TBSもさぞや悩んだことだろう。NHKは8月15日、三浦さんが出演したスペシャルドラマ『太陽の子』を放送したが、かなり前に撮っており、事情が違う。それに先立つ7月23日公開の映画『コンフィデンスマンJP プリンセス編』も同じ。しかも、どちらも完成していたのである。
TBSは苦悩のためか放送開始前にブレを見せた。8月18日付で情報を解禁し、このドラマの追加キャスト(共演陣)を発表したのだが、キーパーソンの三浦さんが1カ月前に他界しているのに、新たなキャストが明かされるというのはおかしい。
追加キャストとして発表されたのは、三浦さんが演じた慶太の元交際相手・聖徳まりあ役の星蘭ひとみさん、三浦翔平さん(32)扮する公認会計士・早乙女健の秘書である牛島瑠璃役の大友花恋さん(20)ら。追加ではなく、2人とも初回から登場しているのである。
主演級の役者を発表し、その後、助演陣を発表するのは1980年代から続くドラマ界の常道で、それは分かっている。PR効果を高めるのが狙いだ。とはいえ、今回は現実社会で一大事が起きた。ドラマ界の慣習にとらわれるべきではなかったのではないか。書くまでもなく人の命は何よりも重い。
TBSからのニュースリリースに基づき、三浦さんの死には全く触れず、追加キャストの発表を報じるメディアもあった。三浦さんがその共演者と永遠の別れをしてから、1カ月が過ぎているのに、「新たな出演者が決まりました」と発表するのは、世間の感覚と合っているとは思えない。
今回に限ると、なるべく早く共演陣や撮影期間等を明かすべきだった。三浦さんのプライバシーは最大限に守りつつ、一方でドラマの妙味も損なわないよう配慮し、情報は最大限に開示すべきだったと考える。
なぜなら、三浦さんの死については疑念を抱くファンが少なくないからだ。揣摩憶測が飛び交っている。その理由の一つは情報不足と情報開示方法のミスにほかならない。