクチンを散布するなど、対策の再検討が必要だ」と指摘する。
<ことば> 経口ワクチンベルト
豚熱が発生した地方を取り囲むように、野生イノシシ向け経口ワクチンを帯状に散布する対策。農水省が昨年9月、イノシシ対策の柱として打ち出した。東日本と西日本の2本のベルトで挟み込み、野生イノシシがベルトの外側に豚熱ウイルスを拡散するのを防ぐ。「防疫帯」などとも呼ばれている。
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2020年11月11日
[家畜はどこへ 広域盗難を追う] 群馬に別グループ浮上 全国へ「にく」密売か
北関東を中心に家畜900頭が盗まれた事件に関連し、群馬県館林市のベトナム人グループが、奈良や千葉など全国へ豚の肉や血液を冷蔵宅配便で密売していた疑いが浮上している。と畜場法違反容疑で逮捕された同県太田市の技能実習生ら17人とは別で、在日ベトナム人のインターネット交流サイト(SNS)に豚肉の送付済み伝票の写真などを投稿し、注文を受けていた。購入者は各地にいるとみられ、捜査も広域化しそうだ。
SNSに写真
日本農業新聞が確認した複数の投稿のうち、7月下旬の投稿には10枚程度の荷物の発送済み伝票の写真があり、送付品欄には「にく」と平仮名で書かれていた。宛先欄には奈良、千葉、埼玉などの住所が日本語で記され、依頼主欄にはアルファベットで館林市内の住所とベトナム人名があった。依頼主の連絡先には携帯電話番号が書かれていた。
投稿には伝票の他、内臓が取り除かれた豚の胴体、豚の血とみられる赤い液体入りのペットボトル、豚肉料理の写真もあった。豚の血はソーセージの材料として知られており、送付済み伝票や解体中の豚の写真を並べることで「新鮮な豚を届ける」というメッセージになっている。
「危機を乗り越えて仕事ができる」といった購入者への感謝の言葉に加え「ローストポークが必要な場合は知らせて」と、調理して送るサービスも書かれていた。注文は「午後6時まで」と限定。以前から豚の密売を繰り返していたことを示す記述もあった。
さらに別の投稿には、刃物を手に解体中の豚をまたぐ男の写真がある他、「100頭の豚をお客さまに届けた」とした女の投稿もあり、解体だけでなく大量の豚を生きたまま密売していた疑いも出てきた。
グループの投稿は家畜盗難が社会の注目を集め始めた9月ごろに削除されたが、投稿の内容は県警も把握している。
家畜窃盗の捜査過程で逮捕され、報道発表されたベトナム人は、同県太田市と埼玉県上里町に住む20~39歳の技能実習生ら男女19人で、容疑は豚の違法解体や不法残留。捜査上の理由で発表されていない逮捕者もいるもようで、警察は窃盗容疑での立件に向け詰めの捜査を続けている。
盗まれた豚8万食分
盗難900頭のうち豚は840頭で、その大半は体重50~60キロの子豚だ。食肉関係者によると、60キロの豚から取れる赤肉は二十数キロで、バーベキュー100人分に相当。8万4000食分が盗まれた計算で、国内で起きた家畜窃盗事件としては前例のない規模だ。可食部だけの被害総額は市場価格換算で3000万円を上回り、被害農家は大きな打撃を受けた。
840頭全てが解体され食べられたのか、飼育されている個体もいるのか。子豚を盗まれた養豚場経営者は「豚は戻らないと覚悟しているが、せめてどうなったのかは知りたい」と捜査の行方を見守る。(栗田慎一)
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2020年11月10日
冬の訪れが早い欧州を新型コロナウイルスの強烈な第2波が襲っている
冬の訪れが早い欧州を新型コロナウイルスの強烈な第2波が襲っている▼2度目の外出制限に踏み切ったフランスは、今月になって新規感染が連日5万人、夏は日本とさほど変わらなかった。〈爆発的感染〉のすさまじさに驚く。それでもマスク着用を自由の束縛と感じ、ロックダウンに抗議デモが起こる。国柄の違いにまた驚く▼大接戦を演じた大統領選の陰に隠れたが、米国では1日の新規感染が10万人台、累計で千万人を超えた。選挙キャンペーンによる大規模な人の移動が原因の一つといわれる。その渦の中心にいた人物の往生際の悪さにも、あぜんとする。世界のコロナ感染者や死者数を日々発信するのが米国のジョンズ・ホプキンス大学、メリーランド州ボルチモアに本部を置く▼この名前を聞いてピーンと来た人は相当の新渡戸稲造通だ。「われ太平洋の橋とならん」と飛び立っていった先がここだった。後に英文で『武士道』を書き、志を遂げた。新渡戸は万能型の学者で知の領域は札幌農学校で学んだ農学はもとより経済、歴史学、英文学など多岐にわたった。留学先での最大の成果は生涯の伴侶、万里子夫人(メリー・エルキントン)と出会ったことかも▼名著『修養』で継続の大切さを説いた。感染防止対策もまたそうであろう。
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2020年11月13日
広島で緑化フェア 花で広げる平和・癒やし
花と緑に平和への祈りを込めた第37回全国都市緑化ひろしまフェアが23日、閉幕する。被爆から75年。直後は、75年間は草木が生えないといわれた広島市での開催は、花が平和の象徴であることを改めて示した。新型コロナウイルス禍で癒やし効果も再確認された。これを機に、花の魅力を全国に広げよう。
緑化フェアは、復興を見守り続けた原爆ドームの眼前に広がる市民球場跡地と、その周辺をメイン会場に3月19日に開幕。テーマは「ひろしま はなのわ 2020『花笑(はなえみ)』ひろしまから花と笑顔と平和の わ」。開幕時には会場を300品種18万本の花で彩った。
残念だったのはコロナ禍の直撃だ。オープニングセレモニーや県域で予定していたイベントは相次いで中止になった。また東京五輪・パラリンピックを想定し、世界中からの訪問に期待。メイン会場の他、フェアの中核を担う協賛会場を県内4カ所に、スポット会場を県内23全ての市町に設け、イベントを準備していた。しかし、十分なおもてなしができず、花き生産者や県民は悔しい思いをした。
全国的にもイベントなどの自粛が長期化、卒業式や入学式、結婚式などの中止が相次ぎ、花きの消費が大きく落ち込んだ。こうした状況を受け、生産者を支援する取り組みが始まった。国や自治体、JAグループなどが街を花で飾る運動を推進し、花を購入する消費者の動きも出た。花を飾る家庭が増え、国民は、花で癒やされることを認識。フェアのテーマだった「花笑」の輪が全国に広がった。
自然災害が恒常化、甚大化する中で、食料供給とダム機能など多面的機能の両面から、命を守る農業への期待が高まっている。さらにコロナ禍で、花の持つ癒やし効果が見直された。
一方、核兵器保有国による核軍縮の動きは停滞。危機感を強めた非保有国や広島・長崎の被爆者、非政府組織(NGO)などの努力で、核兵器禁止条約が来年1月発効する。だが唯一の戦争被爆国の日本は参加しない方針だ。こうした中、緑化フェアが被爆地・広島で開催された意義は大きい。あふれるような花と緑に、復興を成し遂げた県民の力と平和への願いを感じた。
農水省によると、2018年の全国の花きの作付面積は約2万6000ヘクタール、産出額は約3600億円で、農業産出額の4%を占める。花きの産出額は、1998年の約6300億円をピークに減少し、10年以降は横ばいで推移。重油の高騰や東日本大震災などを乗り越えてきた。
そして今年、コロナ禍に襲われた。厳しい中だが、平和と癒やしのメッセージを込め、業界挙げて花きを供給し続けてほしい。また消費者は家庭や職場などに飾り、それを受け取ろう。
次回の緑化フェアは熊本県で22年春に開催される。熊本地震や水害など苦難続きだが、花を通して“がまだす(頑張る)”力を見せてほしい。
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2020年11月15日
食料安定供給を重視 産業・地域政策の両輪で 衆院農水委農相所信
野上浩太郎農相は10日の衆院農林水産委員会で、就任後初めて所信を表明した。新型コロナウイルス禍の中、「国民への食料の安定供給を最優先に、生産継続のための対策を着実に実施する」と強調。豊かな食生活と農山漁村を次世代に引き継ぐため、「産業政策と地域政策の両面から全力で取り組む」と述べた……
2020年11月11日
経済の新着記事
サツマ「べにはるか」 無断流通 韓国で拡大 栽培面積の4割 輸出競合に懸念
韓国で、日本のサツマイモ「べにはるか」が無断で栽培され、広く流通している実態が明らかになった。既に韓国ではサツマイモ栽培面積の4割を同品種が占める。日本の農産物輸出の有望な品目・品種であるだけに、国内産地からは海外に売り込む際、競合することを心配する声も上がっている。
韓国への流出は、同国の農業者らが日本の産地を視察した際、「べにはるか」の種芋を無断で持ち帰ったのが原因とみられる。2015年ごろから南部地域の全羅南道海南郡で栽培が始まり、18年には同国のサツマイモ栽培面積(2万753ヘクタール)の4割に達している。
現地で「べにはるか」は5キロ当たり1000~2000円と、日本産の日本国内での価格より安く出回っている。短期間に栽培が拡大したのは、韓国の公共機関である地方技術センターが組織培養を進め「海南1号」として、安価な苗を提供したことが背景にある。
同国で種子を管理する機関である国立種子院に、こうした状態を「どう取り締まるか」を電話取材すると、同院は「担当者がいないためメールで回答する」と答えた。しかし、14日までに返事は届いていない。
「べにはるか」は農研機構が開発し、10年に品種登録された。ねっとり系の代表格の一つとして、焼き芋ブームの火付け役ともされている。同機構によると、九州や関東のサツマイモ産地を中心に普及し、ブランド化が進んでいる。
今年1~9月の日本産サツマイモの輸出額は、前年同期比2割増の13億3700万円と伸長。今後も伸びが期待される輸出品目の一つだ。このため、輸出に注力する産地からは、種苗の海外流出に懸念の声が上がる。
関東の産地関係者は、「ねっとり系は海外でも需要が高まっている。将来的には韓国産と競合してしまう可能性がある」と問題視。「国には有効な対策を取ってほしい」と求めている。
農水省によると、9月に行った調査で「韓国や中国に、べにはるかの苗が流出していることは確認している」(食料産業局)という。ただ、現地での栽培の差し止めや損害賠償請求をするのは難しいのが現状だ。
海外で育成者権を行使するためには、現地での品種登録が必要。ただ、新品種保護に関する国際条約(UPOV)では、韓国を含めた多くの国で登録の出願要件が「譲渡が始まってから4年以内」とされているため、「べにはるか」は期限を過ぎており、品種登録ができない。
海外への持ち出しを規制することを盛り込んだ種苗法の改正については、現在、国会で審議している。(金哲洙、斯波希)
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2020年11月15日
豚熱 西日本ピリピリ 「ワクチン帯」後退 感染イノシシ相次ぐ
豚熱に感染した野生イノシシの発見が西日本で相次いでいる。10月中旬以降、奈良、大阪、和歌山の3府県で感染イノシシが初めて確認された。農水省は封じ込めに向け、いわゆる経口ワクチンベルトを設けて対策を進めてきたが、抑え込めていないのが現状だ。西日本での一層の感染拡大が懸念される中、養豚関係者は警戒感を強めている。
野生イノシシを巡っては2018年9月、岐阜県で初めて豚熱の感染を確認。その後、全国にじわじわと広がっている。同省は感染拡大を食い止めようと、経口ワクチンベルト対策を始動。西日本では当初、三重、福井、滋賀の3県を貫くようにワクチンベルトの構築を進めた。
だが、野生イノシシの感染拡大に歯止めがかからない中、ワクチンベルトの“最終ライン”は徐々に移動。現在では、兵庫と京都・大阪の府県境まで後退している。
10月に入り、感染イノシシの確認が近畿地方で相次ぐ。14日の奈良を皮切りに、29日の大阪、30日の和歌山と、立て続けに3府県で確認された。兵庫を除く近畿の全府県に広がった形で、大阪府の担当者は「ここまで感染が広がったのか」(動物愛護畜産課)と驚きを隠さない。
“最終ライン”が突破される懸念も高まっている。大阪で感染イノシシが見つかった場所は、兵庫との府県境までわずか10キロほどの地点だった。
さらに最終ラインが未完成であることも懸念材料だ。新型コロナウイルスの影響で経口ワクチンの輸入が止まり散布が遅れるなどしたためだ。散布作業は11月中旬までかかり、それまでは感染イノシシが素通りする恐れもある。
兵庫県の担当者は「イノシシの移動距離などを考えると、既に突破されている可能性がある」(畜産課)と危機感をあらわにする。
豚熱の終息に向け、野生イノシシでの早期封じ込めは不可欠だ。現在、農水省は飼養豚へのワクチン接種を進めるが、十分な免疫を獲得できる豚は8割程度にとどまり、感染リスクは完全にはなくならない。ウイルスを持つイノシシがいる限り、生産者は常に侵入リスクを抱えながら養豚を営むことになる。
北海道大学大学院の迫田義博教授は「野生イノシシでの感染が予想以上に早く広がっている。さらに先回りして経口ワクチンを散布するなど、対策の再検討が必要だ」と指摘する。
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2020年11月15日
イタリア北部 キウイ産地非常事態 衰弱症候群まん延 原因不明、温暖化関連か
イタリア北部のキウイフルーツ産地では、現地農家が「死」と呼ぶ原因不明の衰弱症候群が広がっている。世界第2の生産量を誇る同国産キウイフルーツの1割以上が伐採処分された。政府は非常事態とみて対策を急ぐ。研究者らは地球温暖化で土壌中の温度が上昇し、湿害が長期化することが症候群と関連しているとみている。(特別編集委員・山田優)
同国北部で被害が表面化したのは、今から8年ほど前。生育良好に見えた木の葉が……
2020年11月15日
百貨店 福袋に「黒毛和牛」 コロナ禍で商品展開も変化
百貨店が、新型コロナウイルス禍で高まる家庭需要をターゲットにした福袋商品を展開している。巣ごもりでもぜいたくメニューを楽しめる黒毛和牛のサブスクリプション(定額課金)サービスや、旅行気分が楽しめるご当地グルメなどを売り込む。感染予防のため抽選や予約を強化するなど混雑回避の工夫もする。
東武百貨店池袋本店は、応募抽選型の商品を用意。2点限定の「国内産黒毛和牛半頭分を食べつくすサブスク福袋」(150万円)は、ロースやサーロインなどを1~3月まで受け取れる。この他、旬のフルーツが12カ月間楽しめるお得なセットを用意してアピールする。申し込みは、12月1日から。同社は「自宅で楽しんでほしい」と話す。
「いったつもりのご当地スープ福袋」(松屋銀座提供)
松屋銀座は、旅行気分が楽しめるご当地グルメなどを集める。「いったつもりのご当地スープ福袋」(3240円)は、30袋限定で「仙台・牛テールスープ風」や「神戸・淡路島たまねぎスープ」などが味わえる。
雑貨などの販売を手掛けるサザビーリーグ(東京都渋谷区)が運営する「AKOMEYA TOKYO」は、島根県飯南町産「コシヒカリ」2合が入った「福袋」(3000円・税別)を用意。せんべいやお買い物割引チケットなどを合わせる。予約は、12月1日から順次開始する。
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2020年11月15日
ニンジン端境も1割安 業務、加工用で引き鈍く
ニンジンが産地の切り替わりに伴って端境となり、入荷が減っている。11月上旬の全国大手7卸の販売量は2355トンと、平年(過去5年平均)の8%減。北の産地は切り上がりが早まる一方、後続産地の出方が鈍い。ただ、重量野菜の相場安もあり、日農平均価格(7卸のデータを集計)は1キロ114円と同12%安にとどまる……
2020年11月13日
初の家庭で楽しむ花コンテスト 詰め替えて利用可能 タンブラーが大賞に
日本フローラルマーケティング協会(JFMA)は11日、花の家庭消費拡大に向けた企画を競うコンテストの結果を発表した。新型コロナウイルス禍の外出自粛を機に、花を家で楽しむ人が増えたことで、初めて実施。神奈川県の河野理絵さんの「カスタマイズできるタンブラーフラワー」が大賞に選ばれた……
2020年11月12日
おいしい米 作って攻略 神明が協力 ゲーム発売
種もみの選別から田植え、草刈り、収穫に至るまで米作りの全てをゲームの中で──。ゲームメーカーのマーベラス(東京都品川区)は12日、本格的に稲作を楽しめるゲームソフト「天穂(てんすい)のサクナヒメ」を発売する。大手米卸の神明グループと連携して、ソフトや米が当たるキャンペーンも行う。
「天穂のサクナヒメ」は、鬼が支配する「ヒノエ島」を舞台に、豊穣(ほうじょう)神サクナヒメが鬼と闘うアクションロールプレーイングゲーム。サクナヒメは、自ら育てた高品質な米を食べることで強くなるので、いかに良質な米を作るかが攻略の鍵を握る。
希望小売価格は4980円(税別)。「プレイステーション4」用と「ニンテンドースイッチ」用がある。発売に合わせたキャンペーンでは、インターネット交流サイト(SNS)のツイッターで「お米の神明」アカウントをフォロー・リツイートすると、新作ゲームソフトや神明グループのブランド「あかふじ米」2キロが当たる。同グループは「ゲームを通じて、米作りに興味を持ってほしい」としている。
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2020年11月12日
動画チャンネル、産地ツアー、調理実演… ブランド米販促 オンラインに道
ブランド米の産地が、動画配信などインターネットを活用した新たな販売促進に力を入れている。2020年産は新型コロナウイルス禍で需要の落ち込みが懸念される上に、対面でのPR活動も制限されている。オンラインの産地ツアーや調理実演を展開し、遠隔の実需者や消費者に産地のこだわりと銘柄米の魅力などを発信。新たな販路の開拓を目指している。(玉井理美)
福井県オリジナル品種「いちほまれ」のPRを行う「ふくいブランド米推進協議会」は今年、北海道、岩手、新潟のJAなど全国8産地と連携して、動画投稿サイト・ユーチューブに「こだわり米の産地情報チャンネル」を立ち上げた。
産地と実需者が情報共有する卸主催の会議が今年、コロナ禍で中止になった。代わりに、同チャンネルの活用を他産地にも呼び掛け、実現した。7、8月は全国の米穀店向けの限定公開で、各産地が稲の生育状況などを配信。今後は消費者向けの販促にも活用する。
「いちほまれ」の生育状況を説明した動画の閲覧数は200を超え、従来の会議参加者を上回った。協議会の担当者は「対面で話すのに越したことはないが、インターネットではどこからでもアクセスでき、多くの米穀店に見てもらえた」と話す。複数の産地が共同で情報発信することで、単独で行うよりも実需者や消費者への発信力が高まるとみる。
岩手県のオリジナル品種「金色の風」を知ってもらおうと、JAいわて平泉の栽培研究会と県県南広域振興局は10月下旬、全国のお米マイスターを対象にしたオンライン産地ツアーを開いた。
生産者が特別栽培の取り組みなどを説明し、参加者は乾燥調製施設を画面を通して見学。お米マイスターとは、どう販売していくかで意見交換した。産地訪問の代わりだったが、県は「首都圏の参加者を想定していた中で、香川や大阪など遠隔地からも参加がありよかった」と指摘する。年明けに2回目を予定する。
オンラインで配信した「とちぎの星」の調理実演の様子
とちぎ農産物マーケティング協会は10月下旬、県のオリジナル品種「とちぎの星」の調理実演会をオンラインで開いた。東京都内の飲食店やお米マイスターなどが対象。参加者には事前に「とちぎの星」を使った弁当を宅配した。その上で、弁当に入れたチャーハンや丼などの調理実演動画を配信し、大粒で冷めてもおいしい米をアピールした。
協会は「知名度とブランド力向上が課題。映像だけでなく、実際の試食と組み合わせることでおいしさも伝えようとした。参加者には、消費者への販売提案に役立ててもらいたい」と話す。
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2020年11月08日
神社の銅屋根盗難多発 関東、転売目的か
茨城県や千葉県、栃木県の神社で、銅製の屋根や扉などが盗まれる被害が相次いでいる。犯行は夜間に多く、千葉県警などは、転売目的による犯行の可能性もあるとみて捜査している。
茨城県では今年は10月20日までに75件の被害が発生。被害額が400万円に上るものもあるという。千葉県警によると、今年は10月13日時点で、香取市や佐倉市など5市で8件の被害があった。4件は9、10月に起きた。栃木県神社庁によると、今年は10月29日時点で佐野市や小山市で2件の被害があった。
無人狙い 氏子「罰当たり」
被害があった神社の多くは宮司が常駐しない神社だ。千葉県香取市の天之宮神社では9月中旬、本殿の銅製の屋根が縦約6メートル、横約5メートルにわたり盗まれているのを農家が見つけ、警察に被害を届け出た。
ちょうず場が倒され、縦約60センチ、横約2メートルの銅屋根も盗まれた。神社は木立に囲まれ、周囲に民家はない。屋根の約3分の2が盗まれ、現在は雨漏りを防ぐためブルーシートで覆っている。修理には約250万円かかるという。
「農作業の合間に一日の無事や豊作を祈る、農家の心を癒やしてきた場所。罰当たりで人心を傷つける」と、氏子で稲作農家の星野茂男さん(70)は怒りをにじませる。犯人は夜中に本殿脇の神木の囲いに足を掛け、持ち込んだはしごを使って登り、屋根を剥がしたとみる。
神社は無人で防犯カメラはない。市内神社の宮司が神事をし、氏子51戸が境内の清掃などの管理をしてきた。氏子で稲作農家の星野豊雄さん(83)は「住民からの寄付で350万円を集め、38年ぶりに改修したばかりなのに」と肩を落とす。
銅は世界で需要があり、国内相場は1キロ700円前後と高値で安定している。県警は転売目的や、神社の飾り金具や紋などを収集するマニアによる犯行の可能性もあるとみて捜査している。
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2020年11月04日
流通量「巨峰」抜きシャイン初の王座 手軽さ人気に火 高単価で改植進む
東京など4大市場で10月中旬までに取引された2020年産ブドウの中で、「シャインマスカット」が流通量全体の31%を占め、「巨峰」を抜いて初めてトップに立ったことが分かった。ブドウの生産量は減少傾向だが、黒系ブドウからの改植が進み、品種構成は大きく変化している。(高梨森香)
日本園芸農業協同組合連合会(日園連)によると、2020年産シャインの流通量は、10月中旬までで8901トンだった。一方、巨峰は7363トンで全体の25%。前年はシャインと27%で同率だったが、今年初めてシャインが31%で首位になった。シャインは11月以降も出荷があるためシェアはさらに高くなる可能性がある。
「シャインマスカット」は06年に品種登録されると、種なしで皮ごと食べられる手軽さや食味の良さから人気に火が付き、取引価格が上昇した。4大市場での1キロ当たり価格は11年に1574円だったが、18年以降は2000円前後の高値で推移している。
栽培面では樹勢が良く多収。高単価も期待できるため、生産農家が増えた。農水省の統計によると、11年に26都府県で379ヘクタールだった栽培面積はデータがある直近の17年には41都府県、1378ヘクタールまで拡大した。主産地のJA全農長野の担当者は「農家所得を上げられ、他品種からの改植や他品目からの参入が進んだ」と話す。
他のブドウに比べて棚持ちが良く、流通業者の評価も高い。生産量が増え、売り場が果実専門店だけでなくスーパーにも広がった。現在、シャインの約6割がスーパーで販売される。首都圏に展開するスーパー「いなげや」は、20年9月単月の取扱量が5年前に比べ5倍以上に増加。「単価は輸入ブドウの倍以上でも、売れ行きが良い」という。
シャインブームは当面続く見方が強いが、全農長野の担当者は「シャインだから売れる時代ではなくなってきた」と指摘。「生産の広がりに伴って品質のばらつきが出ていて課題だ。1房500~550グラム、30~40粒、糖度は19以上という出荷基準を設けて指名買いされるよう品質を保っていく」と、産地間競争を見据える。
大手青果卸・東京青果は「スーパーでのパック売りに対応した小房での販売など、需要に応じた供給ができる産地が注目される」と展望する。
<ことば> 4大市場
東京、首都圏、名古屋、関西圏にある果実を扱う大規模市場の通称で、計37市場ある。4大市場は市場流通する果実の3分の1を取引する。
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2020年11月02日