RCEP署名へ インドも早期に加入を

2020年11月14日 07時44分
 東アジア地域包括的経済連携(RCEP(アールセップ))が十五日、署名される。十五カ国による巨大な自由貿易圏だが、貿易赤字の増大などを理由に交渉から離脱したインドの加入が次の課題であろう。
 RCEP参加国は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の十カ国と日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド。
 域内の人口と国内総生産(GDP)はいずれも世界全体の約三割に達する。トランプ政権で米国が抜けた環太平洋連携協定(TPP)などをしのぐ。日本にとっては最大の貿易相手国である中国、三位の韓国と初めて結ぶ経済連携協定(EPA)になる。
 日本から輸出される自動車や日本酒、焼酎などの関税が段階的に削減・撤廃される。日本へ輸出されるコメや麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の「重要五品目」は関税の撤廃や削減の対象にはせず、国内農家は保護される。一方で、この五品目以外の農産物は、関税が引き下げられる輸入品との価格競争にさらされるなどの側面もある。
 RCEPは二〇一三年から十六カ国で交渉が始まったものの、人口約十三億のインドは離脱した。特に対中国の貿易赤字が巨額に上っており、RCEPが発効すれば、安価な中国製品がさらに流入することを警戒したとみられる。
 インドの離脱には政治的な理由もある。中国との国境地帯では今年、両国軍が衝突。四十五年ぶりに重火器不使用の取り決めが破られ死者も出た。さらに、新型コロナの感染者が世界二位の八百数十万人に上り、国内経済や国際競争力が傷んだままでの加入に二の足を踏んでいる面もありそうだ。
 だが、インド抜きの発効は人口でもGDPでも中国が突出する。
 協定には、発効後十八カ月間、新規加入国を認めない規定が設けられるが、インドについては、交渉開始時からの参加国だったことから、特例扱いとすることになった。同国が希望すれば、無条件で即時に加入できる特別な規定も盛り込まれる。中国の存在感が大きくなりすぎないように、との日本などの思惑も読み取れる。
 政権交代が確実になった米国は、ラストベルト(さび付いた工業地帯)三州への配慮もあって、TPPへの即時復帰は困難ともみられるが、TPPにも参加する日本は、対中牽制(けんせい)の狙いから米国の回帰を期待する。日本はインドのRCEP加盟にも尽力し、二つの巨大経済圏をバランス良く完成させてほしい。

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