おいしい米 作って攻略 神明が協力 ゲーム発売
2020年11月12日
本格的に稲作を楽しめる新作ゲームソフト「天穂のサクナヒメ」(神明グループ提供)
種もみの選別から田植え、草刈り、収穫に至るまで米作りの全てをゲームの中で──。ゲームメーカーのマーベラス(東京都品川区)は12日、本格的に稲作を楽しめるゲームソフト「天穂(てんすい)のサクナヒメ」を発売する。大手米卸の神明グループと連携して、ソフトや米が当たるキャンペーンも行う。
「天穂のサクナヒメ」は、鬼が支配する「ヒノエ島」を舞台に、豊穣(ほうじょう)神サクナヒメが鬼と闘うアクションロールプレーイングゲーム。サクナヒメは、自ら育てた高品質な米を食べることで強くなるので、いかに良質な米を作るかが攻略の鍵を握る。
希望小売価格は4980円(税別)。「プレイステーション4」用と「ニンテンドースイッチ」用がある。発売に合わせたキャンペーンでは、インターネット交流サイト(SNS)のツイッターで「お米の神明」アカウントをフォロー・リツイートすると、新作ゲームソフトや神明グループのブランド「あかふじ米」2キロが当たる。同グループは「ゲームを通じて、米作りに興味を持ってほしい」としている。
「天穂のサクナヒメ」は、鬼が支配する「ヒノエ島」を舞台に、豊穣(ほうじょう)神サクナヒメが鬼と闘うアクションロールプレーイングゲーム。サクナヒメは、自ら育てた高品質な米を食べることで強くなるので、いかに良質な米を作るかが攻略の鍵を握る。
希望小売価格は4980円(税別)。「プレイステーション4」用と「ニンテンドースイッチ」用がある。発売に合わせたキャンペーンでは、インターネット交流サイト(SNS)のツイッターで「お米の神明」アカウントをフォロー・リツイートすると、新作ゲームソフトや神明グループのブランド「あかふじ米」2キロが当たる。同グループは「ゲームを通じて、米作りに興味を持ってほしい」としている。
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米国大統領選挙の勝利宣言でバイデン氏が「誰も置き去りにしない米国」を目標に挙げた時、米沢藩主の上杉鷹山が頭に浮かんだ
米国大統領選挙の勝利宣言でバイデン氏が「誰も置き去りにしない米国」を目標に挙げた時、米沢藩主の上杉鷹山が頭に浮かんだ▼国連の持続可能な開発目標(SDGs)が目指す社会と重なるが、鷹山は為政者としてそれを実践した。彼の福祉政策の方針が「三助」、「自ら助ける自助」「近隣社会が助け合う互助」「藩政府が手を伸ばす扶助」である。『小説 上杉鷹山』など童門冬二さんの著作に詳しい▼鷹山は子どもの間引きを禁止し、老人、病人、子ども、妊婦ら弱者の救済にも力を入れた。しかし藩は財政難で、予算が足らない。そこで民を富まし、村を豊かにするために漆や桑、コウゾなどの栽培と価値を高める加工を奨励。技術指導者を他国から招き、藩士の家族も労働力として活用した。自助・互助のための基盤整備と言えよう▼「三助」と同趣旨の「自助・共助・公助」を菅首相が目指す社会像に掲げ、「自助努力を迫っている」などと批判されたが、言葉は悪くない。自助・共助が可能となるよう国は何をするのか。説明が足らない▼勝利宣言でバイデン氏は、トランプ大統領と自身の支持者に「互いに耳を傾けよう」と呼び掛けた。異論を唱える者を敵とみなしては、社会は前進しない。これも、日本の政治にとって示唆的な言葉である。
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2020年11月10日
新米をいただく
新米をいただく。今年は北海道の友人が送ってくれた「ゆめぴりか」。炊飯器を開けた時の湯気と真っ白なご飯。ちょっと華やいだ気持ちになる。これを新潟から取り寄せた寒風干しのサケで▼口に入れて程よい甘味がある。何も足さない、引かない。若い時は意識しなかったが、毎日食べるもので天然の味はありがたい。これは牛乳にも言える。巣ごもり需要で米の家庭内消費は増えた。が、現実は厳しい▼総務省の家計消費(9月)によれば、1世帯当たりの米の購入金額は2403円。対してパンは2519円、新米の出回り期は接近するが、それ以外は1000円ぐらいの差の月もある。振り向けばカップラーメンなどの麺類が迫る。パスタや冷凍調理食品はコロナ禍で米以上に消費を伸ばした。キーワードは〈簡便さ〉である▼この時期、有名タレントを起用した各地のブランド米のCMをよく見る。けちを付ける気は毛頭ないのだが、炊きたてのご飯のイメージから脱していない。流通経済研究所の折笠俊輔氏が本紙で興味深い提言をしている。「もっと食べよう」ではなく、「食べる場面」をもっと増やそうと。例えば「洋食にライス」「子育てに米」▼都会で一人暮らしをする学生の孤独が浮き彫りに。「学生こそ新米」もありではないか。
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2020年11月12日
コロナ拡大の兆し 冬季の備え再度点検を
冬の足音とともに、新型コロナウイルス感染が再び拡大する兆しがうかがえる。経済活動の本格的な再開が期待されるが、あくまで感染防止とセットである。感染が広がれば人の動きは鈍る。一人一人が改めて冬季の感染リスクへの意識レベルを引き上げ、感染防止対策を地道に実践したい。
気になるのは強烈な第2波に見舞われている欧州の動向である。フランス、スペイン、イタリア、英国などの新規感染は1日当たりそれぞれ数万人に上り、再び外出規制に踏み切った。今春の第1波の感染規模を大きく上回る。大統領選の陰に隠れたが、米国も新規感染が10万人台と過去最高水準で推移する。新型コロナは世界では収束どころか猛威が拡大している。
日本では累積感染者数が10月29日に10万人を超えた。欧米に比べれば少ないが、アジア諸国の中では多く、中国を上回る。感染が横ばいで推移してきた東京都はここにきて増加傾向が見られ、地方でもじわり増えてきた。中でも北海道は過去最多の感染者数を更新、抑え込めないまま本格的な冬を迎えた。
感染者数の増大は検査数が増えていることも背景にあるが、冬場の流行期を前に警戒の感度を高める必要がある。低温、低湿度の環境が感染を広げやすいことは、さまざまな研究から分かっている。理化学研究所のスーパーコンピューター「富岳」を使ったシミュレーションによれば、湿度が30%では60%に比べ、1・8メートル先に届く飛沫(ひまつ)の量は2倍以上になった。しかも寒くなると人間の粘膜の防御力は低下する。欧州の大感染は、日本より一足早く冬が到来したことも要因の一つとみる専門家もいる。
日本は「GoToトラベル・イート」で人の移動が増えている。観光地や繁華街ではコロナ禍前と変わらないような人出が見られる。行くことを止めることはできないが、用心を怠らないでほしい。マスク着用、手指消毒、身体的距離の確保など基本の対策をしっかり行おう。
農産物は、家庭内消費は堅調ながら、外食・業務用需要の喪失の影響がじわり出てきた。北海道では小豆、テンサイも影響を受ける。中でも米は業務用の取引が鈍い。感染が長引けば影響を引きずるが、拡大局面になれば消費への打撃はてきめんに表れる。懸念される第3波の感染をできる限り低い山に抑えるには、一人一人が対策に地道に取り組むしかない。また、重症化リスクの高い高齢者への拡大防止に細心の注意を払いたい。
JAの事業所も改めて感染対策を点検する必要がある。特に店舗や直売所など大勢の人が集まりやすい場所は検温、消毒、マスク着用はもちろんだが、感染ステージに応じて例えば入場制限を導入するなど対策を準備しておくべきだ。購買時間があまりかからない野菜ボックスの販売やドライブスルー方式なども有効だ。備えが大事である。
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2020年11月08日
RCEP、重要品目を除外 合意案はTPPより低水準
日本と中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN、10カ国)などで交渉していた東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の農業分野の大筋合意案が10日、判明した。米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物の重要5品目や、鶏肉・鶏肉調製品は関税削減・撤廃の対象から除外する。参加国は11日に閣僚会合、15日に首脳会合をテレビ会議で開き、合意・署名する方向で最終調整。インドは参加を見送る。
RCEPは日中韓とASEAN、オーストラリア、ニュージーランド(NZ)、インドの16カ国で2012年に交渉を立ち上げた経済連携協定(EPA)。合意すれば中国、韓国とは初めて結ぶEPAとなる。インドは今年に入り、交渉会合への欠席が続いていた。
大筋合意案では、農林水産物の関税を撤廃する品目の割合を、環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)とのEPA(82%)より低い水準とする。対中国は56%。冷凍の野菜調製品や乾燥野菜などの関税(9%)は段階的に撤廃する一方、加工・業務用で国産への切り替えを目指しているタマネギ、ネギなどの野菜については関税削減・撤廃の対象から除外する。
韓国には野菜を基本的に除外とするなど、関税撤廃率を中国よりも低い49%に抑えた。既にEPAやTPPを締結しているASEANやオーストラリア、NZには61%とし、既存の協定の範囲内の水準に収めた。
一方、日本から輸出する農産物・食品では、中国が課しているパックご飯や米菓、切り花などへの関税を段階的に削減し撤廃。日本酒や焼酎、ウイスキーは、中国や韓国が課している関税を段階的に削減・撤廃する。
経産相、きょう閣僚会合 首脳会合は15日に
梶山弘志経済産業相は10日の閣議後記者会見で、RCEP交渉の閣僚会合が11日、首脳会合が15日に開かれるとの日程を正式に発表した。いずれもテレビ会議形式で行い、閣僚会合には梶山経産相が出席する。
インドを除く参加15カ国は首脳会合までに大筋合意し、同会合での署名を視野に入れる。梶山経産相は「最終局面の文言も含めて、ぎりぎりの交渉調整をしている」と述べた。一方、野上浩太郎農相は同日の閣議後記者会見で、交渉が続いていることを理由に詳細を明かさなかった。
RCEPは日中韓と東南アジア諸国連合(ASEAN、10カ国)、オーストラリア、ニュージーランド(NZ)、インドの16カ国で2012年に交渉を立ち上げた経済連携協定(EPA)。だがインドは昨年、関税削減によって安価な物品が中国から流入することを懸念し、交渉から事実上離脱している。合意すれば、日本にとって中国、韓国とは初めての貿易協定となる。ASEAN全体や、ASEAN加盟のタイなどとはEPA、オーストラリアやNZとは環太平洋連携協定(TPP)を既に締結している。
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2020年11月11日
JA米政策提案 需給安定へ産地支援を
米の需給緩和が懸念される中で、JA全中は水田農業対策に関するJAグループの政策提案を決め、要請活動を展開している。需給安定には、2021年産での主食用米の大幅な減産が必要だ。政策提案を踏まえ政府・与党は、産地の生産調整の取り組みを後押しする十分な支援策を示すべきだ。
農水省が提示した21年産の適正生産量は693万トン。20年産の生産量より30万トン少ない。仮に20年産の作柄が平年並みだったとすると、40万トン近く減らさなくてはならない計算だ。主食用米を生産する全ての農家が作付面積の5%を転換し、ようやく達成できる数字である。
需要に応じた生産ができなければ需給が緩和し、大幅な米価の下落につながるとの懸念が強い。再生産価格を下回れば水田農業の存続が危うくなり、国民への食料供給も不安定化しかねない。全中の中家徹会長は、野上浩太郎農相との会談で「これからの取り組みが日本の水田農業の行く末を左右しかねない」と危機感をあらわにした。
産地では、21年度の水田活用を巡って協議が本格化する。飼料用米をはじめとした非主食用や輸出用米、野菜などへの転換が考えられる。米需給の厳しい現状を農業者、JA、集荷業者、自治体、実需者ら幅広い関係者で共有し、実効ある取り組みを水田フル活用ビジョンに落とし込んでほしい。
一方、政府が米政策を見直した18年産以降、作柄の低下で需給は均衡したが、適正生産量に見合った作付け転換は進まなかった。このため政策提案は、大幅な減産が可能になるよう政策支援の拡充の重要性を指摘し、対策とセットで産地が取り組みを提案、協議できるようにする必要があるとの考えを示した。
特に産地単位の取り組みへの支援を重視。作付け転換した生産者が、主食用米に比べて不利にならないような対策を求める。食料・農業・農村基本計画で掲げた麦・大豆の増産対策も盛り込んだ。推進体制も課題だ。JAグループだけでは限界があり、農業再生協議会、行政が連携する必要があるとした。
新型コロナウイルス禍により、業務用米を中心に需要の減少が深刻だ。備蓄米は適正水準の100万トンに届いておらず、運用改善などを提案する。既存事業の拡充による販売拡大などへの助成も提起した。
水田農業政策全体の制度検証も必要だとした。需給だけでなく、生産振興、担い手、農地、地域対策などを含め総合的な検証と必要な見直しを訴える。
米の消費拡大も必要だ。日本の気候風土に適し、多面的機能を持つ水田を守るには米を食べることが重要だとの認識を広げたい。食と農に関する国民運動を政府は基本計画で提起した。JAグループだけでなく、他の協同組合や消費者・経済団体などとも連携し、水田の大切さへの理解や消費拡大を進める運動に官民一体で取り組むべきだ。
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2020年11月13日
経済の新着記事
ニンジン端境も1割安 業務、加工用で引き鈍く
ニンジンが産地の切り替わりに伴って端境となり、入荷が減っている。11月上旬の全国大手7卸の販売量は2355トンと、平年(過去5年平均)の8%減。北の産地は切り上がりが早まる一方、後続産地の出方が鈍い。ただ、重量野菜の相場安もあり、日農平均価格(7卸のデータを集計)は1キロ114円と同12%安にとどまる……
2020年11月13日
初の家庭で楽しむ花コンテスト 詰め替えて利用可能 タンブラーが大賞に
日本フローラルマーケティング協会(JFMA)は11日、花の家庭消費拡大に向けた企画を競うコンテストの結果を発表した。新型コロナウイルス禍の外出自粛を機に、花を家で楽しむ人が増えたことで、初めて実施。神奈川県の河野理絵さんの「カスタマイズできるタンブラーフラワー」が大賞に選ばれた……
2020年11月12日
おいしい米 作って攻略 神明が協力 ゲーム発売
種もみの選別から田植え、草刈り、収穫に至るまで米作りの全てをゲームの中で──。ゲームメーカーのマーベラス(東京都品川区)は12日、本格的に稲作を楽しめるゲームソフト「天穂(てんすい)のサクナヒメ」を発売する。大手米卸の神明グループと連携して、ソフトや米が当たるキャンペーンも行う。
「天穂のサクナヒメ」は、鬼が支配する「ヒノエ島」を舞台に、豊穣(ほうじょう)神サクナヒメが鬼と闘うアクションロールプレーイングゲーム。サクナヒメは、自ら育てた高品質な米を食べることで強くなるので、いかに良質な米を作るかが攻略の鍵を握る。
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2020年11月12日
動画チャンネル、産地ツアー、調理実演… ブランド米販促 オンラインに道
ブランド米の産地が、動画配信などインターネットを活用した新たな販売促進に力を入れている。2020年産は新型コロナウイルス禍で需要の落ち込みが懸念される上に、対面でのPR活動も制限されている。オンラインの産地ツアーや調理実演を展開し、遠隔の実需者や消費者に産地のこだわりと銘柄米の魅力などを発信。新たな販路の開拓を目指している。(玉井理美)
福井県オリジナル品種「いちほまれ」のPRを行う「ふくいブランド米推進協議会」は今年、北海道、岩手、新潟のJAなど全国8産地と連携して、動画投稿サイト・ユーチューブに「こだわり米の産地情報チャンネル」を立ち上げた。
産地と実需者が情報共有する卸主催の会議が今年、コロナ禍で中止になった。代わりに、同チャンネルの活用を他産地にも呼び掛け、実現した。7、8月は全国の米穀店向けの限定公開で、各産地が稲の生育状況などを配信。今後は消費者向けの販促にも活用する。
「いちほまれ」の生育状況を説明した動画の閲覧数は200を超え、従来の会議参加者を上回った。協議会の担当者は「対面で話すのに越したことはないが、インターネットではどこからでもアクセスでき、多くの米穀店に見てもらえた」と話す。複数の産地が共同で情報発信することで、単独で行うよりも実需者や消費者への発信力が高まるとみる。
岩手県のオリジナル品種「金色の風」を知ってもらおうと、JAいわて平泉の栽培研究会と県県南広域振興局は10月下旬、全国のお米マイスターを対象にしたオンライン産地ツアーを開いた。
生産者が特別栽培の取り組みなどを説明し、参加者は乾燥調製施設を画面を通して見学。お米マイスターとは、どう販売していくかで意見交換した。産地訪問の代わりだったが、県は「首都圏の参加者を想定していた中で、香川や大阪など遠隔地からも参加がありよかった」と指摘する。年明けに2回目を予定する。
オンラインで配信した「とちぎの星」の調理実演の様子
とちぎ農産物マーケティング協会は10月下旬、県のオリジナル品種「とちぎの星」の調理実演会をオンラインで開いた。東京都内の飲食店やお米マイスターなどが対象。参加者には事前に「とちぎの星」を使った弁当を宅配した。その上で、弁当に入れたチャーハンや丼などの調理実演動画を配信し、大粒で冷めてもおいしい米をアピールした。
協会は「知名度とブランド力向上が課題。映像だけでなく、実際の試食と組み合わせることでおいしさも伝えようとした。参加者には、消費者への販売提案に役立ててもらいたい」と話す。
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2020年11月08日
神社の銅屋根盗難多発 関東、転売目的か
茨城県や千葉県、栃木県の神社で、銅製の屋根や扉などが盗まれる被害が相次いでいる。犯行は夜間に多く、千葉県警などは、転売目的による犯行の可能性もあるとみて捜査している。
茨城県では今年は10月20日までに75件の被害が発生。被害額が400万円に上るものもあるという。千葉県警によると、今年は10月13日時点で、香取市や佐倉市など5市で8件の被害があった。4件は9、10月に起きた。栃木県神社庁によると、今年は10月29日時点で佐野市や小山市で2件の被害があった。
無人狙い 氏子「罰当たり」
被害があった神社の多くは宮司が常駐しない神社だ。千葉県香取市の天之宮神社では9月中旬、本殿の銅製の屋根が縦約6メートル、横約5メートルにわたり盗まれているのを農家が見つけ、警察に被害を届け出た。
ちょうず場が倒され、縦約60センチ、横約2メートルの銅屋根も盗まれた。神社は木立に囲まれ、周囲に民家はない。屋根の約3分の2が盗まれ、現在は雨漏りを防ぐためブルーシートで覆っている。修理には約250万円かかるという。
「農作業の合間に一日の無事や豊作を祈る、農家の心を癒やしてきた場所。罰当たりで人心を傷つける」と、氏子で稲作農家の星野茂男さん(70)は怒りをにじませる。犯人は夜中に本殿脇の神木の囲いに足を掛け、持ち込んだはしごを使って登り、屋根を剥がしたとみる。
神社は無人で防犯カメラはない。市内神社の宮司が神事をし、氏子51戸が境内の清掃などの管理をしてきた。氏子で稲作農家の星野豊雄さん(83)は「住民からの寄付で350万円を集め、38年ぶりに改修したばかりなのに」と肩を落とす。
銅は世界で需要があり、国内相場は1キロ700円前後と高値で安定している。県警は転売目的や、神社の飾り金具や紋などを収集するマニアによる犯行の可能性もあるとみて捜査している。
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2020年11月04日
流通量「巨峰」抜きシャイン初の王座 手軽さ人気に火 高単価で改植進む
東京など4大市場で10月中旬までに取引された2020年産ブドウの中で、「シャインマスカット」が流通量全体の31%を占め、「巨峰」を抜いて初めてトップに立ったことが分かった。ブドウの生産量は減少傾向だが、黒系ブドウからの改植が進み、品種構成は大きく変化している。(高梨森香)
日本園芸農業協同組合連合会(日園連)によると、2020年産シャインの流通量は、10月中旬までで8901トンだった。一方、巨峰は7363トンで全体の25%。前年はシャインと27%で同率だったが、今年初めてシャインが31%で首位になった。シャインは11月以降も出荷があるためシェアはさらに高くなる可能性がある。
「シャインマスカット」は06年に品種登録されると、種なしで皮ごと食べられる手軽さや食味の良さから人気に火が付き、取引価格が上昇した。4大市場での1キロ当たり価格は11年に1574円だったが、18年以降は2000円前後の高値で推移している。
栽培面では樹勢が良く多収。高単価も期待できるため、生産農家が増えた。農水省の統計によると、11年に26都府県で379ヘクタールだった栽培面積はデータがある直近の17年には41都府県、1378ヘクタールまで拡大した。主産地のJA全農長野の担当者は「農家所得を上げられ、他品種からの改植や他品目からの参入が進んだ」と話す。
他のブドウに比べて棚持ちが良く、流通業者の評価も高い。生産量が増え、売り場が果実専門店だけでなくスーパーにも広がった。現在、シャインの約6割がスーパーで販売される。首都圏に展開するスーパー「いなげや」は、20年9月単月の取扱量が5年前に比べ5倍以上に増加。「単価は輸入ブドウの倍以上でも、売れ行きが良い」という。
シャインブームは当面続く見方が強いが、全農長野の担当者は「シャインだから売れる時代ではなくなってきた」と指摘。「生産の広がりに伴って品質のばらつきが出ていて課題だ。1房500~550グラム、30~40粒、糖度は19以上という出荷基準を設けて指名買いされるよう品質を保っていく」と、産地間競争を見据える。
大手青果卸・東京青果は「スーパーでのパック売りに対応した小房での販売など、需要に応じた供給ができる産地が注目される」と展望する。
<ことば> 4大市場
東京、首都圏、名古屋、関西圏にある果実を扱う大規模市場の通称で、計37市場ある。4大市場は市場流通する果実の3分の1を取引する。
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2020年11月02日
日本産輸出に追い風 中国が越境EC規制緩和
日本農林水産物・食品の輸出拡大に新たなチャンスが到来した。新型コロナウイルス禍で非対面取引の需要が増えたことで、中国の越境電子商取引(EC)の利用者が急増した上、新たな貿易形態による輸入品に大幅な規制緩和が適用されるためだ。
手続き簡単 税金も安く
インターネットの情報管理などを進める政府傘下の中国互聯網絡信息中心(CNNIC)の9月の報告によると、ECを利用した購買者数は6月現在、7億4939万人で、ネット利用者の8割を占める。うち1億3800万人が「越境EC」と呼ばれるサイトで海外商品を購入した。
日本の農水省に当たる農業農村部が9月にまとめた報告書によると、2019年の越境ECの輸入商品のうち、食品・飲料などは311億元(約5000億円)で売上高2位。特に粉ミルクや生鮮品の輸入が目立った。
背景には、越境EC商品に対する大幅な規制緩和がある。食料、油、野菜、果実、肉類、ミルク類、海産品など、ほとんどの農林水産物を網羅している。これらの商品に対し、一般的な貿易は許可手続きなどに1~3年かかる。しかし越境ECなら2~6カ月に短縮される。
例えば、輸入許可証や登録。一般貿易では、これらの手続きが欠かせない。その半面、越境EC商品は、政府公表の輸入リストに載っている商品であれば、初回であっても輸入許可・登録は必要ない。
検疫現場でも、生鮮農産物に対する検査時間を減らしている。越境ECの生鮮産品に対し、広州、上海などの税関では、検疫・通関作業を従来の2時間から30分へ4分の1に短縮した。
税金も安い。越境ECの商品は無関税だ。ただ、付加価値税などを含む総合税率は6・3%かかる。それでも一般貿易(16%)に比べかなり低い。
商品ラベルについても、越境EC商品は中国語ラベルを貼る必要がない。ネット上で消費者が分かるように中国語で関連情報を伝え、偽物防止のバーコードを掲載することで済む。それとは対照的に、一般貿易商品は、中国語ラベルを貼る必要がある。
農業農村部は、越境ECの農産物貿易は「まだ初期段階で、今後さらに成長する」と分析する。日本産農産物の輸出拡大に向けた活用が求められる。
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2020年11月01日
カフェ、酒店で…規格外の花販売 第一花きと連携 hanane
切り花の市場規格外品の販路が拡大している。生花販売のhanane(ハナネ、東京都港区)は11月から、東京都中央卸売市場北足立市場の生花卸・第一花きと連携を始め、全国の花農家から規格外品の仕入れを強化する。販売先も関西のブックオフに加え、東京や神奈川の酒店や飲食店、衣料品店など約15カ所に広がり、花の廃棄ロスの削減と売り場の活性化につながっている。
同社は従来、産地で市場出荷できずに廃棄する花を買い取り活用する事業を展開。6月に東京都中央卸売市場葛西市場の生花卸・東京フラワーポートと連携を開始後は、従来の月当たり700本から9000本にまで集荷量が増えた。「来年6月にはこれを2万本にまで高める」(同社)ことを目標にする。
「チャンスフラワー」と名付けられた規格外品は従来生花を扱わなかった店舗で毎月、期間を限定して販売。関西のブックオフ2店舗に加え、東京の酒店や食堂、カフェなどの店頭で「花つみ」と題して、季節の切り花が一律100円で並ぶ。
東京都台東区の洋菓子店「まるずcake」は土日限定で入り口外に「花つみ」のコーナーを設置。同店は「花がきっかけでケーキを買う人が常連になったり、常連さんがお花に興味を持ってくれたりして会話が増えた」と手応えを実感している。
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2020年11月01日
[現場ルポ 熱源を歩く] 「夕食は和牛に」 広がりゆく裾野 コロナ禍で内需獲得
平日の午後4時。買い物客でにぎわう横浜市中心部のスーパー。牛肉売り場中央の棚には、きめ細かなさしが入った和牛の精肉が10種類以上並ぶ。市内の主婦(63)は「輸入より断然おいしいし、外で食べるより価格も手頃。最近では夕飯の選択肢に入った」と話し100グラム659円のカルビ3パックを籠に入れた。
輸入牛が台頭していたスーパーの売り場に変化が生じている。新型コロナウイルス禍で卸値が下がったことを背景に、和牛の扱いに力を入れる会社が増えた。関東に126店舗を展開するオーケーは、東京食肉市場を通じ、A5等級の仕入れを強化。従来の4等級と同等、前年より1割近く安く販売する。
内食需要の増加を追い風に今年4~9月期の売り上げは前年比3割増と大きく伸び、消費者の和牛に対する底堅い需要を裏付けた。「霜降り離れといわれているが、手が届く価格帯なら高品質な和牛は売れる」(同社精肉バイヤー)と確信する。
和牛相場は、拡大するインバウンド(訪日外国人)需要や輸出の増加で、2015年以降、過去にない高値が続いてきた。農畜産業振興機構によると、小売価格はこの10年で15%上昇。スーパーでは消費者の節約志向を受け、価格が和牛の3分の1以下の輸入牛がシェアを広げていた。
夏以降、業績の反転攻勢を狙った大手飲食チェーンでも和牛を扱う動きが拡大。牛肉の消費は、外需から内需へ、輸入から国産へのうねりが生まれている。
大手牛丼チェーンの吉野家は、創業以来初となる和牛を使った「黒毛和牛すき鍋膳」を10月に発売。北米産の牛肉を使った1杯400円ほどの牛丼を主力に「うまい、やすい、はやい」を掲げてきた同店が和牛を採用したことは、食肉業界に驚きを与えた。
同社は約1年かけ、全国の卸を通じて仕入れたA3~5等級の和牛を使いつつ、998円(税別)という低価格での提供を実現。同社食肉バイヤーは「独特の香りときめ細かな脂、深みのある味は和牛ならでは」とし和牛のメニュー採用を「悲願」と表現する。
消費の裾野が広がりつつある今、内需獲得の好機をどう生かすのか。産地には、牛と向き合いながら次の一手を模索する生産者の姿がある。
「手頃な価格でみんなに食べてほしいという思いもあるが、再生産可能な価格や和牛らしさを追求することとのジレンマがある」。滋賀県近江八幡市で黒毛和種350頭、交雑種120頭を飼っている鈴木文規さん(37)は複雑な思いを明かす。
東京五輪・パラリンピックの需要を狙い、子牛を高値で導入した生産者は、和牛相場の下落によって大幅な赤字を抱えており、消費の裾野が広がる現状を手放しでは喜べない。
地域で特産「近江牛」を生産する若手13人でつくるグループ「近江大中肉牛研究会『ウシラボ』」内でも、新型コロナ禍の先を見据えた和牛生産への思いはさまざま。ただ、求められる和牛を消費者に届けたいという思いは変わらない。
子牛の導入コストが抑えられる繁殖肥育一貫経営への移行や、売り先の要望に応じた肉質にするための飼養管理など、新たな挑戦の先に産地の未来図を描く。
「今後、明らかに和牛のトレンドは変わる。変化に合わせて自分たちも変わっていかないと生き残れない。変えていくのが若手の役目」。リーダーの橋場芳秀さん(37)の覚悟だ。(斯波希)
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2020年10月26日
豪州干ばつ生産に影響 対日牛肉輸出ダウン 攻勢掛ける米国 来年以降競合再燃も
日本最大の牛肉輸入相手国、オーストラリアからの輸入量が7月以降、前年を大きく下回って推移している。直近の統計がある8月は前年比2割減の約2万トン。近年、同国を襲った干ばつの影響で牛の生産量が減り、現地相場の高値傾向が続いている影響が大きい。一方、米国などは日本への輸出攻勢を強めており、シェア争いが激化している。
貿易統計によると、7月のオーストラリアからの牛肉輸入量は前年比24%減の2万2619トン、8月は同20%減の1万9816トンとなった。全体に占める割合は42%と、7月(43%)に続き、50%を大きく割った。9月も同様の傾向になるとみられる。新型コロナウイルス禍による国内の外食需要の減退で全体的に輸入量は減少傾向だが、特に同国産の減少が大きい。
背景には、天候による同国内での牛の生産量の減少がある。豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、2019~20年にかけての同国の牛の飼養頭数は過去20年で最も少ない約2450万頭となる見込み。MLAは「近年の干ばつで生産者が出荷を早めたため、昨年から今年にかけて牛群の再構築で生産量が減っている」と説明する。
生産減による現地相場の高値で、日本国内の輸入業者の間では、他国産へのシフトが進んでいる。特に攻勢を強めるのが米国産。新型コロナウイルスの感染拡大による現地工場の稼働停止などで減っていたものの、生産量が回復。9月の速報値では前年を14%上回る2万356トンが輸入された。
21年以降、オーストラリアの生産量は回復に向かう見込みで、今後、米国などとの競合が再燃する恐れがある。米国産は環太平洋連携協定(TPP)発効以降、日米貿易協定の発効まで日本向けの食肉輸出で“一人負け”の状態が続いていたこともあり、各国の輸出攻勢には引き続き注視が必要になりそうだ。
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2020年10月26日