前回の「パラメータの意味を知る」編に続いて、コンプレッサー記事第2弾です!
今回は、使用する目的に応じてコンプレッサーを使い分けよう!という内容を書いていきます。
コンプレッサーを使う主な目的は大きく分けて3つ。
それが、
・音量の平均化
・音作りの一環として
・奥行きのコントロール です。
ひとくちにコンプレッサーといっても、設定次第で様々な効果が得られるわけですね。
それぞれの目的別に、ポイントとなるパラメータの設定を紹介していきます。
音量の平均化
ダイナミックレンジ(=音量の大小の差)を埋めるのが、コンプレッサーのもっとも基本的な使用目的です。
まずはこの使い方からやっていきましょう!
ナチュラルにかける場合
はじめに、自然なサウンドにする場合です。
この場合は、圧縮されていることが聴いて分からない程度のかかり具合にしたいので、音量のピークにだけコンプがかかる設定にします。
・レシオ 2:1〜せいぜい4:1
・ニー ソフトニー
・スレッショルド GRが最大でも-6dB程度
ゲインリダクション(GR)メーターを見ながらスレッショルドをじょじょに下げていき、曲中もっとも強くコンプがかかるところでも−6dBくらいまでにしておきます。
機種によっては−6dBでも強めの圧縮感になりますので、この辺りがナチュラルな設定の限界です。
ちなみに、VUメーターとピークメーターだと、GR上の数字が同じでもVUメーターの方が強めにかかっている傾向がありますので、その辺も注意しましょう。
※VUメーターについてはこちらの記事で。
また、アタック/リリースの設定によっても圧縮具合は変わりますので、それらのツマミを動かした場合は、必要に応じて再度スレッショルドを設定することになります。
・アタック トランジェントを削りすぎないようある程度遅めに
適切なアタックを探るには、まず極端に早いアタックタイム設定にして、そこからじょじょに遅くしていくという方法がオススメです。
ピークレベルが大きい箇所を1〜2小節の範囲でループ再生しながらやっていくのがいいでしょう。
トランジェント(=音の立ち上がり部分)がナチュラルに聴こえるタイムを探ってみてください。
・リリース 余韻がしっかり聞こえるようある程度早めに
ヴォーカルなんかを自然に聴かせたいなら、コンプをかけたい音の後続まで圧縮してしまうようではリリースが長すぎるでしょう。
そこでよく言われるのが「リリースは◯分音符の長さで」ってヤツ。
・・・なのですが、リリースタイムはスレッショルドレベルを下回ってからの時間なので、必ずしも音符の長さとは一致しないんです。
ひとつの目安にはなりますけどね。
あくまで耳で聴いて判断しましょう!
こちらは逆に遅めのリリースタイム設定にして、そこからじょじょに早くしていくのがオススメです。
やはりループ再生しながらやってみて、音がスッと前に出て聴こえるタイムを探ってみましょう。
しっかりかける場合
ギターソロ、ベースのスラップ、ロック系のボーカルetc...結構しっかりと圧縮してあげたほうが良いものも多いです。
この場合は、いい意味でコンプくさい音にしてあげます。
・レシオ 3:1〜10:1以上でもOKな場合も
・ニー 求める音に応じて
・スレッショルド GRがほぼ常に振れている状態
最大で-8dBとか−10dBとかいっちゃっても曲調によってはいい感じだったりします。
しっかりと圧縮感を感じられる設定にしましょう。
常に圧縮するならレシオは緩めでスレッショルドを下げ気味。
ピークを中心にかけるならレシオはキツめでスレッショルドは上げ気味になるはずです。
・アタック やや早めでもハマる
先ほどと同じくらい(音の立ち上がりがナチュラルに聴こえるタイム)か、それよりも早めにします。
スラップベースなんかの場合は結構早めにしないと効果が薄いです。
また、ギターのピッキングのムラが目立つ場合などは、早めのアタックタイムで思い切って平坦な音にしてしまうこともあります。
・リリース どのような余韻感にしたいかに応じて
音を前に出したいのであれば、やはり短めが吉。ギターソロなどは余韻は自然な方がいいです。
しっかりとした圧縮感が欲しければ長めにします。
ロック系の男性ボーカルなんかだと、コンプくさい音でも力強さが出るのでアリです。
音作りの一環として
次に、積極的に音を作る目的で使う場合。
パキっとした固い音にする、タイトで引き締まった音にする、歪っぽい音にするetc...コンプレッサーという1つのエフェクターで実に様々な効果が得られます。
トランジェントを抑える/強調する場合
トランジェント、つまり音の立ち上がりをコントロールするにはアタックの設定がキモです。
・アタック 早くすれば柔らかい音、遅くすれば固い音に
アタックタイムを早くすれば柔らかくふわっとした音になります。
打楽器は音の立ち上がりが重要なパートですので、基本的にトランジェントを抑えるのはご法度です。
ただし、スネアやハイハットなどはあえてピークを削って柔らかい音にすることもありますけどね。
逆に、アタックタイムを遅くすれば固く鋭い音になります。
原音の立ち上がり部分にはコンプがかからず、その後の余韻だけを圧縮するため、結果としてトランジェントが強調されるわけです。
余韻を抑える/強調する場合
余韻をコントロールするにはリリースの設定がキモです。
・リリース 早くすれば余韻が目立ち、遅くすればタイトに
リリースタイムを早くすれば余韻が強調された音になります。
トランジェントに比べて相対的に余韻が聴こえるので、前に出たように感じたり、余韻が伸びたかのように感じさせることもできます。
逆に、リリースタイムを遅くすれば締まった音になります。
余韻が抑えられるため音が短くなったように感じ、タイトな締まった音になるのです。
もちろん、後続の音に影響がない程度の長さに留めてくださいね。
歪ませる場合
「コンプで歪み?」と思われるかもしれませんが、こんな感じの音を作れます。
前半が原音、後半がコンプレッサーをかけた音です。
・アタック 最速!
・リリース 最速!
・レシオ がっつり!
アタックもリリースもとにかく最速!にしてください。
レシオもほぼ最大で、音色の好みに応じて調整してみてください。
そもそも歪みというのは、音量の上限に達した信号が潰れて出力されたことによって得られる音です。
ある一定の音量に達した音は切り取られるわけです。
これって、コンプレッサーで強く圧縮したのと同じですよね。
波形を見るとディストーション効果が得られていることがはっきり分かりますね。
ちなみに、低域の方が歪みやすいです。
高域は波形の周期が短いので、アタックタイムを短くしても影響が少ないんですね。
ポンピングサウンドを得る場合
「ポンピング」とは、強く圧縮された音が急激に元のレベルに戻る際に起きる音のうねりのことです。
シャーーーンと鳴るはずのシンバルが、
ワシャーーン のように鳴ってしまうアレですね。
こんな感じの音。
ポンピングは基本的にはNGとされるサウンドです。この音もちょっとうるさくて下品ですよね。
でもコレ、うまく使うと意外とカッコいいのです。
「ドラムのルームマイクをポンピングサウンドにして混ぜる」のがオススメです。
後ろから音が迫ってくるような迫力あるドラムが作れますよ。
・リリース 短め!
かっこいいポンピングサウンドを得るにはリリースは短め。
長くても8分音符くらいまでじゃないでしょうか。
あまり短すぎると歪むので、聴きながら調整していきましょう。
奥行きのコントロール
奥行きをコントロールする目的で使うこともあります。
奥行きというとリバーブやディレイといった空間系エフェクターで作るイメージですが、コンプレッサーも音の前後感に関わってくるんです。
音を遠くに配置する場合
コーラスやシンセパッドなど、音を遠くに配置したい時にもコンプレッサーが有効です。
・アタック トランジェントを抑えたいので早めに
遠くで鳴っている音をイメージしてみてください。
近くで鳴っている場合と比べると音の立ち上げりが緩やかな気がしませんか?
ですので、アタックを早くしてトランジェントを削るのです。
・リリース 余韻を抑えるよう遅めに
せっかくトランジェントを抑えても、余韻がちゃんと聴こえると音は前に出てきます。
そこで、リリースを遅くして余韻を引っ込めてやるのです。
要は圧縮しっぱなしにするわけですね。
注意点
最後にちょっと注意点を!
全てをコンプに頼らないこと
たとえばヴォーカルのダイナミックレンジがとんでもなく広い場合。
Aメロはささやくように歌ってるのに、
サビはチェストボイスで全力!みたいな。
この差をコンプレッサーだけでぜんぶ埋めようとするのは無茶です。
かなり強い圧縮感になってしまいます。
なので、コンプレッサーだけでなくボリュームのオートメーション等も使ってあげた方がいいですね。
そこまで極端に歌い方が変わってるなら別パートだと考えて、トラックを別けるなどして違うコンプ設定にするのも手です。
さらに言うと、そもそも音量を揃える必要があるのか?というところから考える必要があります。
静かに歌ってるところは伴奏も静かなはずですから、無理に音量を平均化しなくてもいいんですよね。(まれにそうじゃないアレンジもありますが・・・)
一概には言えない
今回の記事を読んで、「早めとか遅めとかじゃなくて具体的な数字を書いてよ!」って思った方もおられるかも知れません。
でも、コンプの設定って一概に言えないんですよね〜。
曲のテンポ感やフレーズでも変わってきますし、
高音域が多いパートと低音域が多いパートでもコンプのかかり具合は変わります。
また、コンプレッサーの機種によっても音が変わる(この辺は次回の記事にしようと思ってます!)ので、最終的には「自分の耳で判断!」ってことになります。
今回はここまで!
次回は「動作タイプで使い分ける」編をお届けします。
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