「さてと、今日もつまらない1日が始まるな」
少年はそう呟く。
少年の名前はバナージ・リンクス。
名前以外はどこにでも居る、高校2年生だ。
そんな高校2年生だが、バナージは学校生活が、とても退屈だった。
何故なら、全く面白くないからだ。
勉強もつまらないし、可愛い女の子も居ない。
つまり、本当に退屈で退屈でしょうがないのだ。
だが、そんなバナージにも、たった1つだけ、学校生活が楽しいと思う瞬間があった。
それは……
「おっ!刹那君!ヒイロ君!」
「おはようバナージ」
物凄くイケメンな二人組がバナージに挨拶をする。
この二人はバナージの親友である。
刹那・F・セイエイ。
バナージの親友であり、同じクラスメイト。
顔も声もイケメンの為、女子からの人気は相当である。
ヒイロ・ユイ。
同じくバナージの親友であり、同じクラスメイト。
ヒイロも顔と声が良い為、女子からかなり人気がある。
「バナージ。昨日出された宿題は終わったか?」
「あれは最後の問題が解けなかったんだよ」
「俺も解けなかったな。刹那はどうだ?」
「俺もだ」
「あの問題だけ特別難しいよね」
「明らかに問題の難易度を間違っているな」
「どうする?このまま提出する?どうせほとんどの人が投げ出したと思うし」
「そうだな。最後の問題以外はやったんだ。バチは当たらないだろう」
ヒイロの答えに、刹那も頷き同調する。
だがその瞬間後ろから声が聞こえた。
「バナージ君達がそうするなら、僕達もそうしようかな」
「そうだね。その方が良いか」
「無理は良くないし」
バナージ達は3人の声の正体を知っていた。
3人の正体は……
「おはよう!フリット君!アセム君!キオ君!」
フリット・アスノ。
アスノ家の長男である。
性格はとても優しく、弟であるアセムとキオをまとめる良いお兄さんである。
アセム・アスノ。
アスノ家の次男である。
兄であるフリットには多大な尊敬を抱いており、いつか自分も兄であるフリットに、追い付きたいと思っていた。
キオ・アスノ。
アスノ家の三男である。
とても可愛らしい顔と声をしており、女装が良く似合うと言われてしまう程可愛いのである。
「その言い方だと、アスノ兄弟も最後の問題は、駄目だったんだね」
「全くだよ。あの問題だけは難易度おかしい」
「俺もフリット兄さんも、お手上げだ……」
「当然二人が出来ない問題を、僕が出来る訳もないしね」
3人が話し終わると、また後ろから声が聞こえた。
「安心しろ。私も出来なかった」
とても格好いい声だった。
バナージは、その声の正体を知っていたからこそ……
「あのミリアルド君も出来なかったんだね」
ミリアルド・ピースクラフト。
同じくバナージ達のクラスメイトであり、友達である。
「あの問題だけは、普通の人間には無理だ。それこそ、風太郎君以外にはな……」
「風太郎君か。確かに彼なら、あの問題は解けてそうだけど……」
「今からみんなで、風太郎君に最後の問題の答えを聞きに行かないか?」
「だがミリアルド。風太郎が只で答えを教えてくれると思うか?」
「安心しろ。勝算はある」
ミリアルドの言う勝算がバナージ達には分からなかったが、問題の答えは知りたい為、みんなで風太郎の居る教室に向かった。
みんなで学校に向かい、風太郎の居る教室に向かうと、そこには風太郎が座って自習をしていた。
「相変わらず勉強熱心だね」
フリットの一言に、弟であるアセムとキオが便乗する。
「では交渉開始だ」
ミリアルド達が風太郎の席に近付いて、風太郎に話し掛ける。
「風太郎君。少し良いだろうか?」
「何だ?みんな揃って」
上杉風太郎。
学校で最も頭の良い人間である。
そしてテストは毎回100点と言う、恐ろしい学力の持ち主だ。
「風太郎。昨日の宿題、やって来たか?」
「当たり前だろ」
「ならば、最後の問題は解けたか?」
「当然だ」
「私達全員答えが分からなくてな。最後の問題の答えを教えてくれないだろうか?」
「お断りだ。何でお前らに教えなきゃいけないんだ。しかも、答えに至る道筋を教えてくれならともかく、最初から答えだろ?嫌だね」
「焼肉定食、焼肉抜き……」
「……!」
風太郎の表情が変わった。
「もし我々に答えを教えてくれるなら、焼肉定食を奢ろう。しかも、今なら1個300円のデザートに、飲み物も付けるぞ。そして、パンやおにぎりも付けよう」
「なん、だと……!」
「どうだ?悪い話では無かろう?」
「(そんな馬鹿な……1問答えを教えるだけで、こんな待遇が、受けられるだと……!)」
風太郎の心が揺らぐ。
「どうする?」
「こ、今回だけだからな……!」
「交渉成立だな」
こうして食べ物を取引に、問題の答えを教えて貰ったバナージ達。
勿論ちゃんと約束を守り、風太郎に、豪華な昼食をプレゼントしたのだった。
そして午後の授業を受けて、放課後になると、バナージは一人で帰った。
そう。
バナージには行きたい所があったのだ。
その場所は……
「タピオカ!タピオカ!」
そう。
バナージはタピオカが大好きなのだ。
だからこそ、学校終わりにはタピオカを飲みに行くのが主流なのである。
「アメジストブルーベリーミルク~!」
バナージのテンションは、本当に高かった。
そしてタピオカ店に付くと、店員さんにアメジストブルーベリーミルク、甘さは甘めで、氷は少な目でと言った。
これが一番タピオカを美味しく飲めるのである。
因みにこれは店員さんから聞いた。
そしてお金を払い、タピオカを貰うと、バナージは店を出て、タピオカを飲んだ。
「これだよ!これ!やっぱり学校終わりのタピオカは、さいっこう!」
バナージがそう言うと、缶ジュースが転がってきた。
「誰か落としたのか」
バナージは、缶ジュースを拾うと、前を見た。
すると1人の少女が、こっちに来るではないか。
「あの子が落としたのか」
バナージは少女の事を見る。
少女の顔はとても可愛く、青いヘッドホンを首に付けている。
「この缶ジュース、君のだよね?はい」
「ありがとう」
少女はバナージにお礼を言うと、そのまま立ち去ってしまった。
「あの子、可愛かったなぁ」
バナージは、またあの子に会いたいと思った。
この少女との出会いから、バナージの運命は大きく動き出したのだった。