上野 景気が悪くなると現実逃避したい欲求に駆られることも、関係していると思います。私が中学・高校生の頃は「アイドルはトイレに行かない」と本気で信じているようなヤツもいて、まさに偶像としての存在だったのです。
三井 私がデビューしたのは2001年、NHK教育テレビの「イタリア語会話」でした。でもブレークできなかったのは、デビューが18歳と遅かったからですかね。
田中 三井さんのデビューしたころは、地方にモー娘。をまねて、たくさんのアイドルグループができていました。その中で生き残ることができたのは、広島で活動を始めたPerfumeぐらい。地方アイドルが選別されたのは、小泉政権時代に景気回復が長く続いたことが影響していたと思います。
アイドルの年齢でいうと、日本社会の少子高齢化とともにアイドルも高齢化しています。AKB48の第一線で活躍する娘が20代前半でも違和感はなくなっています。
僕がアイドルに注目しているのは、そこに日本社会の縮図が見えるからです。今のアイドルを支えているのは、30代や40代のおじさんたち。僕は毎週のようにアイドルの実地調査に出かけていますが、地下アイドルと呼ばれるライブ中心に活動するアイドルを支えているのはおじさんたちです。今はコンサートやライブ会場に女性ファン向けの専用ゾーンがあるのですが、あと2~3年のうちに高齢者専用ゾーンができるはずです。ライブで会場の前に行こうにも、おじさんたちだと勢いに負けてケガする恐怖感があります(笑)。
アイドルの路線変更と景気の関係
上野 田中さんが触れなかった話では、景気が良いときはセクシー系のアイドルが注目されています。2000年代半ばは、ほしのあきさんがグラドルとして注目されていました。最近ですと、2013年ヒットしたテレビドラマ「半沢直樹」にも出演されていた壇蜜さんですね。
セクシー路線でいえば、AKB48のこじはる(小嶋陽菜)が女性下着のPEACH JOHNのCMに登場したのは驚きでした。グループの中でも人気が高い彼女が下着姿を披露するのですから。
田中 アイドルが路線変更した例に山口百恵が挙げられます。少女アイドルとして売り出しましたが、第1次石油ショックから立ち直りかけたころに、篠山紀信の撮影で水着姿を披露しました。当時はそのグラビアをずーっと眺めていたのを思い出します(笑)。テレビドラマでは「赤いシリーズ」で、アンニュイさを醸し出し、少女から大人の女を演じるようになりました。